あじさいのたまご
   

韓国半導体は、韓国経済を支える大黒柱である。その大黒柱が、米国のCHIPS法補助金による規制で揺れている。韓国半導体は中国で2工場を経営しており、CHIPS法のガイドラインで規制を受けるからだ。米中対立が、日に日に進んでいることから見れば、韓国半導体の中国撤退が視野にちらつき始めている。

 

『東亞日報』(3月23日付)は、「米半導体ガードレールの『最悪』は避けられたが、『追加規制』の山が待ち構える」と題する社説を掲載した。

 

(1)「米国政府は、自国内に半導体工場を建設する企業に対し、補助金を支給する条件として掲げた「ガードレール」(安全装置)の細部規定を公開した。米国の補助金を受ければ、今後10年間、中国での半導体工場を5%までしか増設できないよう制限したのが柱となっている。全面禁止ではないため、韓国の半導体企業が中国工場の稼動を中断したり撤退したりしなければならない最悪の状況は避けられたことになる。しかし、米国が来月、新しい半導体輸出規制を出すことにするなど、対中牽制の度合いを強めており、危機は続いている」

 

米国政府の半導体補助金を受けた企業は10年間、中国の半導体工場で5%までしか増設できない規制を受ける。量産化が、半導体産業の宿命である以上、この規制は厳しい制約条項だ。事実上の増設禁止措置にも映る。

 

(2)「米商務省が21日発表したガードレールの細部規定によると、半導体支援法(チップス法)によって補助金を受ける企業は、今後10年間、中国で先端半導体の生産能力は5%までしか拡大できない。汎用半導体は10%まで許容される。中国に半導体工場を置く三星(サムスン)電子とSKハイニックスは、5%上限の対象に当たる。また、商務省は、生産能力について半導体ウェハーを基準にし、技術には制限を設けなかった。部分設備拡張や技術アップグレードが可能になり、韓国国内企業は大きな懸念を減らしたという評価が出ている」

 

生産能力の規制は、半導体ウェハーを基準にする。技術には制約がないので高付加価値をつけられる可能性はある。だが、10年間で5%増までしか認めないのでは、半導体ビジネスにとって致命的制約であろう。

 

(3)「10年間、韓国の半導体企業の中国への投資は自由ではないという点は変わらない。5%上限を満たすためには、中国の半導体工場を現行通り維持するには無理がないかもしれないが、中長期的に生産前進基地にすることは難しいものと見られる。三星電子は、中国西安工場でNAND型フラッシュの40%を、SKハイニックスは無錫工場でDラムの半分ほどを生産しているが、中国の生産能力が制限されればコスト競争力も弱まるしかない」

 

下線部のように、サムスンとSKハイニックスは中国工場への依存度が高い。いずれも40~50%という比率を占めている。これが、10年間で5%の増設しか認められないのは、企業業績の面からも痛手だ。

 

(4)「何よりも、今回の規定に一息ついたとしても、超過利益の共有や軍事用半導体の優先供給、生産施設の公開のような厳しい補助金支給条件が依然として残っている。技術の露出や経営介入の恐れがある毒素条項だ。さらに、米政府は、昨年10月に発表した半導体装置の対中輸出統制を強化する案も推進している。国内企業は1年猶予を受けたが、今後の措置によって不確実性がさらに大きくなる見通しだ」

 

米中対立は、中国が台湾侵攻意思を捨てない以上、今後ますます悪化すると見るべきだろう。となれば、中国での半導体生産に大きなブレーキがかかる。

 

(5)「韓国企業は、すでに中国工場に莫大な資金を投資し、半導体の対中輸出が40%を占めるだけに、政府は米国との追加交渉を通じて最大限実益を引き出すことが重要だ。官民外交チャンネルを総動員して、半導体装置の輸出規制の再猶予を取り付けなければならない。激化する半導体覇権戦争で主導権を失わない最善の方法は、韓国だけの半導体生産基地を構築することだ。三星電子が300兆ウォンを投入し、京畿道龍仁市(キョンギド・ヨンインシ)に建設される先端システム半導体クラスターが半導体覇権を握る足場になるよう、国家的支援を惜しんではならない」

 

サムスンは、韓国国内で約30兆円を投資して、半導体生産基地の建設計画を発表した。これは、将来の中国撤退に備えた対応策と見られる。韓国経済にとっては、大きな痛手になりそうだ。