トヨタ自動車は、HV(ハイブリッド車)の特許を無料公開して、中国での普及の後押しをしたが今、その成果が出ている。中国はEV(電気自動車)の普及を進めているが、給電設備が不足しているので、ガソリンと電気を併用するHV人気が高い。HV普及で、トヨタの読みが当った形である。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月28日付)は、「EV超えのハイブリッド車 中国で人気加速」と題する記事を掲載した。
米電気自動車(EV)大手のテスラに次いで価値の高いEV企業は、米国内のリビアン・オートモーティブでもルーシッド・グループでもない。2020年に米国預託証券(ADR)を上場した中国メーカーの理想汽車(リー・オート)だ。時価総額は約260億ドル(約3兆5400億円)で、先にADRを上場した蔚来汽車(NIO)の200億ドルやリビアンの170億ドル、ルーシッドの150億ドルをいずれも上回る。
(1)「中国のEV新興企業の時価総額が、米国の競合社よりも高いのは驚くに当たらない。理想汽車と蔚来汽車は、米国よりも成熟した中国EV市場の高級ブランドであり、製造でも先を走っている。第4四半期に理想汽車は4万6319台を納車し、蔚来汽車は4万52台だった。一方、リビアンは8054台、ルーシッドは1932台だった」
理想汽車は、販売台数でも他社を圧倒している。HVの売行きが好調な結果だ。
(2)「理想汽車は27日の通期決算発表で、今四半期(1~3月期)に5万2000~5万5000台を出荷する見込みだとした。米国の同業者と比較して、中国勢のADRは生産台数が多い割に価格が安い。驚くべきは理想汽車が蔚来汽車を追い抜いて、新世代の中国新興勢の中でトップに立ったことだ。理想汽車は、テスラが世に広め、他の新興企業や従来型自動車メーカーの技術的な焦点となってきた純粋なEVを製造していない。同社は、発電用ガソリンエンジンを搭載し、バッテリーが足りなくなった際に使用するレンジエクステンダーEV(航続距離延長付き電気自動車)を専門としている」
理想汽車は、HVである。HVは、技術的に難しいモノとされるが、トヨタが基本特許を無料公開しているので、新しい企業でも製品化できるのであろう。トヨタの狙いは、HVの普及とEVへ取り組みを促進することにあった、HVは、EVとガソリン車の両機能を持つので、EV特化が可能である。
(3)「理想汽車はこの技術を利用して昨年、スポーツ多目的車(SUV)「L9」と「L8」の2車種を発表した。今週に納車を開始した小型版「L7」は、発電機を使用せずに約210キロ走行できる。発電機を使用すれば航続距離はほぼ1130キロまで延長できる。先進性はあるものの、実質的にはプラグインハイブリッド(PHV)である車種の人気は、多くの点でEVへの移行を主導した中国市場の特筆に値するところだ」
HVでは、航続距離はほぼ1130キロまで延長できるメリットがある。中国のような広大な土地では最適であろう。
(4)「政府の奨励策が長年行われたことで、純粋なEVは昨年、中国の全ての乗用車の約21%を占めるようになった(調査会社EVボリュームズ・ドット・コムのデータによる)。これは欧州の13%、米国の5.5%と比較してはるかに多い。だが中国の充電インフラは貧弱で、電気自動車の運転者はバッテリー切れの不安を抱えている。バーンスタインは、中国で今年、PHVの販売台数が65%増加すると見込んでいる。対して、純粋なEVの増加率は25%だ」
中国で今年、PHV(家庭で給電可能)の販売台数が65%増加すると見込んでいる。対して、純粋なEVの増加率は25%という。PHVは、自宅で給電できる利便性を買われて高い普及を見込んでいるのであろう。
(5)「欧州ではPHVは苦戦しており、2022年には販売台数が3%減少した。PHVは過渡期の技術で、従来型自動車から純粋なEVに移行する隙間を埋めるものに過ぎないとして切り捨てられることが多い。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、フォルクスワーゲン(VW)などの自動車メーカーは、ハイブリッド技術を重視せずにEVで先に進もうとしている」
欧州は、HVに否定的である。技術的にHVの開発に失敗し、トヨタが最初に技術開発したことへの「ジェラシー」があるとも言われる。
(6)「中国での理想汽車の成功は、この「全てかゼロか」戦略が近視眼的だというリスクを浮き彫りにする。それぞれの市場は独自の道を進むが、中国のパターンを欧米が踏襲する可能性もあると考えるのが妥当だ。EV販売の最初の波の後には、充電インフラで劣る地域の人々や長距離の運転を望む人々などがニーズに合ったハイブリッド車を取り入れる第2の波がやって来るかもしれない。それはEVへの投資を避ける理由にはならないが、トヨタ自動車のように産業の移行期に微妙なアプローチを採る自動車メーカーのほうが、将来的には賢く見えるようになるかもしれない」
EVが、いつガソリン車に取って代わるのか。世界中で誰も予測できずにいる。EVは、電池のコストと耐久性が普及のカギを握っている。自動車会社は、ガソリン車からEVへの切り変えのタイミングを間違えれば、経営は左前になるリスクと隣合わせだ。


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