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EUの盟主であるドイツは、メルケル政権当時と異なって「脱中国路線」を歩みつつある。欧州は、ロシアのウクライナ侵攻を契機にして権威主義国家へ警戒を強めている。特に、中国がロシアを非難しないことから、台湾侵攻を企図しているものとみている。ショルツ首相は、「中国の台湾侵攻を認めない」と強い警戒観を見せた。この裏には、台湾半導体メーカーTSMCが、ドイツで工場建設することで交渉中という事情もあり、台湾擁護の姿勢を見せている。

 

『日本経済新聞 電子版』(3月16日付)は、「『台湾への武力行使認めず』ショルツ独首相インタビュー」と題する記事を掲載した。

 

ドイツのショルツ首相が日本経済新聞の単独インタビューに応じた。「特定の国への一方的な依存を避け、新しい販売市場を開拓する」と述べ、ドイツ経済の中国依存度を引き下げる考えを示した。台湾有事については「現状変更のために武力を用いてはならない」と中国をけん制した。ドイツはメルケル政権時代の中国偏重のアジア政策から大きく転換する。日独政府は18日、両国の首相らが出席する新しい定期協議の枠組み「政府間協議」の初会合を都内で開く。ショルツ氏は訪日前にベルリンの首相官邸で取材に応じた。

 

(1)「ドイツはアジア政策で中国を最重視し、外交・通商とも中国一辺倒といえる状況が長く続いてきた。しかし、習近平(シー・ジンピン)体制の強権化で警戒感が高まり、距離を置きつつある。ロシアのウクライナ侵略で、ドイツはエネルギーの脱ロシアを強いられた。この教訓も特定の国に経済を依存することへの危うさを浮き彫りにした。ショルツ氏は、中国以外のアジア諸国に目配りすることで、中国偏重を是正していく考えだ。日本や韓国、インドなどを列挙し「ほかの国との関係を深め、供給網や販売市場で特定の国に依存しないようにする」と述べた」

 

ドイツが、中国偏重政策の見直しに入る。エネルギー政策では、ロシアへ偏重したのでウクライナ侵攻に伴う「脱ロシア」で大きな痛手を被った。この教訓から、中国偏重の見直しを始める。日本、韓国、インドなどとの関係強化を図る意向を見せている。

 

(2)「米国のように中国との分断を志向しているわけではない。インタビューでは、過度な中国批判を避け「デカップリング(分断)はしないし、(経済面での)協力も続ける」と語った。それでも以前との温度差は明らかだ。「全ての卵を1つのカゴに入れてはいけない」。ドイツのことわざをショルツ氏は口にし、ドイツ企業は「多様化を進め、リスクを削減」するのが望ましいと明言した。こうした政府指針を盛り込んだ「新しい中国政策」を近く取りまとめ、閣議決定する見通し。今後は中国に代わってインドや東南アジアで官民一体となって通商拡大を図るとみられる」

 

ドイツは近々、「新しい中国政策」をまとめる。中国に代わって、インドや東南アジアで官民一体となって通商拡大を図る模様だ。ここでは、敢えて台湾の名前を挙げていないが、台湾TSMCによるドイツ進出に合わせて、アジア戦略を披露することになろう。

 

(3)「現時点で、ドイツ経済と中国の結びつきは強い。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は世界で販売した乗用車のうち約4割を中国が占める。簡単には代替市場はみつからない。それでもアジア政策が大きく軌道修正されるのは間違いない。特に日本には追い風だ。ショルツ氏は昨年、アジアにおける初の外遊先に中国でなく、あえて日本を選んだ。対日関係を「新しいステージ」に引き上げるためだったという」

 

日独政府は18日、両国の首相らが出席して、新しい定期協議の枠組み「政府間協議」の初会合を開く。ここで、新たな日独協力体制が明らかになろう。

 

(4)「盟主ドイツの方針転換で、欧州全体のアジア政策が「中国離れ」にじわじわとシフトしそうだ。経済的な利益は引き続き追求するものの、先端技術の流出などは厳しい制限をかける。「中国における新しい大型投資はしにくい空気になってきた」との声が欧州の経済界からも漏れる。一方、ショルツ氏はウクライナ侵攻を続けるロシアについて「帝国主義的な道を選んだ」と強い調子で非難した。ウクライナを徹底的に支援する考えを明らかにした。焦点となっている脱原発政策については完遂する考えを表明した」

 

ドイツが、「中国離れ」を始めれば、EU全体がその方向へ動き出していくであろう。中国は、ロシア支援の姿勢を見せていることが、どれだけ経済的にもマイナスになるかを深く考える段階に来ている。