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民族のしがらみとでも言うのか、韓国左派の外交論は日米を警戒し中国を潜在的な庇護者と見ている節がある。歴史的に言えば、1000年単位で中国の支配下に組込まれていたことが、遺伝子として「中国怖し」という心理状態を生み出しているのであろう。

 

金大中政権(1998~2003年)で、統一部長官を務めたチョン・セヒョン氏が最近、『チョン・セヒョンの洞察―国際秩序から時代の答を探す』を出版した。このチョン氏へのインタビュー記事を取り上げてみた。節々に、習近平氏も主張する「米国衰退・中国発展」という古くさい前提で韓国外交の在り方を主張しているのだ。時代錯誤的な印象を拭えないのである。

 

『ハンギョレ新聞』(2月20日付)は、「米国寄りから抜け出し、『骨のある』自国中心の外交が韓国には必要だ」と題するインタビューを織り交ぜた記事を掲載した。

 

(1)「2月14日に会ったチョン氏は、「米国の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏も十数年前に『米国は衰退し、中国が浮上している』と診断したにもかかわらず、韓国の外交官や国際政治学者の中には依然として米国側に立っていればうまくいくと信じている人が多い」と残念さをにじませた」

 

下線部は、キッシンジャー氏が「中国代理人」のように振舞っていた時代の話である。不動産バブルに塗れ人口減に陥った中国経済が、米国を追い抜くのは不可能である。10年以上も昔の思い込みで、米中を比較するのはナンセンスである。語るに落ちたと言うべきだろう。

 

(2)「韓国は、『米国と中国をうまく活用するなど等距離外交をしなければならない』と述べた。「韓国の最大交易国である中国は2010年にすでに世界経済のナンバー2になっており、2049年には米国の国内総生産(GDP)を追い越すという目標に向かって走っています。韓国が世界経済10位になったのも中国のおかげです。にもかかわらず、尹大統領はNATOに行って『脱中国』を叫んだのだからもどかしい」

 

韓国が、米中二股外交を仕掛けられるのは平和時だけである。現在のように、冷戦に入っている中で、二股外交は最も危険であり、中国に利用されるだけだ。韓国は、米韓同盟というしっかりした杭に繋がっていることで、中朝ロからの侵攻リスクを避けられる環境になっている。

 

(3)「チョン氏は、米国の言うことに従うだけのけの外交は、韓国が日本の下に置かれる結果を再び招きかねないと懸念を示した。「今、日本は米国の副将の役割を果たしています。米国の力が弱まった時『自分が出て中国と11で対抗し米国的秩序を維持する』として、米国の委任を受けようとするでしょう。実は米国中心の秩序は口実にすぎず、日本が中心となることを夢見ているのです。現在、日本の軍艦が掲げている旭日旗がそのような野心をよく示しています。米国にとって韓国は日本の下です。米国ばかり追いかけていると、日本の下に入るしかありません。しかし、中国とも良い関係を維持すれば、中国の力が強くなる時、韓国が中心国に入ることがより容易になります」と「

 

下線部分は、妄想と言うほかない部分だ。日本は、韓国を支配して何のメリットがあるのか。ゼロ以下である。第一、米国経済は依然として世界1位をキープし続けられる「科学技術力」と「プラグマティズム」という実践哲学に裏付けられた国家である。米国を甘く見ると、「第二の習近平」になるだろう。

 

(4)「南北関係の見通しについては、「南北関係にも四季がある」としてこのように答えた。「今は冬の時期に入っています。でも、英国の詩人シェリーが『冬来りなば春遠からじ』と詠んだように、次の政権は金大中・盧武鉉政権時代のように南北関係の春を迎える可能性があります。もちろん『金大中-イム・ドンウォン』『盧武鉉-イ・ジョンソク』のような大統領と参謀の組み合わせがあればの話ですが」と指摘する」

 

北朝鮮は、完全に中ロ枢軸に組込まれている。北朝鮮自体に、もはや「南北融和」という発想が消えている。世界情勢は、刻々と動いていのだ。20年前の発想法で考えていては危険である。

 

(5)「チョン氏は著書の最後に、北朝鮮は核を放棄したウクライナが侵攻されるのを見て、「絶対に核を放棄してはならない」と考えただろうとし、「今後、米国が北朝鮮の核保有を既成事実とする交渉に韓国を追い込み、不意打ちを食らう恐れもある」と述べた。「核保有国であることを認められた北朝鮮が軽量化・小型化した核爆弾を実戦配備するのが、韓国にとって最悪の状況です」。ならば、どうすれば良いだろうか。「北朝鮮が韓国を軍事的に威嚇すれば、彼らの暮らしが脅かされるほど、南北の経済的な依存度が高まるよう構造化すべきです。今の韓中関係がまさにそのような状態ですね」と指摘」

 

北朝鮮は、前述の通り「中ロ」枢軸に組込まれている。中国自身が、南北融和を望んではいないのだ。北朝鮮は、中国の安全保障にとって緩衝地帯であるからだ。

 

(6)「チョン氏は、北朝鮮との関係を統一でなく、欧州連合(EU)のような国家連合を目指すべきという持論も示した。「事実上、南北が二つの国家になって久しい。なにより、経済力の差が大きすぎます。南北の所得の差は28倍にもなります。この状態では連合も容易ではありません。統一は北朝鮮体制に変化が生じ、南北の類似性と同質性が高まった時点で、南北の住民が決める問題です」

 

(5)で、私が指摘した理由で、南北の国家連合はあり得ない。もし、実現するとすれば、中国共産党が崩壊した後であろう。韓国左派が、このような前提を立てることは不可能だ。中国世界一論を信じているためである。