2020年1月のパンデミック襲来以前、想像もできなかった事態が発生している。米国では、コロナによる在宅勤務が普及して、出社率が50%以下になっている。つまり、全社員に対して平均出社率が5割という時代になったのだ。残り半分は、在宅勤務である。出勤と在宅を組み合わせた勤務状態が一般化しているものである。
米国では、この在宅勤務の時代になったことを背景に、オフィス用の商業ビルが空室になるリスクが高まっている。この結果、商業用ビルの新築計画が見直されている。この流れは、必ず日本へも「上陸」する。日本では、都心の一等地にビルを持つ不動産会社にとって、聞き捨てならぬニュースになる。
『フィナンシャル・タイムズ』(2月22日付)は、「米オフィス『1億平米余剰に』 ハイブリッド勤務定着」と題する記事を掲載した。
出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド型勤務の普及を受け、2030年までに米国のオフィス空室面積が過去最高の11億平方フィート(約1億平方メートル)に達し、コロナ禍前を55%上回る見通しが不動産関係企業の試算で明らかになった。働き方の変化が商業不動産業界にもたらす影響の大きさを浮き彫りにしている。
(1)「米不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは、在宅勤務やハイブリッド型勤務の直接的な結果として、20年代末までに3億3000平方フィート分の余剰オフィススペースが発生するとするリポートを発表した。これはワシントンDCを中心としたワシントン首都圏にあるオフィススペースの合計にほぼ相当する。その他に、「自然、ないし通常」と定義される余剰スペースが7億4000フィートに上ると見込んでいる」
2030年までに、ワシントン首都圏にあるオフィススペースの合計が余剰になるという驚くべき予測が出て来た。
(2)「クッシュマンは、全米のオフィススペースの約4分の1が既に需要の実態にそぐわなくなっており、60%が陳腐化のリスクに直面していると見ている。そうした物件は、ニューヨークで再開発が進むように、改装や用途変更のための「相当な投資」が必要になる可能性があると結論づけた。この傾向は北米で最も顕著だが、欧州やアジアでも見られるという。クッシュマンのアンドリュー・マクドナルド社長は「『陳腐化』というのが現状を最もよく表す言葉だろう」と話し、今回のリポートは、現状をおそらく「転換点」であるとみていると述べた」
現在が、オフィスビルにとって転換点になると見られる。サービス経済化の波に乗って、オフィス需要が増え続けたが、今回のパンデミックがこの流れを変えると言うのだ。
(3)「クッシュマンが示した予測は、同社が商業不動産業界をリードする企業の1つであることもあり、相当な衝撃度をもっている。同社はつい最近まで、他の多くの不動産関連企業と同様に、ハイブリッド型勤務が不動産市場に及ぼす長期的な影響について、もっと楽観的な見方をしていた。だがクッシュマンはここにきて、市場は継続的な構造変化に見舞われており、その流れは今後も強まる可能性が高いという見方を受け入れるに至った。20〜30年に更新時期を迎える賃貸契約のうち、既に更新期を迎えたのは3分の1にすぎず、今後、賃貸面積を縮小したり撤退したりするテナントが増える可能性がある」
20~30年に賃貸契約の更新期を迎える企業で、契約を更新したのは3分の1に過ぎない。今後は、撤退するテナントが増える可能性が強いという。
(4)「米国では、コロナ禍からの景気立ち直りに伴って雇用が堅調で、失業率は再び過去最低の水準となっている。しかし、クッシュマンのチーフエコノミストのケビン・ソープ氏は、雇用拡大と企業のオフィススペース需要の相関は「崩れた」と指摘している。コロナ禍後の雇用増が、空室を埋めるオフィス需要につながっていないという。テナント企業が必要とする従業員1人あたりのスペースは縮小してはいるが、具体的な変化の程度ははっきりしない。「縮小傾向にはあるが、減少の程度は依然として流動的だ」とソープ氏は語った」
これまで、雇用拡大と企業のオフィススペース需要の相関が成り立っていた。だが、この相関関係は、パンデミックによる在宅勤務の普及で崩れたという。
(5)「クッシュマン以外にも、金利の上昇がオフィス需要の減少傾向に拍車をかけているとみて、厳しい市場予測に転じる不動産開発業者が増えている。米不動産投資信託(REIT)のボルネード・リアルティ・トラストを率いるスティーブン・ロス最高経営責任者(CEO)は、2月中旬のオンライン決算説明会で、ハイブリッド型勤務が一過性の現象ではないとの見方を示した。「金曜はもうなくなった。月曜日はすれすれだ」と指摘」
「金曜はもうなくなった。月曜日はすれすれだ」という指摘は、ニューヨークの地下鉄乗降客の減少に現れている。地下鉄では、月・金の運航本数を減らす予定だ。
(7)「高級オフィスビル群は依然として例外的に高い需要を誇り、一般的な物件とは一線を画している。クッシュマンはリポートで、このカテゴリーに入るオフィス物件は30年までに米国の全賃貸オフィスのわずか15%になると予測した」
在宅勤務の影響を受けない全米の賃貸オフィスは、わずか15%程度という。凄い時代が来る。日本もこの影響が出てくるであろう。


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