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出生率激減で未来はない

政治対立は国民にも浸透

財政悪化の元凶が文在寅

MZ世代登場は20年後

 

韓国政治は混乱の極みにある。最大野党「共に民主党」代表の李在明氏の逮捕を巡り、国会の許諾が必要という、前代未聞の事態を迎えている。李氏は、「疑惑のデパート」とさえ言える人物である。数ある疑惑の中で焦点なのは、李氏が城南市長時代に行なった都市開発で動いたとされる巨額の賄賂である。関係者は全て起訴されており、逮捕されていないのは「本丸」とされる李氏だけだ。

 

当の李氏は、「法治の仮面をかぶった司法狩りが日常化していく暴力の時代」として尹錫悦政権と検察を強く批判し抵抗している。尹大統領と検察の陰謀にすり替えているが、日本であればこういう醜態にはなるまい。嫌疑を受けた時点で、所属政党を離党するのが常識であるからだ。こういう、議会人としての常識すら持ち合わせていない韓国政界は、韓国の抱える非常識と深い関わりがあることを示唆している。

 

出生率激減で未来はない

人口問題は、国家の基本構成要因である。その人口問題で、韓国は世界でワースト・ワンという事態に落込んでいる。俗な表現を使えば、韓国は世界で最初に消える国の候補だ。これは、合計特殊出生率で推計できる。合計特殊出生率は、1人の女性が生涯に出産する子どもの数である。その国は、2.08人で人口横ばいを維持できる。

 

韓国の合計特殊出生率は、2022年に0.78である。前記の2.08に比べて37%と超低位の水準だ。21年は0.81であった。韓国統計局によれば、24年はさらに低下して0.70になると推計されている。文政権時代、この出生率低下問題を巡って、委員会の座長である文氏は一度も会合を開かずに無策を通した。人口問題よりも、南北融和と反日で精力を使い果たしていたのだろう。5年間もの時間が、空費されたのである。

 

文氏が、出生率低下に真っ正面から取り組まなかった理由は何か。それは、将来の南北統一を夢見ていたのであろう。北朝鮮人口2600万人と韓国5200万人を合計すれば、ドイツ並みの人口規模になると皮算用を弾いていたのでないか。そうでなければ、人口対策に手を打たなかった理由が分からないのだ。

 

韓国の合計特殊出生率急低下の背景で最大要因は、婚姻件数が減少したことだ。儒教国家の韓国では婚外子が少なく、婚姻数の減少が出生率低下となった。結婚は、経済要因と深く関わっている。就職と住宅の問題がそれだ。韓国では、この両方で大きな障害が発生していた。就職難と住宅高騰である。いずれも、文政権が政策で失敗し結果である。

 

有効求人倍率は日本の場合、継続的に1以上の水準を維持している。韓国では、ほぼ0.5前後と、求職者数に比べて求人数が半分程度の状況だ。こうして若年失業率(15~29歳)は、ほぼ10%に近い高水準が続いている。しかも、大手企業の大卒新入社員の平均年齢は、1998年には25.1歳だったが、2020年になると31.0歳にまで跳ね上がっている。この間の約6歳の遅れは、結婚年齢を遅らせた。

 

就職難は、年功序列・終身雇用が大きな災いになった。硬直的な雇用慣行が、労働市場の流動化を阻止して、企業に対して新規雇用へ慎重姿勢を取らせているのだ。これを改めるには、労働市場を流動化して、不況時の解雇を弾力に行なわせることであろう。これが結局、臨機応変の雇用増をもたらすのである。

 

結婚は、就職してからとなるので当然、30代にはいってからだ。もう一つクリアしなければならないのは、新居の確保である。文政権5年間で、ソウルのマンションは約8割もの高騰になった。これも、婚姻を遅らせる理由である。結婚に必要な初期費用が、非常に高いのだ。特に男性にその負担が大きかった。

 

2022年の調査では、住宅を用意するのに約2200万円、嫁入り道具の購入が約130万円、結婚式および新婚旅行などに約250万円を支出している。費用の平均60%を男性が負担するという。男性側の就職年齢が30代で、前記のような費用を工面するとなれば、結婚に当っては、「愛」だけで解決できない金銭問題が障害になるだろう。

 

政治対立は国民にも浸透

韓国の合計特殊出生率急低下の背景には、韓国の抱える政治問題が深く関係している。となると、韓国政治が近代化して真摯な討議が可能という問題に関わるはずだ。現在の与野党は、無闇やたらと対立する。この構図を解決することが可能か、という難題に突き当たるのだ。

 

韓国の党派的な対立は、国民生活のなかにすら浸透している。韓国の最大紙『朝鮮日報』が行なった世論調査では、驚くべき結果が出ている。「自分と政治的立場が違う人は国家的利益に無関心だ」という回答が、「国民の力」「共に民主党」支持者いずれも67%に達したことだ。与野党の支持者が、互いに相手を「国の役に立たない人間」だと指弾しているのである。

 

冒頭で取り上げた「共に民主党」代表の李氏が、自分の逮捕状請求に対して「法治の仮面をかぶった司法狩りが日常化していく暴力の時代」と言い放って自己弁護する姿は、検察と大統領を「悪しき、醜い存在」として責める「二極分化」を象徴している。これは、韓国政治が治療不可能なほどの深刻な対立に落込んでいる状況を指し示すのだ。(つづく)

 

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