a0001_000268_m
   

中国防疫当局は、コロナの感染ピークは過ぎたとして、早期の収束予測を始めている。だが、これを裏づける詳細なデータは未発表だ。WHO(世界保健機関)も、詳細なデータの発表を求めているほどである。 

英医療調査会社エアフィニティーは、中国の統計に病院以外での死者数を含まれず、コロナ関連死の定義が狭すぎると指摘している。要するに、第三者機関は中国の主張するピーク説を検証できるデータが不足しているのだ。中国の政治的発表と見られる。 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月28日付)は、「中国『脱ゼロコロナ』 専門家はデータ疑問視」と題する記事を掲載した。 

中国は今週、新型コロナウイルス流行のピークが過ぎたことを示そうと、大量のデータを公表した。だが公衆衛生の専門家は、中国政府の情報に状況を正確に判断できるだけの透明性があるかと疑問を呈している。

 

(1)「中国疾病予防管理センター(CDC)は、コロナによる病院での死者数について、1月上旬は1日約4300人前後だったが、27日までの1週間の春節(旧正月)休暇の半ば時点では、その2割近くに減少したとしている。CDCは同じ報告書で、コロナ感染者数と重症者数の激減も示した。このデータは、昨年12月に厳格なコロナ政策を3年ぶりに解除してからの最も難しい期間を乗り切り、コロナとの共存への移行が円滑で秩序立っているとする中国の主張を裏付けるものだ」 

病院での死者数は、1月上旬がピークであったという。27日時点ではその2割近くまで減少したという。これをもって、中国はコロナ感染ピーク説を主張している。 

(2)「疫学者の間では、中国の感染ピークが過ぎた可能性が高いことに同意しつつも、政策転換の影響を十分に判断するには政府の数字は不完全過ぎるとの声もある。世界保健機関(WHO)も、その点を問題に挙げている。今月に入り公表された直近の報告書によれば、入院と外来受診は年初ごろに天井を打った。また、今週は1月5日に記録した高水準に比べて入院者数が85%、重症者数が72%、それぞれ減少した。コロナの流行状況を測る指標である発熱外来の受診件数は、ピークをつけた12月23日の287万件からの減少が続いた。この報告書にはピーク値とトラフ値はあるが、1日ごとの内訳はない」 

感染症を巡る判断では、日々の克明なデータが必要である。日本でも毎日、感染者数、重症者数、死者数が報告されている。中国では、それが伏せられているのだ。都合のいいデータだけを発表する。その意図は何かが問われている。

 

(3)「WHOは26日公表した最新のリポートで、中国のコロナ死者数など関連の数字を付属資料に掲載した上で、中国政府の総論を裏付けるデータがないため同国の状況を独自に検証していないと説明した。WHOのマーガレット・ハリス報道官は先週、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に、前週比での有意義な分析をするには「週次データが必要だ」と語った。WHOはこの点を26日付の報告書でも強調。地域別データの欠如にも言及した」 

中国はWHOからも注文がつくほど、詳細なデータを公表せずにいる。 

(4)「中国が開示した情報の正確性にはコロナ流行当初から疑問が投げかけられており、外部の専門家からの懐疑論は後を絶たない。それでも、中国が感染ピークを越えたという主張に同意する世界的専門家もいる。英イーストアングリア大学のポール・ハンター医学教授は、報告されたコロナの再生産数と、12月20日までの感染者数が2億5000万人とする中国政府の推計を踏まえると、中国は既に感染ピークを過ぎた見込みが十分にあるとし、「中国のピークは高いが期間は短かったようだ」と話した」 

不正確なデータでも、中国の感染ピークは過ぎたようである。

 

(5)「英医療調査会社エアフィニティーの分析担当ディレクター、マット・リンリー氏は、中国の統計には病院以外での死者数は含まれておらず、コロナ関連死の定義が狭すぎると指摘。「(中国が)発表するデータは大抵、現状把握に役立たない。このところの公式数値の多くは矛盾している」と述べた。エアフィニティーは先ごろ、地方のコロナ感染ペースが予想を上回った結果、死者数と感染者数がわずか数日前にピークに達したとする、より大規模で長期にわたる流行を予測した一部の著名な感染症専門家はこの予測に疑問を呈している。だが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の張作風・疫学教授は、中国のコロナ流行が政府の主張するピークよりはるかに長く続いたとの見方を支持。今月の春節前後の帰省ラッシュは新たな感染の波につながるリスクだと話した 

英医療調査会社エアフィニティーによれば、ピークは1月20日過ぎで、今後のより大規模な長期にわたる流行を予測している。この予測には反対論もあるが、春節の帰省ラッシュが新たな感染を引き起すリスクは指摘されている。 

(6)「中国CDC所属で著名な疫学者の曽光氏は、1月初めの北京での会議で、コロナ流行の最も重大な影響は2カ月余り続く可能性があると、より保守的な見解を打ち出した。曽氏はWSJに、感染者数と重症者数が減少しても、高齢の患者は回復に2カ月余りかかる見込みで、多くの患者が再感染し、死亡さえする可能性が高いと話した。「さらに慎重な見積もりが必要だ」と語った」 

中国の著名な疫学者の曽光氏は、3月頃まで続くコロナ感染症の悪影響を指摘している。ここは、慎重に見ておくべきであろう。