中国国家統計局が、1月31日発表した2023年1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は「50.1」だった。前月より3.1ポイントの大幅改善である。好調・不調の境目である50を4カ月ぶりに上回った。22年12月、都市部で一気に広がった新型コロナウイルスの感染が、落ち着きを取り戻してきたように見える。だが、それを否定する材料も多いいのだ。
製造業購買担当者景気指数の内訳は、「新規受注」が50.9だった。前月よりも7.0ポイントも上昇し、22年6月以来の50超えとなった。「生産」は49.8で、前月を5.2ポイント上回ったが節目には届かなかった。気がかりなのは海外需要だ。3~6カ月後の輸出を占うとされる「海外からの新規受注」は1.9ポイントの改善にとどまり、水準も46.1と低い。以上、『日本経済新聞』(1月31日付)が報じた。
製造業には、新規受注の動向がポイントになる。海外受注が依然として不振であることは、国内景気に響くはずだ。国内需要が相当の回復をしない限り、中国経済を支えきれる筈がない。
実は、個人消費では気懸りな二つの動きが出て来た。豚肉相場の下落とアリババ株急落である。
『フィナンシャル・タイムズ』(1月31日付)は、「中国の経済再開、銅や鉄の需要増 豚肉は例外」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の経済再開に伴って相場が軒並み高騰するなか、大きな例外となっているのが豚肉の下落だ。中国政府がコロナ規制を緩和し始めて以来、豚肉のスポット価格は50%近く下落している。中国は世界最大の豚肉生産国かつ消費国だが、多くの家庭がコロナ下で安い鶏肉に切り替えた。このため大連商品取引所で売買されている豚肉先物は中国が制限措置の緩和を始めて以降に25%ほど下げている。上海のサイトニア・コンサルティングの商品アナリスト、ダリン・フリードリクス氏は、この結果、世界でのたんぱく質の需要に対する中国の寄与度は『より弱くなる』と話している」
商品市況は、軒並み高騰している中で豚肉だけがスポット価格が約50%も下げている。いわゆる「リベンジ消費」は、ゼロコロナ打切りで気持ちが晴れやかになるから、豚肉料理を楽しむであろうという期待だ。それが、裏切られそうである。豚肉の代替として、鳥肉が定着しているのだ。中華料理といえば豚肉が定番。この前提が狂い、鳥肉が主役という状況変化である。過去3年のゼロコロナ生活での節約が定着したのであろう。
『ブルームバーグ』(1月31日付)は、「アリババ株下落、今週に入り時価総額約3.6兆円失うー株高失速の恐れ」と題する記事を掲載した。
中国のアリババグループの株価は1月30日の香港市場で約3ヵ月ぶりの大幅下落を記録した。中国の消費回復が大きな期待に応えられないとの投資家の懸念を浮き彫りにしている。
(2)「アリババ株は今週に入り9.1%下落し、時価総額280億ドル(約3兆6500億円)が吹き飛んだ。ただ、今月に入ってからの上昇率は約25%に縮小したものの、依然として香港株の指標、ハンセン指数の2倍余りの値上がりとなっている。一部の市場参加者はアリババの利益が織り込み済みのペースで回復できるか懸念しており、それにより金融機関の強気なリポートを受けた上昇基調が損なわれる可能性がある」
アリババ株急落の背景には、中国の個人消費が予想ほど好転しないだろうという警戒感がある。中華料理のメインである豚肉が、鳥肉に取って代わられるという状況下では、個人消費が盛り上がるまいとの慎重論だ。
『ロイター』(1月31日付)は、「中国不動産部門、今後も成長の重石にーIMFチーフエコノミスト」と題する記事を掲載した。
国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は31日、中国の不動産部門が引き続き経済成長の重石になると指摘、同部門の処理が進むまで成長のけん引役にはならないとの見方を示した。
(3)「今年の中国経済は、厳格な新型コロナウイルス封鎖措置の解除で回復する見通しだが、来年以降も景気回復が持続するとは予想されていないという。シンガポールで会見した同氏は「不動産セクターは、非常に重要なセクターであり、過去数年、経済成長の重要な要素となってきた。今後は、不動産部門の処理が進むまで、そうした成長エンジンとはならないだろう」と述べた」
米銀JPモルガン・チェースによると、中国の都市部の空室率は大都市で7%、中堅都市で12%と世界平均を大きく上回る。また、2018年以降販売された住宅の約70%が既に1軒ないしそれ以上の不動産を所有する人が購入したもの。この現実を見ると、過去の住宅需要が投機であったことが明瞭だ。3年間のゼロコロナの中で、住宅が今後も投機対象であると信じ込んでいる層がどれだけあるかだ。はなはだ疑問である。
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