あじさいのたまご
   

中国は、官民のファンドが半導体スタートアップに投融資し、半導体育成に大きな力を入れている。だが、その64.2%は設計部門でファブレス(自社工場を持たない製造業)である。肝心の製造設備や製造部門は、16.6%にすぎないのだ。これでは、とても「半導体強国」を実現できる状況にはない。

 

米国が、対中国へ課している半導体・半導体製造設備の輸入禁止の影響は極めて大きい。中国が、この穴を簡単に埋められる状況ではないのだ。厳しい状況へ追込まれている。中国は、半導体と半導体製造装置の輸入額が、21年半ばから減少基調に転じている。米国による対中輸出規制の影響だ。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月24日付)は、「『ファブレス』に偏る中国の半導体スタートアップ投資」と題する記事を掲載した。

 

半導体の自給率向上を目指す中国の政策手段のひとつに豊富な資金がある。官民のファンドが半導体スタートアップに投融資し、新興企業向けの株式市場で上場させる筋書きだ。ただ、2022年半ばまでの約8年で800件超の投融資があったものの、自給拡大につながらない案件が過半を占める事態となっている。

 

(1)「調査会社の艾瑞諮詢(アイリサーチ)は、中国の半導体産業全体の調査の一環として、国内の半導体スタートアップによる資金調達の状況をまとめた。当局が振興策を本格化させた14年から22年5月の間に865件の投融資が行われた。事業領域別では、デジタルICの設計が46.%(件数ベース)と最も多く、アナログICの設計が17.%で続く。つまり回路設計に特化し、チップ製造は外部委託する「ファブレス(工場なし)」業態の会社が64.%を占めている」

 

中国は、半導体製造を外部へ委託する「ファブレス」に特化している。米国の「一撃」によって、製造面で大きな影響を受けることになったのは当然だ。半導体製造は、「熟練度」の最も高い難しい分野である。中国の自動車産業は、内燃機関製造で歯が立たないので、簡単なEV(電気自動車)へ逃げ道を作った。半導体では、このような安易な道がないのだ。

 

(2)「電子産業のコンサルティング会社、グロスバーグの大山聡代表は「投資の規模や回収を考えると合理的な偏りだが、半導体の自給率向上に直接は寄与しない」と指摘する。現代の半導体産業は回路設計、製造など各工程を専門会社が手がける水平分業が一般的だ。中国が20%台とされる半導体の自給率を高めるには本来、製造工程や製造装置開発を手がけるスタートアップに資金が回ることが望ましい。しかしアイリサーチの調査では、ICチップ製造のスタートアップへの投融資はわずか1.%。米国の輸出規制で国産化が急務の製造装置への投融資も15.5%に止まって」

 

中国の半導体産業は、全て「借り物技術」で始まった。自らつくり出した技術もなければ、製造設備も不得手という最悪状況である。米国は、この重要な揺籃期に制裁を加えただけに、中国の受ける影響は計り知れないであろう。

 

(3)「22年の中国の半導体上場では、海光信息技術による8月のハイテク新興企業向け市場「科創板」上場が最大だった。海光もCPU(中央演算処理装置)のファブレスであり、目論見書は「米制裁によりチップの製造委託先との関係に影響が出る」ことを経営リスクに明記している。海光が懸念する通り、中国が自給拡大を急ぐのは台湾企業などへの製造委託が米制裁で困難になってきたのが理由のひとつだ。一定の供給能力を持つ中芯国際集成電路製造(SMIC)に続く国内メーカーの登場が望まれるが、「巨額の投資が必要なうえ、回収に時間がかかるハードウエア系には創業投資が回らない」(大山氏)のが実情だ」

 

半導体生産には、巨額投資が必要である。それだけに、スタートアップ投資では賄いきれないのだ。地方政府などが補助金を出しているが、肝心の「自前技術」がないだけに、成功する見通しはない。半導体製造に補助金を出すと知った民間は、補助金欲しさに半導体と無縁な人達まで名乗上げる漫画のような現象を見せている。こうして、補助金が無駄に使われているのだ。

 

(4)「中国には規模が6兆円を超す国策ファンドが既存メーカーに投融資するスキームもあるが、22年夏には汚職が発覚している。中国の苦戦は、豊富な資金が半導体産業の振興に必要な条件であるが、十分条件ではないことを示している」

 

中国当局が、いくら半導体事業へ補助金を出しても、基本技術がないために「無駄金」になっている。これらは全て、中国の科学的脆弱性が招いた蹉跌である。投下資金をいくら増やしても、それでまともな半導体が生産できない、その厳しい現実を認識するほかないであろう。