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23年の中国経済を巡って、悲観論と楽観論が交錯している。悲観論は、「中国経済が低成長の罠に陥った」や「文革以降、2番目に低い成長率だ」などである。一方、米国投資銀行ゴールドマン・サックスは楽観論である。中国が、22年の国内総生産(GDP)を発表した翌日(1月18日)、23年の中国経済成長見通しを従来の5.2%から5.5%に引き上げたほどだ。

 

果たして、23年の中国経済はどうなるか。欧米が、コロナから脱して急激な回復を見せたと同様の結果が、中国でも起こるかだ。ゴールドマン・サックスは、欧米的な回復コースを予想しているが、さてどうなるかである。投資銀行特有の、ビジネスマインドを感じるのだ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月23日付)は、「中国のリベンジ消費、米国より弱めか」と題する記事を掲載した。

 

中国経済にとって昨年は非常に厳しい1年だったが、今年は大きく飛躍できそうだ。経済成長率は19年の6%から22年に3%まで鈍化したが、23年は5%かそれ以上に回復するかもしれない。だが用心も怠るべきではない。

 

(1)「強気シナリオは基本的に、西側諸国とりわけ米国で新型コロナウイルス流行が落ち着いた後に起きたことを前提にしている。20年の流行最悪期には、多くの人が家にこもって消費を控えた。21年に感染状況が改善すると、人々は消費を始め、経済が勢いづいてインフレにつながった。中国でもこれに近いことが起きてはいるが、見逃せない重要な違いもある」

 

中国経済を考える場合に重要なのは、過剰債務を抱えているという現実を認識すべきであろう。22年6月末で、対GDP比295%の過剰債務が、経済活動を抑制することは十分に考慮すべきだ。欧米経済とは、この点が全く異なっている。

 

(2)「まず最も重要なのは、中国政府は米国のような多額の家計向け現金給付を行っていないということだ。中国の家計貯蓄はコロナ下で増加したが、米国ほど一気にではなかった。さらに、大半の家計にとって最大の資産である住宅は、ここ2年で価値が大きく目減りした。加えて、労働市場の柱である輸出、インターネット技術分野、および住宅市場は、依然として構造的あるいは循環的な逆風にさらされている。おまけに金融環境は相対的に引き締まったままだ。昨年12月は与信の伸びが弱く、債券利回りとマネーマーケット金利は足元で上昇している

 

下線部は、中国の金融環境が悪化していることを象徴している。過剰債務の圧力によって、新規借入れよりも返済を優先させている結果だ。

 

(3)「こうした状況が示唆しているのは、中国の「リベンジ消費」は今年の景気に活を入れてくれるだろうが、米国で21中国の年に見られたような熱狂的な消費を期待する向きにとっては期待外れに終わるかもしれない、ということだ。とはいえ、中国の貯蓄増加は大したことはない、とも言えない。中国の家計は22年に1人当たり可処分所得の約33%を貯蓄に回しており、もともと高かった19年の30%からさらに上向いた。一方、格付け会社フィッチによると、個人の預金額は22年に17%増加した。ただし、この一部は貯蓄増によるものではなく、株式などのリスク資産の売却益だと思われる」

 

個人貯蓄が増えたのは、ゼロコロナによって、いつ仕事がなくなるか分からない恐怖への対処であろう。債務返済を優先して消費を切り詰めた結果とも言える。要するに、可処分所得増によって貯蓄が増えたことではない。経済の先行きがはっきりしない限り、消費は本格的な回復になりにくいであろう。

 

(4)「この家計貯蓄率の伸びも、20年と21年に米国で起きたことに比べればかすんでしまう。米政府のデータによると、3回の現金給付と消費者自身が消費に慎重になったことで、個人貯蓄率は19年の約9%から20年前半に一時的に20%超まで上昇し、21年前半にも再び20%を上回った。また、米国は中国と異なり、通常は個人消費が経済の大きな部分を占めているため、家計の余剰貯蓄を切り崩すことによる成長押し上げ効果も極めて大きかった」

 

米国家計は、3回の現金給付による「にわか成金」になり、これがその後の消費増に結びついた。中国では、このような現金給付はなかったのだ。こういう構造的な面を忘れてはならない。

 

(5)「春節(旧正月)明けの春から夏にかけて中国経済が力強く回復するのはほぼ確実だ。西側諸国と同様、家計は失われた時間を埋め合わせようとするだろう。だが米国が経験した1年以上続く爆発的な消費は起きないかもしれない。中国政府が比較的保守的な金融政策を続け、住宅市場の回復が目覚ましいというほどではなく穏やかなものだった場合は、なおさらだ」

 

ゼロコロナ打切りによる「フルコロナ」で、中国社会は大混乱している。今の混乱が収まっても「第二波」「第三波」は起こらないか、それも注目点である。