テイカカズラ
   

アリババは、傘下の金融企業「アント」の上場問題にからみ、中国政府の強い管理下に置かれてきた。アントの株主に、習氏の政敵である江沢民一派が潜んでいたことを発見されたからだ。習氏にとって、政敵に利益を与えることは絶対に許せないことである。政治的問題から、IT関連企業は全て政府の監視下にある。こういう状態で、自由なビジネスが可能か、が問われる。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月24日付)は、「アリババ、再成長阻む『統制』 ネット通販頼みに限界」と題する記事を掲載した。

 

中国ネット通販最大手のアリババ集団が再成長へ険しい道を歩み始めた。中国当局による統制が常態化するなか、中国共産党や政府との関係強化が必須になり、屋台骨を支えるネット通販事業には逆風が吹く。クラウド事業と海外事業に再起を託すものの、新領域の競争環境は厳しく、縮小均衡に陥るリスクもある。

 

(1)「8日、お膝元の浙江省杭州市の余杭区と結んだ協定の調印式に、張勇(ダニエル・チャン)会長兼最高経営責任者(CEO)が出席した。張氏は「アリババは今後10年、常に杭州と中国に根ざし、国際競争力のある中国企業に成長して貢献する」と宣言。区との協定にトップの張氏が出席することで、地方政府との関係を重視する姿勢を示した格好だ。足元では同様の動きが相次ぐ。2022年12月にアリババが浙江省トップである易煉紅・党委員会書記の訪問を受け付けたと報じられたほか、23年1月には杭州市と10年ぶりに協定を交わした。ここ2年ほど、アリババと地方政府との連携は目立たなかっただけに接近ぶりが目を引く」

 

アリババは、再出発にあたり地方政府との関係を強化している。これは、アリババが、地方政府の「財布」になることを示唆する。「融資平台」の救済などで、アリババが一役も二役も義務を背負っていることであろう。

 

(2)「中国当局は巨大IT(情報技術)業界に関し、成長を促す姿勢を示し始めた。「基本的に是正が完了した」。中国国営の新華社通信は1月、中国の金融監督トップである郭樹清氏が巨大ITの金融業務に関し、見解をこう示したと報じた。「プラットフォーム企業の健全な成長を促す」とも述べ、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏による政府批判とも受け取れる発言で始まった監督強化が、節目を迎えたとの受け止めが広がった」

 

アリババの金融会社アント・グループは、馬氏が関連会社を通じて保有する議決権比率を下げて実質支配株主から外れ、集団指導体制に移行すると発表した。馬氏は、アントの議決権の53%を握っていたが6%まで低下したという。アント・グループは、馬氏の手を離れて政府の管理下に入ったことを示唆する。

 

(3)「政府が成長支援に転じたのは、いわば「禊(みそぎ)」が終わったことが一因だが、それだけではない。中国経済の回復を進めたい意図もあったとされる。新型コロナウイルスの感染を封じ込める「ゼロコロナ」政策で経済の活力は失われ、深刻な打撃をもたらした。税収の減収や雇用環境の悪化に見舞われるなか、巨大IT企業をけん引役に苦境を打開したい狙いがあったとみられる。今後は中国国内で自由に事業展開し、再び成長軌道に戻るような印象もあるが、そう単純ではない。政府による「統制」という本質には何ら変化がないからだ」

 

中国政府は、巨大IT企業を徹底的に調べ上げ、反習近平派が潜り込めないように手を打ったのであろう。だが、IT企業を支配下に収めても、企業の発展が止れば、成長の果実に預かれないというリスクを抱える。

 

(4)「アリババのグループ企業の1社に1月、中国政府機関系の企業が株主に加わった。出資比率は1%だが、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、通常の議決権よりも強い権限を持つ「黄金株」に似ているという。新たに就任した取締役は、中国当局の職員と同姓同名で、取締役の選任など経営に大きな影響を及ぼす可能性があるとする。21年秋にデータ安全法と個人情報保護法が、22年夏にはネット大手の統制強化を盛り込んだ改正独占禁止法が施行された。政府の意向に沿わない動きがあれば処罰を受ける恐れがあり、強権化が進んだといえる」

 

アリババのグループ企業の1社に、中国当局の職員が取締役に就任した。企業内部から、アリババを操縦する意図であろう。ここまでIT企業に対して疑心暗鬼になっているのだ。これは、「金の卵」を踏み潰すに等しい行為であろう。

 

(5)「習近平(シー・ジンピン)指導部が「共同富裕(共に豊かになる)」を掲げるなか、アリババなどに対して「もうけすぎ」との批判は根強くあった。ネット通販市場での独占的な地位を武器に、取引先に競合との取引を制限していたことで罰金処分も受けた。かつて四半期ごとに2桁の売上高成長率を誇ってきたアリババだが、足元では成長鈍化が鮮明だ。22年10〜12月期の売上高は前年同期比2%増の2477億元(約4兆8000億円)にとどまった。政府の統制に加えて重荷になっているのが、競合大手の攻勢だ」

 

今後のアリババは、どのように成長できるのか。翼をもぎ取られ、足かせをはめられた格好だ。中国経済を象徴するケースになろう。