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中国は、3年間のゼロコロナ政策で閉じ籠もり、外交面でも動きが鈍かった。だが、ゼロコロナ打ち切りと共に、「大国外交」へ乗り出している。イラン・サウジアラビアの仲介外交に続き、ロシアとウクライナの和平仲介に乗り出そうという意欲を見せる。だが、先の習氏によるロシア訪問では、ウクライナ問題の難しさを浮き彫りにした。中ロ首脳会談で、得るところはなかったのだ。 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月23日付)は、「世界の大国のように動き始めた中国」と題する記事を掲載した。 

中国は現在、自らを世界の大国と見なしており、そのような振る舞いを見せ始めている。中国は長年、自国から遠く離れた紛争への介入には消極的だったが、自己主張を強める新たな姿勢を示しつつある。習近平国家主席が3期目入りし、中国が同様の考えを持つ国々を味方につけ、国際問題に対してより大きな発言力を持てるよう努めている。

 

(1)「新型コロナウイルスの封じ込めを狙った「ゼロコロナ」政策による3年にわたる孤立状態から抜け出しつつある中国にとって、西側諸国は以前よりはるかに非友好的になっている。世界を自国の利益にもっと資するようなものに変え始めるだけの軍事力と経済力があると感じていることを中国は示唆している。中国政府は今月、サウジアラビアとイランの緊張緩和を仲介し、世界を驚かせた」 

中国は、米国と並ぶ「大国」であることを仲裁外交によって見せつけようとしている。中国の外交手腕は未知数であり、現状は国内向けのゼスチャーと見られる。 

(2)「中国がこれらの紛争にこれほど執拗に介入することは、世界における自国の位置づけと役割についてのビジョンが新たな段階に入っていることを示している。また、中国とその友好国はもはや米国主導の国際秩序に従う義務はなく、民主国家と専制国家に分断した世界を形成しようとしている米国に中国が挑戦状を突きつけているというメッセージになっている」

 

明確な中国支持国は、ロシア、イラン、北朝鮮であろう。他に、一帯一路事業で中国から経済支援を受けている国もある。中国としては、米国へ対抗して「外交大国」という旗印が欲しくなってきたのであろう。先ずは、仲介外交がうってつけに見えるのだ。 

(3)「習氏は今月、グローバル文明イニシアチブを公表した際の演説で、「近代化を進めるにあたり、中国は植民地化や略奪といった古い道をたどることも、強くなった途端に覇権を主張した国々がたどった不正な道をたどることもない」と言明。国名を特定せずに「自らの価値観やモデルを押しつけるのを控える」よう警鐘を鳴らした」 

習氏は、国名を上げていないが、米国へ対抗をする姿勢を明確にしてきた。これも、国内向けという印象が強い。欧州、アジアでは、中国批判の国々が増えている手前もあって、強気姿勢を見せているのだ。

 

(4)「習氏の努力によって、中国が世界の舞台で米国と同様の役割を得られるようになるかどうかはまだ分からない。国外の紛争でもつれると、中国の活力が損なわれる恐れがある。和平合意が崩壊した場合は、中国は考えが甘く、無力だとの印象を与えることになってしまい、味方に引き入れようとしている国々の間で信頼感を損ねることにもなるため、中国の目標達成の障害となりかねない」 

中国は現在、仲介外交という「口先外交」に止まっている。だが、国外での紛争に巻き込まれると、中国の活力を失うリスクも高まる。中国の経済力が問われる事態になるのだ。中国経済に現在、「空洞化」前兆現象が出てきたことへ注意が必要である。

 

『中央日報』(3月23日付)は、「2050年中国はナンバー2 米国は今より強くなっている」と題するハーミッシュ・マクレー氏へのインタビューを掲載した。 

マクレ-氏は、金融ジャーナリストで、1994年に出版された『2020年』で著名になった。新著に『2050 覇権の未来』がある。 

(2050年にも)米国は技術的に先導的国家であり、世界の至るところにいる野心家たちがこぞって向かおうとする国でいるだろう。この本で、中国が経済規模の面で米国を追い抜くことができない、否、追い抜いてもそれほど経たずして後退する理由を明らかにした。中国は2030年前後しばらくナンバー1になった後、2050年にはナンバー2になるという展望だ。

(5)「中国が、世界でトップ経済国として定着できない理由は次の通りだ。

1つは、中国が中進国経済の罠にかかって、先進経済として発展できない。2つは、中国の人口減少が予測よりも前倒しになる可能性がある点だ。反面、米国は今より(2050年に)ももう少し強大になる可能性がある」

中国経済の停滞は、すでにIMF(国際通貨基金)からも警告が出ている。生産年齢人口比率の低下が、中国経済の活力を奪うという構図だ。これは、習近平氏の権力を以てしても抗うことは不可能、受容するほかない。

 

(6)「中国の人口は、2030年代になれば毎年目に見えて減少していくだろう。60代以上の人口が急増し、全体人口に占める割合が大きくなるため、仕事ができる人々の数が急速に減少する。労働力が減少することだ。これは我々が日本でまさに目にしていたことだ。中国でも似たようなことが起こるのではないかと思う。これは、中国が中進国の罠にかかってしまう要因の一つになるだろうひとりの長期執権(習近平の3連任)のために抑圧が強化されている。柔軟性が不足した社会は長期的に発展するのが難しい

中国が、中進国の罠に嵌って、永遠の発展途上国に止まる事態では、「大国外交」は不可能になる。「中進国・中国」の仲介外交を受入れる国もあるまい。習氏による終身国家主席は、中国の経済発展を阻害する有力要因になる。皮肉な事態が、待ち構えているのだ。