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メモリー半導体業界は、長期の好況に浴すると見てきたが一転、過剰生産の山に直面している。企業は、生産の3~4ヶ月分を在庫として積み上がるほどの危機を迎えている。サムスンは、昨年10~12月決算を31日に発表する。メモリー半導体業界の不況ぶりが炙り出されよう。

 

『ブルームバーグ』(1月30日付)は、「半導体メモリー業界低迷の深刻さ示唆か、サムスン電子決算に注目」と題する記事を掲載した。

 

今回は違うはずだった。好不調の波が激しいことで有名な半導体メモリー業界の在り方が変わり、各社は5G技術やクラウドサービスといった製品の新たな市場とより規律正しい経営で、より予測可能な利益が確実になるとみられていた。しかし、1600億ドル(約20兆8000億円)規模の同業界は過去最悪クラスの状況に陥り、倉庫は半導体の在庫であふれ、顧客は注文を減らし、製品価格は急落している。

 

(1)「トレンドフォースのシニアリサーチバイスプレジデント、アブリル・ウー氏は、「半導体業界はサプライヤーがもっとうまくコントロールできるようになると考えていた。今の下降局面は誰もが間違っていたことを証明している」と語った。前例のない危機で、業界トップの韓国SKハイニックスや米マイクロン・テクノロジーの資金がなくなるだけでなく、サプライヤーは不安定化し、ハイテク輸出に頼るアジア経済は打撃を受け、生き残った半導体メモリーメーカーは提携するか合併さえも検討せざるを得なくなっている」

 

大好況の後に訪れた大不況。典型的な市況産業の浮沈ぶりを示している。2022年の中国のスマートフォン出荷台数は、21年比13.%減の2億8600万台。2年ぶりに前年実績を下回り、10年ぶりに3億台を割り込んだ。主要需要先のスマホやパソコン不振が、メモリー半導体へこれだけ響いている。

 

(2)「コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中、ホームオフィスを整え、コンピューターやタブレット、スマートフォンを購入する買い物客を追い風に急増した業界の売上高が急速に減少している。現在、消費者と企業はインフレと金利上昇に対応するため、高額な買い物を控えている。半導体メモリーの主な買い手である端末メーカーは突然、部品の在庫を抱えることになり、これ以上は必要なくなった。サムスン電子などの半導体メーカーは既に生産すればするほど損失が大きくなる状況で、今年の営業損失は全体で過去最高の50億ドルに達すると予測されている。半導体メモリーの需要を示す重要な指標である在庫は3倍以上に膨らみ、供給量の3~4カ月分と過去最高に達している」

 

今年の半導体メモリーは、50億ドル(約6500億円)もの営業損失が見込まれるという。これまで稼いだ利益の多くを吐き出す形だ。

 

(3)「サムスンだけは、要かつ多様な事業のおかげで比較的無傷ですみそうだが、同社の半導体部門でさえ赤字に向かいつつある。投資家は、今週発表される同社の四半期決算で、ダメージの大きさを知ることになるだろう。コロナ禍の後遺症とロシアのウクライナ侵攻、記録的なインフレ、サプライチェーンの混乱といった異例な状況が重なり、業界は通常のシクリカルな下降局面よりもはるかにひどい低迷に陥っている」

 

サムスンは、半導体以外にスマホ部門を持っているので、サムスン全体では赤字を免れるとしても、半導体部門は赤字に向かっている。業界全体は、過去の不況局面よりも大きい打撃を受けている。

 

(4)「マイクロンは需要の落ち込みに積極的に対応しており、先月末に生産縮小に加え、新たな工場や設備向け予算も削減すると発表。サンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)は、業界が立ち直るスピードは競合各社がどれだけ迅速に同様の手を打つかにかかっているとの見方を示した」

 

メモリー半導体の市況回復は、どこまで踏込んだ大幅減産ができるかに掛かっている。サムスンが、減産を渋れば市況回復はそれだけ遅くなるというギリギリの状況だ。

 

(5)「韓国でもハイニックスが投資を削減し、生産を縮小している。同社の在庫過剰は、業界が不振に陥る前に合意した米インテルのフラッシュメモリー事業買収にも一因がある。半導体メモリー生産で世界最大手のサムスンはこれまで業界の短期的な見通しにほとんど触れなかったが、今や同社に強い関心が寄せられている。同社は31日に2022年10~12月(第4四半期)決算を発表する予定で、その後の電話会議でアナリストから生産能力の管理計画について質問される可能性が高い」

 

1月31日、サムスンが昨年10~12月期の決算発表をする。その席で、どのような説明がされるか。今後の世界半導体市況の先行きを占えよう。