ウクライナ軍には、ドイツ製戦車「レオパルト2」300両以上が供与される見通しとなった。ロシア製戦車と異なって、装置ははるかに優れているとみられる。ロシアは、気がついたらNATO(北大西洋条約機構)軍を相手に戦っているような状況へと変わっている。だが、プーチン・ロシア大統領は、西側諸国がいずれウクライナ支援疲れを起して、休戦に応じるであろうという読みがあるようだ。
『ブルームバーグ』(1月28日付)は、「プーチン氏、ウクライナ戦争の長期化に身構えー新たな攻勢も準備」と題する記事を掲載した。
数週間で決着を付けるはずだった侵攻から1年近くがたつ中で、ロシアのプーチン大統領はウクライナで新たな攻勢を準備している。同時にロシア国内では、自身が今後何年も続くとみる米国やその同盟国との衝突に身構えさせようとしている。
(1)「ロシアの狙いは、数カ月にわたって劣勢続きの軍が再び戦争の主導権を握れることを誇示し、ロシアが現在支配する領土が認められる形でのある種の停戦に合意するよう、ウクライナとその支援国に圧力をかけることだ。事情に詳しい政府の当局者や顧問、関係者が述べた。非公表の内容だとして匿名を条件に語った関係者によると、当初占領した面積の半分以上を失い、プーチン氏ですら自身が数十年かけて作り上げてきたロシア軍の弱さを否定できなくなっている。後退続きでロシア政府の多くが短期的な目標についてより現実的にならざるを得なくなり、現在の占領地を維持するだけでも成果だと認めている」
ロシアは、現在の占領地保持を前提に「停戦」を考えているという。これは、ウクライナの見解と真っ向から食い違っている。ウクライナは、「原状回復」が停戦条件としている。
(2)「プーチン氏はこれまでの失敗にもかかわらず、規模に勝る軍と犠牲をいとわない姿勢がロシアを最終的な勝利に導くとなお確信している。米国や欧州の見積もりによると、ロシア軍の死傷者数は既に数万人に上り、第2次世界大戦後のどの紛争よりも多い。ロシア大統領府関係者は、新たな攻勢は2月か3月にも始まる可能性があると述べた。ウクライナとその支援国も、米国や欧州が新たに約束した戦車が届く前にロシアが攻勢を開始する可能性があると警戒している」
ロシアが、2~3月に再攻勢説に疑問符がつく。昨年も2月24日開戦で、ロシア戦車は雪解けで行動力を失った経緯があるからだ。春になって大地が乾かなければ戦車は動けないのだ。
(3)「プーチン氏が示す決意は、戦争が再びエスカレートする前兆となる。一方でウクライナも国土からロシア軍を駆逐する新たな攻勢を準備しており、ロシアの占領維持を認める停戦協定には応じない姿勢だ。関係者によると、プーチン氏はロシアの存亡を懸けて西側と戦っているとの認識で、戦争に勝利する以外に選択肢はないと信じている。新たな動員が今春行われる可能性もあるという。ロシアは経済や社会を二の次とし、戦争のニーズを最優先する性格をますます強めている」
下線部は、ロシアが受ける傷の深さを示している。ロシアが、ウクライナへ領土を拡張しようとすれば、西側諸国が認めないという大きな枠が掛かっているからだ。
(4)「政治コンサルタント会社Rポリティクの創業者タチアナ・スタノワヤ氏は、「プーチン氏は事態の展開に失望しているが、目標を断念する用意はない」と指摘。「それが意味するのは、道のりが長くなり、さらなる犠牲を伴い、全員にとって一層悪い展開になるということだ」と述べた。米国と欧州の情報当局は、昨秋に30万人を追加動員したロシアに再び大規模な攻勢をかける資源があるのか疑問視している。一方で、ウクライナ支援国は兵器供給を強化。ウクライナ軍がロシア軍の防衛線を突破できるよう、初の主力戦車や装甲車両の供与に向け準備が進む」
下線部のように、西側諸国はロシアが30万人以外に、さらなる大規模動員を掛ける資源があるか疑問視している。
(5)「ロシアの政府系シンクタンク、ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ会長は「何かが変わらない限り、第1次世界大戦のような消耗戦を目にすることになる。両陣営とも時間が自分に味方すると考えているため、長期戦になる可能性がある」との見方を示し、「プーチン氏は西側やウクライナに戦争疲れが広がると確信している」と述べた。原油輸出に対する上限価格設定など相次ぐ制裁でロシアの財政は圧迫されているが、戦争の資金力を断つには今のところ至っていない。制裁の影響を受けていない中国人民元建ての多額の準備金に対するアクセスをロシアは維持しており、最長で2~3年の財政赤字を穴埋めする資金として利用できるだろうと、エコノミストらはみている」
ロシアは、あと2~3年は戦時経済に耐えられる資金力があるという。だが、ウクライナへの被害を増やせばその賠償金が自動的に増えていくことを忘れている。
(6)「ウクライナを支援する側にも、戦争長期化への不安は広がりつつある。「ロシア軍をあらゆるウクライナの土地から、あるいはロシアが占領したウクライナの国土から軍事的に排除するのは、今年は非常に困難だろう」と米国のミリー統合参謀本部議長は1月20日、同盟国との国防担当相会合で発言。「ただ、この戦争も過去の多くの戦争と同様、最後にはある種の交渉で終わることになると思う」と語った」
米国のミリー統合参謀本部議長は、一貫して「和平交渉」の必要性を主張している。ただ、統合参謀本部議長は、実質的発言権が弱いと指摘されている。
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