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韓国左派メディアは、ここぞとばかり日韓首脳会談を非難している。首脳会談が、安全保障面で日米韓の三カ国の協力体制を取り上げると、ここぞとばかりデマを流しているのだ。自衛隊が、朝鮮半島へ上陸するというのである。日韓が同盟でない限り、自衛隊の朝鮮半島へ出撃などあり得ない話だ。そういう非現実的は空想話を焚きつけて、日韓協調気運に水を掛けようという狙いである。 

『ハンギョレ新聞』(3月17日付)は、「国益を名目に『韓日軍事協力』拡大の糸口、中国けん制戦略への編入の懸念」と題する記事を掲載した。 

尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は16日、日本の岸田文雄首相との韓日首脳会談で「北朝鮮による核ミサイルの発射と飛翔経路に関する情報を両国が共有して対応」することに役立つ国益レベルの決定として、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の「完全正常化」を宣言した。

 

(1)「韓日GSOMIAは、北朝鮮の核とミサイルへの対応だけでなく、中国をけん制する手段だったことから、尹錫悦政権が強調する韓米日安全保障協力が、米国のインド太平洋戦略の実行手段になるという懸念が強まっている。尹大統領は、今回の首脳会談の結果で得た具体的な国益の事例の一つとして、「さきほどの首脳会談で、GSOMIAの完全正常化を宣言した」と紹介した」 

GSOMIAは、安全保障面では「眼」や「耳」の役割を果たす。韓国が、自由陣営の一員である以上、日米韓の三カ国が軍事情報を共有することで何が不都合なのか。韓国は、中国陣営に属しているとでも考えない限り、韓国がGSOMIAの完全正常化を宣言するのは当然のことだ。

 

(2)「朴槿恵(パク・クネ)政権時の2016年11月に締結された韓日GSOMIAは、軍事情報の伝達・保管・破棄・複製・公開などに関する手続きを定めている。大統領室高官はこの日、「(GSOMIAは)形式的な側面で不明瞭な状態にあるが、終了通知をしたことを(韓国側から)撤回するということ」だとしたうえで、「きちんと安全保障で協力していこうということ」だと説明した」 

これまでもGSOMIAは機能している。ただ、文政権によって「宙ぶらりん」状態になっているものを固定したに過ぎない。 

(3)「尹錫悦政権は、「GSOMIA正常化」は韓国と日本がウィンウィンとなる国益だと主張している。北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、上昇段階の情報は韓国が、落下地点の情報は日本が探知するのが有利であるため、北朝鮮のミサイルの飛翔経路情報を相互交換すれば、軍事対応の実効性を高められるということだ。尹錫悦政権は韓日GSOMIAを韓米日の安全保障協力体制の象徴であり、韓米同盟と米日同盟の隙間を埋める軍事的な連結点と認識し、最終的には強制動員解決策の提示を介して韓日関係の改善を試み、これを復活させた」 

この記事を執筆した記者は、在韓米軍の主要後方基地が日本にあることを知らないようだ。韓国の安全保障には、在日米軍基地が大きな役割を果たしている。朝鮮有事になれば、日本も巻き込まれる危険性があるのだ。こういう厳しい事実を知らないで、「GSOMIA正常化」反対論は成り立たない。

 

(4)「これにより、韓日間の軍事協力の拡大の道が開けたという評価が出ている。両国は、「GSOMIA正常化」以降、北朝鮮のミサイル警報のリアルタイム共有、物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に乗りだす可能性があるためだ。米国は、韓国と日本のGSOMIAを北朝鮮のミサイル発射の監視だけでなく、中国とロシアの軍事動向の把握にも活用してきた」 

現在、中朝ロは一体化している。ロシアのウクライナ侵攻前の北朝鮮ミサイル実験は、国連安保理で非難が成立した。ウクライナ侵攻後は、中ロの反対により北朝鮮非難は不成立である。北朝鮮は、ミサイル実験をしても「お咎めなし」なのだ。この事態は、韓国にとっては極めて危険である。中朝ロの一体化が、GSOMIA正常化を急がせたと言えよう。こういう現実をハンギョレ新聞記者は見落としている。

 

(5)「ACSAは、韓国軍と日本の自衛隊が有事の際に弾薬や燃料、兵器の部品などをやりとりできるようにする内容だ。もし、日本の自衛隊の輸送機と艦艇が弾薬や燃料などを載せて、韓国の港や空港に入ってくる場合、日本の自衛隊の朝鮮半島進出を許容することになる。尹錫悦政権が韓米日の安全保障協力のスピードと幅を調節しなければ、日本の軍事大国化を促進し、米国の中国封鎖の戦略に引き込まれることになるという懸念は避けられないものとみられる」 

「ACSA」は、燃料などの相互提供である。演習の場合、不足すれば互いに融通しあう制度である。日本は、すでに米英濠とACSAを結んでおり、現在はフィリピンと交渉中である。この記事では、ACSAと「地位協定」(互いに軍が相手国を訪問し駐留し易くなる)を混同しているが全くの別物である。韓国は、旭日旗に憎悪感を抱いている関係で、地位協定などあり得ないこと。取り越し苦労する必要はないのだ。 

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉がある。怖い怖いと思っていると、枯れ尾花が幽霊に見えるという喩えだ。韓国は、日本が怖い怖いとと思っている。だから、二言目には「謝罪せよ」と言ってくるのであろう。もはや、そういう時代でない。米国が中に入っている以上、韓国は安心することだ。日本も、敢えて憎まれ役を買うことはない。