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中国外交が方向転換した。これまでの「戦狼外交」が、嘘のように変わって「仲裁外交」へ衣替えしようとしている。この裏に何があるのか。米国の中国包囲網を突破するには、「戦狼外交」では行き詰まることを認識したのであろう。そこで、得意の「ニーハオ」戦術に切り替え、「平和の使徒」を演じて、中国包囲網の緩みを待つ。そういう戦略転換も考えられるのだ。 

『ハンギョレ新聞』(3月28日付)は、「『平和仲裁者』に生まれ変わろうとする中国、米国の選択は?」と題する寄稿を掲載した。筆者は、文正仁(ムン・ジョンイン)延世大学名誉教授である。文政権で、大統領特別補佐官を務めた。反日米的言動で物議を醸した経緯がある。 

私は2月21日、中国公共外交協会と北京大学が共同主催した「藍庁」(ブルールーム)フォーラムにオンラインで参加した。藍庁とは、中国外交部記者室の会議場を指す言葉だ。秦剛外相は、昨年4月に習近平国家主席が提案した「グローバル安全保障イニシアチブ」(GSI)の概念文書を発表し、6つの原則と20の具体的な協力方向を示した。秦氏は、GSI構想が世界の安全保障問題に関する中国の代案であり、世界の紛争地域の問題を解決するための青写真になると強調した。

 

(1)「筆者は、藍庁フォーラムで二つの問題点を提起した。一つは普遍的なルールと国際法に基づく構想を「中国特有」のものとして示すのは適切でないという点。もう一つは、実行可能性の限界だった。過去に習近平主席が出した「アジア安全保障構想」など様々な提案のうちきちんと実行されたものがなかったため、今回の提案は実行可能なのかという問いだった。中国側の関係者は前者に関しては答えなかったが、後者についてはまもなく可視的な措置があるから見守ってほしいと述べた」 

中国は、美辞麗句を並べ立てるが、南シナ海の不法占拠の現実を覆い隠すことはできない。中国が他国の島嶼を奪っておきながら、「アジア安全保障構想」を説いても説得力はないのだ。 

(2)「3月10日、その「可視的な措置」が姿を現した。中国政府の仲裁でイランとサウジアラビアの国家安全保障担当高官が北京で会合し、「両国が外交関係を修復し、2カ月以内に相手国に大使館を再び開くことで合意した」という共同声明を発表した。2016年にサウジ政府がシーア派聖職者の死刑を執行したことを機に両国の国交が断絶して以来、7年ぶりのことだ。イスラムスンニ派の宗主国であるサウジとシーア派の宗主国であるイランは、地域覇権をめぐって敵対的な競争を繰り広げており、イエメンやシリアなどで代理戦争を行ってきた。今回の妥結は中東和平に大きな好材料となるだろう。1978年のキャンプ・デービッド協定以来、中東和平の仲裁者であることを自負してきた米国を困惑させた一手だった」 

イランとサウジアラビアは、両国が和平を望んでいたところの最終部分で中国が乗り出したもの。その意味では、「一番おいしい」ところを頂いた感じだ。米国は、サウジアラビアから事前情報を得ていた。米軍が、サウジアラビアには駐留しているのだ。

 

(3)「北京のこのような動きは中東にとどまらない。ウクライナ戦争から1年目の2月24日、中国は事態の政治的解決に向けた12の要求が盛り込まれた和平案を公開した。各国の主権の尊重、即時休戦と終戦要求および平和交渉の開始、人道主義的危機解決、一方的な制裁の中断、戦後再建などを含むこの和平案は、ウクライナ事態でも平和の仲裁者としてのイメージ確保を狙う中国の野心をうかがわせる。このため習近平主席は3月20日にロシアを訪問し、プーチン大統領と首脳会談を開き、ウクライナ側とも意思疎通を続けていると明らかにした」 

中国は、ウクライナ和平提案をしたものの、初めから実効性はゼロ。ロシア寄りが明白であったからだ。西側諸国は、初めから全く相手にしていなかった。中国は、中ロ密着をカムフラージュするために、あえて「煙幕」用に使ったともいえる。現実に、ウクライナ側は、中国の宣伝したウクライナとの首脳会談について、「何も知らない」と答えているのだ。

 

(4)「領土の返還、戦犯の処理、戦後復旧と戦争賠償問題に関する十分な議論なしには、休戦の実現は難しい。実際、今回の中ロ首脳会談も平和仲裁よりは両国の戦略的密着に帰結した。しかし、国連が無気力な状態に陥り、米国と欧州連合(EU)が仲裁の役割を果たせていない中、中国が素早く仲裁者を買って出た。休戦と終戦の突破口は見出せなかったものの、中国GSI外交の新たな姿を示しているといえる」 

和平提案は、いったん戦火が拡大すると簡単にその糸口はつかめないものである。中国は、そういう「タイミング」を見る眼もなかったのであろう。ただ、アドバルーンを上げて、「平和国家」というイメージがほしかったに違いない。

 

(5)「中国外交はよく「戦狼外交」と呼ばれている。荒々しく攻撃的な外交の形態からついた異名だ。しかし、バイデン政権がインド太平洋戦略と価値観同盟を掲げて陣営構築を試みている最近の隙を狙って、北京はむしろ世界平和と安定のための仲裁外交を積極的に打ち出し始めた。世界は、米国の同盟と友好国だけで構成されているのではなく、紛争と対立は主に米国の影響圏外で発生している。中国のGSI外交の動きが、米国の外交的指導力に対する大きな挑戦になりうるのもそのためだ。米国もこれを他山の石にして、新たな外交的発想を模索しなければならない」 

中国が、戦狼外交から和平外交へ転じたように見せているが、それは台湾侵攻を放棄するときに初めて実証できるであろう。現在は、米国の対中包囲をいかに緩めさせるか、という戦術に利用しているにすぎまい。すべては、台湾侵攻がその真贋をテストするはずだ。結論は、それまでお預けだ。