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韓国の行政は、日本以上に無駄を重ねている模様だ。出生率増進を図って始められた予算措置が、なんと6割が無縁の部門に分捕られていることが分かった。驚く話である。子育て予算が、縦割り官僚制の中で分捕られ流用されているのだ。これが、韓国行政の実態である。

 

韓国の合計特殊出生率は昨年、0.78へ低下した。人口横ばいを維持するには2.08が必要であるから、韓国はそのほぼ3分の1の水準にまで落込んでいる計算だ。文政権は5年間、全く出生率低下に関心を示さず、反日と南北朝鮮融和に取り組んでいた。

 

『中央日報』(3月22日付)は、「完全に新しく考え直さなければならない少子化政策の設計」と題するコラムを掲載した。筆者は、ヨム・ジェホ高麗(コリョ)大学名誉教授・前総長である。

 

(1)「世界最下位の合計特殊出生率(以下、出生率)を示す韓国の未来が深刻だ。韓国に劣らず儒教的伝統が強く、急速な経済成長を成し遂げた他のアジア諸国も似た状況だ。韓国の2022年出生数は24万9000人で出生率は0.78となり、経済協力開発機構(OECD)加盟国家で最下位を記録した」

 

下線部は重要な指摘である。儒教社会では、伝統的に「男尊女卑」思想が強く、子育ては女性の仕事としており、男性が分担しない傾向が強い。これが、最大の低出生率の原因である。欧米では男女平等意識が根付いており、「家族を大事にする」のは当たり前のことだ。欧米の出生率が、儒教社会よりも高いのは当然の結果である。話は飛ぶが、中国が米国に敵わない大きな理由の一つはここにある。

 

(2)「韓国政府は少子化対策の予算として昨年46兆ウォン(約4兆7000億円)を含めて2006年から合計271兆ウォンを投じた。昨年の予算を出生数で割ると、1人当たり1億8000万ウォン(約1800万円)を超える。このように多くの予算を投入したにもかかわらず、出生率が底なしの下落にストップがかからないのは深刻な問題だ。国策事業が指定されれば各部署は先を争って自分たちの利益に合う事業予算を割り込ませようとする。本来の趣旨とはかけ離れた予算執行が起きている

 

官僚社会は、予算分捕り能力の高さで当該官僚の能力が決るという歪んだ性格を持っている。「子育て予算」といえば、担当官僚は気の弱そうな人物が担当していそうな雰囲気だ。ただ、予算では事前に支出項目は詳細に決められているはず。他部署の横槍を許す余地はないであろう。だが、現実に分捕られている以上、予算制度そのものに「裁量」を許す脆弱部分があるのだろう。その穴を、先ず塞ぐことである。

 

(3)「年間数十兆ウォンに達する少子化対策事業予算もこのように全く関係のないところに使われた。中小ベンチャー企業部の高成長企業輸出力量強化事業、国防部の軍人力構造改編事業、労働雇用部の青年就職進路支援事業など少子化と直接関連のない各種事業に使われた。このような予算割当が少子化対策予算の60%に達するという

 

子育て予算と無関係な部署に、全予算の60%が横取りされているという。これは、異常である。会計検査院は、何をチェックしているのか。

 

(4)「若い夫婦に出産を敬遠する理由を聞いてみると、私教育費と保育の問題が最も深刻だという。2022年約26兆ウォンに達する私教育費は青年夫婦の家計にとって非常に大きな負担となる。2021年OECD教育統計によると、教育費全体で私教育費が占める比率はOECDの平均が16%なのに韓国はその倍以上の36%に達する。子どもの世話をするシッターを頼むとなると月額300万ウォン(約30万円)近くかかるという。こうなると共稼ぎ夫婦が子どもを持ちたいとは思わなくなる」

 

ベビーシッターに月額30万円とは、常識外れの高額支払である。せめて数万円程度であろう。韓国社会はどうなっているのか。聞けば聞くほど、驚くことが多い。だいたい韓国の学校は実務を教えないで、塾に任せるという悪弊がある。大学の工学部は机上の教育だけで、実験などは塾に任せるという卒倒するような話ばかりだ。

(5)「今後は少子化対策のための政策設計は完全に新しく考え直すべきだ。公教育の正常化を通した私教育費の節減と24時間保育が可能な育児システムが完備されなければならない。エデュテックの発展で幅広いデジタルメディアを活用した学校外の教育が私教育市場を代替するようにすべきだ。「カーンアカデミー」(グローバル非営利教育サービス)のような無料課外教習が活性化し、提供されるべきで、このためにボランティアがデジタル化された課外教習プログラムをサポートしなければならない」

 

韓国得意のITを利用した無料課外教習を行なうことだ。国を挙げての出生率対策が必要である。