中国が、ロシアへ接近する姿勢を強めている。このことから、世界的に台湾有事へのリスクを警戒する姿勢が高まった。中国は、これを打ち消すべくウクライナを巡る和平案を発表するなど、ハト派ぶりを演じている。
先の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ロシアのウクライナ侵略を巡る意見対立から共同声明の採択が見送られた。議長国のインドが代わりに発表した議長総括では、反対した国がロシアと中国だったことを名指しする異例の措置を取ったほどだ。こうして、中国の地政学リスクは、いやが上にも高まる事態になっている。
『ロイター』(2月27日付)は、「海外勢が懸念する中国の地政学リスク、中長期資金に変化」と題する記事を掲載した。
多くの大手資産運用会社が中国資産を敬遠し、「ポスト・コロナ」の株高で得られる収益をあえて見逃しつつある。目先のリターンの妙味よりも、地政学的な懸念が大きいからだ。
(1)「香港株の指標となるハンセン指数は1月末までの3カ月間で50%上昇したものの、外国人の資金流入は鈍化。ブローカーの分析結果に基づくと、こうした株高の大部分は、手早く稼ごうとするヘッジファンドの仕掛けが原動力とみられる。もっと長い目で考える投資家にとっては、米中の競合関係が強まる中で、ウクライナにおける戦争や中国が習近平国家主席の権力基盤のさらなる強化を進めているという要素が、中国投資を考え直す誘因となっている」
中国のゼロコロナ打ち切り直後は、中国株へ熱狂的な買いが入った。だが、中長期資金は慎重姿勢である。中国に地政学リスクがつきまとっているからだ。
(2)「何人かの投資家は、台湾海峡で米中が軍事衝突する危険が高まっていると警告する。別の投資家は、ウクライナの戦争で外交関係や貿易面での結びつきが強固となり、中国と西側は互いにますます反対の立場に位置するようになったと説明する。これら全ての材料が、中国に資金を振り向ける上で新たなリスクをもたらしている格好だ。富裕層や財団などの資産95億ドルを運用するベル・エアー・インベストメント・アドバイザーズのパートナー、ケビン・フィリップ氏は、「米国投資家としては、敵対陣営の政府が経済を発展させるのを後押ししているのではないか、と考える必要がある。そのような懸念を持つかもしれないわれわれの投資家にとっては、中国以外に数多くの機会が存在する」と語った」
米国の投資家は、中国への投資が「敵対国への投資」という位置づけになる危険性を指摘している。目先の値上り利益に惑わされないという意味である。
(3)「月次データを見ると、中国株ファンドへの資金流入額は昨年12月に154億ドルと8カ月ぶりの高水準を記録したが、今年1月には43億ドルまで縮小した。1月は640億元だった株式相互接続制度経由の外国人による中国本土株の買い越し額も、2月は約200億元(約30億ドル)にとどまっている。ゴールドマン・サックスのアナリストチームは、米国と中東における投資家との会合を踏まえたノートで「長期資金の運用担当者は、中国に新規資金を投じるのを幾分ためらっている」と記し、その理由として米中の地政学的環境の不確実性を挙げた」
長期資金は、中国へ新規資金として投じることに慎重になっている。米中対立が、激化するというニュースはあっても、米中接近というニュースがないことも投資環境を悪化させている。
(4)「中国本土株の代表的指標となる上海総合指数は昨年10月終盤から今年1月終盤までに15%上がっており、投資していれば得られるリターンは大きい。それにもかかわらず投資家が消極的になっている事実が、より根深い問題を提起している。アビバ・インベスターズのシンガポール駐在ポートフォリオマネジャー、ウィル・マルコム氏は、これは中国資産の構造的な評価が下がる流れの一環なのではないか、との不安が一部から聞こえてきていると指摘した」
下線部は、誰かが中国株を売り抜ける機会をねらって、一時的に買い煽って売り場を作っているという意味だろう。投機家が、よく使う手である。
(5)「政府系ファンドや年金基金、財団などの資産運用を手掛けるマン・ニューメリックも、一部の機関投資家が良好な投資環境にあっても中国への資産配分を見直していると明かした。グレッグ・ボンド最高経営責任者(CEO)は「顧客の間で新興国市場を考える際に、中国を含めた地域と中国以外に分ける見方が出てきている」と述べた」
政府系ファンドや年金基金、財団などの資産運用は、堅実投資を基本とするので、中国への資産配分を見直しているという。これは、中国市場に致命的な損害を与えるであろう。
(6)「中国の経済データが消費と需要が力強く回復していることを示し始めれば、急速な資金流入が起きてもおかしくない。ただ、足元までの海外の大手投資家の態度を見る限り、資金フローに根本的な変化が生まれるには、市場心理自体が大きく改善する必要があるとみられている」
中国の電子商取引大手、アリババに期待した投資家は、現実の厳しさに引き戻されている。アリババ株は、この1カ月間で30%も下落したのだ。中国の経済正常化を巡る過剰な期待は、早くも冷めつつある証明だ。中国経済にエンジンが掛かるのは、そう簡単でないのだ。これから、不動産バブル崩壊という大きな代償を払わされるのである。


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