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米国は昨年6月、制裁によりロシアの半導体輸入は90%減少したと発表した。だが、米業界団体は今年1月、米国製半導体の「不正取得や偽造を防止するための広範な課題」について警鐘を鳴らした。ロシアへ半導体が流れているという指摘である。一方、貿易を抑制しようとする米国の取り組みにいら立つロシアは、技術水準が低めの調達しやすい民生用部品の取得に軸足を移していると、「不正入手」を否定している。

 

『ブルームバーグ』(3月20日付)は、「戦争の行方左右、ロシアに半導体流出かー米ハイテク規制強化でも」と題する記事を掲載した。

 

(1)「英王立防衛安全保障研究所(RUSI)が分析し、ブルームバーグが確認した通関データも、アナログ・デバイセズやテキサス・インスツルメンツ(TI)、マイクロチップ・テクノロジーなど大企業が生産した半導体が侵攻開始から数カ月にわたって第三国の企業を通じてロシアの手に渡っていたことを示している。3社は法を順守しており、ロシアには販売せず、同国での自社製品の販売を許可していないとしている。ワシントンの法律事務所ワイリー・レインのパートナー兼国家安全保障関連訴訟手続き責任者で、米商務省の高官を務めた経験を持つナザク・ニカクタル氏は、「わが国の機密技術の多くが悪者の手に渡っていると想定すべきだ。第三者の仲介者という問題はかなり容易で重要な抜け道だ」との見方を示した」

 

米国の大手半導体製品が、生産3ヶ月後にはロシアの手に入っているという。第三者の仲介者が、ロシアへ半導体を持込んでいると見られる。

 

(2)「半導体は戦争の行方にとってますます重要になりつつある。ロシアは半導体を入手するための取り組みを強化しており、ここからロシアの在庫が不十分で、政府の対策では供給不足が解消されそうにないことが読み取れると、ロンドンに拠点を置く国際戦略研究所(IISS)のマリア・シャギナ氏は指摘した。同氏は制裁のエキスパートだ。ウクライナ政府は、クアルコムやブロードコムなどのハイテク大手に対し、ロシアの衛星測位システム「GLONASS(グロナス)」を支えているとされる半導体の製造を停止するよう公然と要求している」

 

ウクライナ政府は、米国大手半導体に対して、製造そのものの中止を要求するほどだ。こういう根本対策を取らない限り、ロシアへ渡るのを阻止できないのであろう。

 

(3)「アナログ・デバイセズは発表資料で、制裁発動後のロシアとウクライナのロシア占領地域、ベラルーシへの同社製品出荷は、「不当な転売・転用の結果」であり、同社の方針に直接的に反するものだと説明。グレーな市場活動の監視を強化していると明らかにした。マイクロチップも制裁対象地域への販売は行っておらず、顧客の選別に努めていると資料で発表。TIは同社の「製品が意図しない用途に使用されることを支持も容認もしない」と資料で表明し、ロシアやベラルーシには販売していないと付け加えた」

 

制裁発動後に、ロシアとベラルーシなどへ禁輸対象の半導体が渡っているのは、「不当な転売・転用の結果」という。こうなると、転売ルートの探索探しになる。

 

(4)「元米財務省高官で対ロシア制裁策に携わり、現在は法律事務所ギブソン・ダンに勤めるアダム・スミス氏によれば、米国の圧力が強まる中、ロシアは常に新たな抜け穴を探している。RUSIの分析によると、最近の通関データで示されるロシアが入手した米国製半導体のほぼ全てが、中国企業によって購入され、最終的にロシアの無人機「オルラン10」の製造元に届いている。事情に詳しい複数の関係者によれば、バイデン政権当局者は中国やアラブ首長国連邦(UAE)などの他国を通じたロシアの半導体調達について懸念を強めている」

 

RUSIの分析によると、ロシアが入手した米国製半導体のほぼ全てが、中国企業によって購入され、最終的にロシアの無人機「オルラン10」の製造元に届いているという。

 

(5)「EUや米国とは異なり、中国とUAEは対ロシア制裁を実施していない。あるUAE当局者はブルームバーグへの資料で、「UAEは米国を含む外国のパートナーと結んだ合意に加え、国際法と国連が定める制裁を順守し、厳格に執行している」とし、不正な資金の流れを監視するシステムを導入しており、機密技術を含む製品を監視する高度な税関システムを備えていると説明した」

 

中国とUAEは、対ロシア制裁を実施していない。これが、米国大手半導体製品のロシア入手ルートになっている可能性がある。

 

(6)「中国外務省は、半導体の問題を巡る詳細を把握していないとコメント。中国のロシアとの関係について、米国は虚偽の情報を度々流してきたとも主張した。米国とEUの当局者は、ロシアがイランやトルコ、UAE、カザフスタンなどの第三国を経由して外国の半導体や技術を引き続き調達していると認識している」

 

米国とEUは、ロシアがイラン、トルコ、UAE、カザフスタンなどの第三国を経由し、外国の半導体や技術を引き続き調達していると認識している。となると、米国とEUは、次なる対策を打つのか注目される。