caedf955
   

中国は、相手国が自国利益に反すると判断した場合、経済的威圧行為を発動して、相手国を屈服させようと強引な手を打ってくる。当然、WTO(世界貿易機関)ルールに違反した行為だ。中国は、それにお構いなく強行するのだ。

 

中国の経済的威圧行為は、どのように防ぐか、だ。かつて、日本も被害にあった。中国が、レアアースの輸出禁止措置に出たのだ。日本は、レアアースの在庫が多く、かつ技術革新でレアアースの使用を減らすことに成功。逆に音を上げたのが中国で漫画的な結果に終わった。これは、日本だから成功した面もある。他国では、中国の一方的な威圧行為に泣き寝入りさせられる。これを防ぐには、西側パートナー国が協力するほかない。

 

『日本経済新聞 電子版』(3月27日付け)は、「中国の経済的威圧を阻止 G7の課題 ―駐日米大使寄稿」と題する記事を掲載した。

 

米国のラーム・エマニュエル駐日大使が日本経済新聞に寄稿した。中国の経済的な威圧行為について、日本や欧州などの友好国と団結して対抗すべきだと訴えた。

 

国際貿易制度は、規則順守というたった一つの単純な約束の上に成り立っている。2001年に巨大な市場と人口を抱える中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した際、国際社会はこれで中国の人々が貧困から解放され、世界的な経済の統一が実現すると信じていた。

 

(1)「(中国は)市場改革を受け入れるどころかそれを無視し、自国の経済的利益に資するWTOの規定のみに従った。WTOで禁止されているにもかかわらず、補助金により自国の企業を不当に優位に立たせ、外国企業の市場参入を阻む中国の慣習はひどいものだ。しかしさらにひどいのは、中国の最も悪質で不変の経済破壊手段である経済的威圧のまん延だ」

 

WTOには、規則違反に対する処罰規定が存在しない。中国は、WTOルールの裏表を知り抜いており、ルール違反を繰り返してきた。「やり得」になっているのだ。それ故、西側諸国は自衛するほかない。

 

(2)「中国は、国際貿易を武器とし、まん延する知的財産窃盗、企業秘密を盗み出すスパイ、企業のシステムに対するサイバー攻撃など、多くの不法な手段を駆使している。さらには市場レバレッジを使って貿易ルールをゆがめ、他国に政治的姿勢を強制している。経済的威圧は、一種の政治的な戦いである。中国は10年に尖閣問題をめぐりレアアースの対日輸出を停止し、日本の産業と消費者に大きな打撃を与えた。12年に南シナ海でフィリピンと対立すると、中国はフィリピンから輸入されるフルーツの検疫を強化し、中国の漁師を「保護」するため船舶を送りフィリピン船に対して妨害行為を行った」

 

日本は、技術を持っているので中国へ対抗できた。そうでない国は、泣き寝入りするほかない。理不尽な話である。まさに、「強者の論理」である。

 

(3)「16年には、対北朝鮮防衛策として韓国が米国の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備すると、中国は国内で韓国に対するボイコット運動を主導し、韓国の自国防衛を批判した。オーストラリアとリトアニアも同様の被害を受けた。新型コロナウイルスの発生源について豪州が独立した調査を求めたことに反発した中国は、豪州産の石炭、大麦、牛肉、銅、小麦の輸入規制を行った。また台湾の代表機関開設を機に、リトアニアとの貿易を停止した」

 

韓国は、中国の威圧行為に対して抵抗するのでなく、さらに融和姿勢に出て事態を悪化させた。中国の思う壺へはまり込んだ。豪州とリトアニアは、臆することなく中国へ対抗している。豪州は、AUKUS(米英豪)という軍事同盟を結成した。リトアニアは、相互の大使を引き上げて「全面対抗」し、台湾と密接な関係を構築している。

 

(4)「国際社会が経済的威圧に対して結束しなければ、中国は引き続き国の規模、発展レベル、物理的距離を問わず、他国とその経済を食い物にするだろう。現在の対応では不十分だ。統一された計画もない。誰かが先頭に立ってこの問題に対応しなければならない。中国の経済的威圧を阻止するため、またその阻止が失敗した場合に国際社会は何ができるのだろうか。第一に、主要7カ国(G7)やインド太平洋経済枠組み(IPEF)のような正式なもの、またはパートナー国との非公式な取り決めなどのグループ化を通じて、各国は中国の経済的威圧から自国を守ることができる。日本は、経済的威圧を今年のG7サミットの最重要課題にしている」

 

G7やIPEFの場で、中国の経済的威圧行為に対抗するほかない。

 

(5)「第二に、法治国家は供給網の回復力を強化するための独自の経済協力手段を備えている。我々は、中国の威圧的貿易の犠牲者に、輸出信用枠や迅速な許認可の供与など、実質的な救済をもたらさなくてはならない。例えば、欧州連合(EU)は抑止と報復政策を認める反威圧手段の採用を検討している。中国を阻止し、被害者を保護することができるのは、法の支配を支持し、経済的な関与は相互利益をもたらすべきだという考えを共有する国々による集団的な決意だけだ」

 

中国から経済的威圧行為を受けた場合、パートナー国で相互支援して難局を切り抜けることだ。

 

(6)「世界経済を主導する米国、日本、韓国、オーストラリア、英国、EUは、中国を阻止し、自国を守るため団結して行動しなくてはならない。どの国も傍観者ではいられない。統一された集団的行動が、中国による孤立と経済的威圧に立ち向かうための最大の攻撃であり防御である

 

下線部分が、中国の不法行為へ対抗する手段であることは間違いない。中国は、こういう形で包囲網を作らせている。惜しいことをしているものだ。