中国当局は、人工衛星によるウクライナ侵攻の様子を克明に分析しているという。ここまで、関心を寄せているのは、台湾侵攻への準備であることは間違いない。中国は同時に、台湾侵攻の際に受ける西側からの経済制裁によって、どの程度の被害が出るかの推計も始めた。
この分野では、すでに台湾侵攻に伴う世界経済への被害額推計が行なわれている。米国務省は中国が台湾を封鎖した場合、推計2兆5000億ドル(約356兆円)の経済損失が生じるとの調査結果をパートナー国や同盟国に通告済である。米調査会社ロジウム・グループが同省から受託・作成した同報告書の内容を知る関係者6人が明らかにしたもので、『フィナンシャル・タイムズ』(22年11月11日付)が報じた。
『日本経済新聞 電子版』(2月25日付)は、「対ロシア制裁を見つめる中国、経済封鎖の研究を急げ」と題する記事を掲載した。
ウクライナへ侵攻したロシアに米欧日は強力な経済制裁を発動した。重要資源や先端技術の禁輸、中央銀行の海外資産の凍結、国際決済網からの排除――。一部始終をつぶさに観察してきた国がある。中国だ。
(1)「2022年12月、政府系シンクタンク、中国社会科学院トップに就いた高翔氏は、「経済封鎖への対応策の研究を加速しろ」と経済学者や歴史学者に指示した。高氏は明・清の鎖国政策の研究で知られる。鄧小平による改革開放では、否定されがちだった鎖国について「外国の侵略を防ぐのに有効だった」と再評価し、「自主的開門制限」と言い換えるよう提唱した。台湾対岸の福建省の宣伝部長も務め、台湾問題にも詳しい」
中国社会科学院トップに就いた高翔氏は、門戸閉鎖派である。明・清の鎖国政策が成功したという評価であるからだ。この結果、産業革命後の世界情勢を見落として、「アヘン戦争」に巻き込まれるという歴史的な大失敗をした。鎖国は、国運を沈滞させるのだ。
(2)「共産党関係者によると、台湾有事の経済封鎖に関する研究が本格化したのは17年秋の党大会後。共産党政権や国民経済の安定確保、海外からの技術輸入の継続――が主なテーマという。中国は対ロ制裁に目をこらし、温めてきた「封鎖対策」に磨きをかける。中国人民大学国際関係学院の李巍教授は「経済拠点国家の育成が重要になる」と指摘する。米欧日から制裁を受けた場合、「抜け穴」になる国を意味する。中国は中東や中央アジアの国々に照準を定める」
中国は、中東や中央アジアを「抜け穴」国として利用する魂胆だ。だが、中国貿易の主要国は、全て西側諸国である。この先進国との貿易を絶ち、発展途上国と貿易をしても、中国国民の不満を抑えることは不可能のだ。自ら選ぶ経済封鎖は、「自壊」を早めるであろう。そこまでして、台湾へ侵攻する。正気の沙汰には見えないのだ。
(3)「習近平(シー・ジンピン)国家主席は22年12月、約7年ぶりにサウジアラビアを訪れ、アラブ諸国の首脳らに「石油や天然ガス貿易の人民元決済を展開したい」と訴えた。ドル決済を封じられてもエネルギー調達を確実にする思惑とみられ、2月にはイランのライシ大統領も北京に招いた。制裁されやすいドル依存の脱却も進める。中国の保有する米国債は1年で2割減り、12年半ぶりの低水準だ。対照的に22年の金の輸入額は前年から6割増え、中国人民銀行(中銀)も金の保有を増やし始めた」
サウジは、安全保障で米国の庇護下にある。そのサウジへ、ドルに変えて人民元取引を申入れて断られたのは当然である。無鉄砲なことをやっているものだ。
(4)「中国は侵攻を批判せず、ロシアに「貸し」をつくる。米欧から警告されてもロシアとの貿易を増やし、習氏は訪ロを検討する。ロシアが弱体化すれば台湾有事の際に「味方」がいなくなるのも原因とみられる。22年12月の中韓外相協議では「産業サプライチェーン(供給網)の円滑な保障を願う」と韓国に求めた。対中半導体規制に加わらないようクギを刺し、年明けもビザ発給の停止で揺さぶった。中国経済に依存する韓国を技術封鎖の「迂回路」にする思惑とみられる」
韓国は、米韓同盟に縛られており、もはや「二股外交」を行なう余地はなくなっている。中国の認識が足りない証拠だ。
(5)「米欧日は有事で中国との経済関係が途絶えても自国経済を守っていける態勢づくりが急務となる。国内総生産(GDP)の規模がロシアの10倍ある中国からの依存低減は容易ではない。とくに地理的にも経済的にもつながりの深い日本は相当な覚悟を求められる。早稲田大の戸堂康之教授らの試算では、中国から日本への輸入の8割が2カ月間途絶すると約53兆円分の生産額が消失する」
日本が困れば、中国も同等に困るのだ。中国の貿易構造が、完全に開放型になっているからだ。
(6)「軍事以前に中国からの物資の途絶で米欧日の経済が立ち行かなくなれば、台湾有事などで中国を止めるのは難しい。逆に中国なしでも自国経済をある程度回せれば、経済制裁でフリーハンドを得られ、それが対中抑止力にもなる。経済安全保障でどちらが早く優位に立つか。民間企業も巻き込んだ競争が始まった」
中国も、食糧自給率では70%前半まで低下している。これが、最大のウイークポイントである。中国が得をして西側が困るというワンサイドゲームではない。西側は、サプライチェーンの分散を進めている。中国には、そういう動きがないのだ。現在の経済成長を前提にすれば、中国は西側諸国と貿易をしなければならないシステムだ。


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