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住宅高騰で出生率低下へ

人口減で中国の運命変る

年金所得代替率は9割も

 

中国人口は、2022年に減少過程へ入った。国連の推計によれば、人口減は2031年と見られてきた。それが、9年も繰り上がったのは出生率の急減が理由である。国連によると人口世界一国は、27年にインドになると予測されていた。これも、23年に繰り上がる見込みだ。このように、中国の人口動態は急激な悪化を見せている。

 

既述の通り、中国の人口減社会が従来の推計よりも9年も繰り上がったことは、習近平氏が国家主席の就任時期(2012年)と重なっている。それは、習氏の経済政策が出生率低下を余儀なくさせる要因を含んでいたことを示唆する。それは、不動産バブルによって住宅価格が高騰し、庶民の財力から住宅をますます遠ざけたことである。

 

人口減は、日本や韓国もそうだが、国力の相対的衰退を予告するものである。潜在成長率の低下を意味するからだ。習近平氏は、国家主席就任と同時に、「中華再興」を旗印にした。こうして、焦った国力伸張策で不動産バブルを引き起したのである。これが原因で、住宅価格高騰による新居入手難で結婚できず、出生減を招くことになった。「中華再興」にとって、まことに皮肉な結果を招来することになった。

 

住宅高騰で出生率低下へ

中国は、儒教社会である。結婚でも古くからの慣習を守ってきた。結婚する条件として、男性側が新居を用意することが条件になっている。しかも、「一人っ子政策」によって、結婚適齢期の男性は女性よりも3000万人も多いとされる。これは、同時に結婚適齢期の女性を減らしていることでもある。こうなると、めでたく結婚できる男性は、新居確保が絶対的な条件となる。事実、運良く結婚できたと言う青年の場合、祖父母や両親からの援助で新居を入手でき、結婚に結びついたと語っている。

 

住宅高騰が、婚姻件数を減らしたことは確かである。これによって、出生率は減少した。2022年の普通出生率(人口1000人当たり)は6.77。21年の7.52から大幅な減少になった。ここで、過去の普通出生率を見ておきたい。

 

米中の普通出生率(人口1000人当たりの出生数)推移

      中  国   米  国

2010年 11.90   13.00

  11年 11.93   12.70

  12年 12.10   12.60

  13年 12.08   12.40

  14年 12.37   12.50

  15年 12.07   12.40

  16年 12.95   12.20

  17年 12.43   11.80

  18年 10.90   11.60

  19年 10.48   11.40

  20年  8.52   10.90

  21年  7.52

  22年  6.77

資料:世界銀行 最近2年は新聞報道

 

注目すべきは、米中の普通出生率が18年以降に逆転していることだ。中国は、22年の普通出生率が6.77と急減し、17年の12.43に対して46%も減少している。これは、異常と言うべき減り方だ。新型コロナ感染は20年からである。その後のゼロコロナで、さらに低下幅が大きくなった。

 

人口動態の面から言えば、中国はもはや米国と対抗する力を失った。ここ2年間の米国の正確な普通出生率を把握できないが、21年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産するこどもの数)は1.66と6年ぶりに上昇した。普通出生率も増加している。中国とは真逆のことが起こっているのだ。21年の中国の合計特殊出生率は、1.16と見られる。米国との差は、0.50と大きく開いたのだ。米国には、移民という予備軍が控えている以上、中国は人口面でもすでに敵わない相手になった。もっとはっきり言えば、中国の負けである。

 

合計特殊出生率は、潜在的な経済成長率を示している。一国の人口が、横ばいを維持する合計特殊出生率は2.08である。米中ともにこの水準を下回っているが、米国の合計特殊出生率は中国を上回っている以上、潜在的成長率の推移では、米国が有利であることを示唆している。

 

今後、米国の経済成長率もゆっくりと低下するが、中国はそれ以上の幅で落込むことが決定的になった。これは、中国が米国をGDPで凌駕する可能性が消えただけでなく、高齢者の増加率が加速することで、年金負担の急増をも意味する。中国にとっては、ダブルパンチに見舞われる事態に陥ったのだ。

 

人口減で中国運命変る

中国の予想より早く到来した人口減が、中国の歴史で重要な分岐点となる。中国経済が、世界の工場としての地位を大きく低下させるであろう。中国指導部は長年、米国を抜いて世界一の経済大国になるという野心を抱いてきた。だが、人口動態上の逆風が強まることで実現は不可能になった。習近平氏は、その引き金を引いたのだ。具体的には、急速な高齢化による社会保障費の負担増、生産性の伸び率鈍化、高水準の負債残高、社会における格差拡大が今後、数十年にわたり中国の経済成長を圧迫するはずである。

 

前記の諸問題は、本メルマガでこれまで縷々、指摘してきた事柄である。もはや、改めて取り上げる必要性もないほどだが、改めて中国の高齢化が駆け足で進んでいることに焦点を合わせて考えたい。(つづく)

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