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インドは、2020年代に米アップルの一大製造拠点(ハブ)に成長する可能性が十分に出てきた。昨年11月、アップルのサプライヤー台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)の中国・鄭州工場は、従業員の抗議行動が起こって生産中断に追い込まれた。改めて、サプライチェーン集中のリスクが浮き彫りになった。ここに、中国代替地として、インドが急浮上している理由がある。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月4日付)は、「鴻海、インドで生産増強計画 iPhone大幅増産か」と題する記事を掲載した。

 

台湾の電子機器受託製造大手、鴻海精密工業(フォックスコン)はインドで大規模な生産増強を検討している。米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の生産を数百万台規模で増やす可能性もある。

 

(1)「鴻海は、中国本土からの生産移管を進めており、インドで新たな生産拠点の設立も視野に入れている。鴻海はインド南部タミル・ナドゥ州のチェンナイ近郊にある既存工場でiPhoneの生産拡大を計画している。インド政府高官を含む複数の関係者が明らかにした。2024年までにiPhoneの生産台数を年間約20000000台に引き上げ、従業員数を約3倍の10万人に増やすことを目指しているという」

 

鴻海は2024年までに、インド南部タミル・ナドゥ州の既存工場でiPhoneの生産台数を年間約20000000台に引き上げるとしている。当初は、インドでの生産が軌道に乗るか危ぶむ声もあったが、順調に進んでいる。

 

(2)「南部カルナタカ州では新たな生産施設を建設し、iPhoneなどを生産する予定だと関係者は語った。さらに、半導体事業ではインド南部の都市ハイデラバードで新工場を建設するほか、炭化ケイ素の加工などを手掛ける施設なども検討しているという。今回の増強計画は検討段階にあり、変更される可能性がある。鴻海で会長を務める劉揚偉氏は今週インドを訪問し、ハイデラバードとカルナタカ州のベンガルールを訪れた。ニューデリーではインドのナレンドラ・モディ首相と会談した。モディ政権は世界の主要メーカーをインドに誘致する取り組みを強化している」

 

インドでの生産が軌道に乗ったので、新たにインド南部カルナタカ州では生産施設を建設し、iPhoneなどを生産する計画だ。これは、中国にとって脅威である。iPhone生産で約100万人が雇用されているだけに今後、インドが製造拠点になると中国で雇用問題が起こるであろう。

 

(3)「中国ではアップルのサプライヤーの多くが新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響で生産の混乱に直面した。このためアップルは中国以外での生産拠点づくりを促してきた」

 

アップルは、これまで中国での生産が軌道に乗っているだけに、他国への生産シフトに極めて慎重であった。だが、コロナ・パンデミックによる中国での生産中断で、中国集中生産による大きなリスクを認識した。同時に、米中対立で引き起される地政学リスクを計算に入れれば、生産拠点をインドやベトナムへ分散するメリットを考慮しなければならない。インドは、今年から世界最大の人口国になる。アップル製品の有力市場に発展する。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月16日付)は、「APPLEがインドで直営店展開へ 採用着手、巨大市場浸透」と題する記事を掲載した。

 

米アップルがインドで直営店の展開に動き出した。早ければ3月までに商都ムンバイに旗艦店を出店する見通し。インドのスマートフォン市場は価格の安い中国勢のシェアが高いが、アップルの存在感も高まっている。販売網を整備し、巨大市場インドでの浸透を急ぐ。すでにアップルはインドでオンライン販売を手がけているが、直営の実店舗は初めてとみられる。

 

(4)「香港の調査会社カウンターポイントによると、インドの2022年7~9月のスマホ出荷台数は約4500万台だった。メーカー別のシェアでは首位の中国の小米(シャオミ)が21%、次いで韓国のサムスン電子が19%を占めた。アップルは中韓勢を追う立場にあるが、7~9月は「iPhone13」の販売が好調で過去最高の5%のシェアを記録したという。3万ルピー(約4万7000円)以上の「プレミアムセグメント」では、アップルが40%を占めた」

 

インドのスマホ市場では、中韓の製品が先行している。だが、「iPhone13」の販売が好調で過去最高の5%(昨年7~9月期)のシェアを獲得した。中価格帯では、40%のシェアになっており、中・高所得層には浸透している。

 

(5)「アップルはiPhoneの展開を巡って、足元でインドでの生産拡大に乗り出している。22年9月には新型「iPhone14」のインド生産を発表しており、最新機種について中国とインドでの生産時期の差は縮小傾向にある。米中の経済対立などを背景に、中国への生産依存を減らす狙いがあるもようだ」

 

インドでも、新型「iPhone14」の生産が始まっている。中国とインドの生産技術格差が縮まっていることを示すものだ。冒頭に取り上げたように、24年には2000万台の生産が可能になったと見られる。