ロシアの22年GDP成長率は、マイナス2.1%にとどまった。ウクライナ侵攻直後は、二桁のマイナス成長率予測であったから、予想外の「健闘」と言えた。だが、今年に入って状況はがらりと変わっている。
今年1~2月は、政府歳入の半分近くを占める石油・ガス収入が、前年比46%落ち込む一方、歳出は50%余り急増したのだ。ウクライナでの戦費が予算の重石となっており、ロシアが現時点で財政収支を均衡させるには、石油価格がバレル当たり100ドルを超える必要があるとアナリストは推定す。現状では、50ドルを割り込んだ状況だ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月29日付)は、崩壊し始めたロシア経済 来年は資金枯渇か」と題する記事を掲載した。
ロシアによるウクライナ侵攻開始当初は、石油・ガス価格が跳ね上がり、ロシアに思わぬ巨額の利益をもたらした。だが、こうした局面は終わった。戦争が2年目に突入する中、西側の制裁による打撃が広がり、ロシア政府の財政は厳しさを増している。経済は低成長軌道へとシフトし、長期的に脱却できない可能性が高まっている。
(1)「短期的にロシアの戦費調達を脅かすほど、経済への打撃が深刻であることを示す兆候はまだ見られない。だが、財政収支は赤字に転落しており、ウラジーミル・プーチン大統領が市民を生活の困窮から守る一助となってきた補助金や社会保障向けの支出と、膨らむ軍事支出との間でどう折り合いをつけるか、ジレンマが深まっている状況を示している。ロシアの富豪オレグ・デリパスカ氏は今月の経済会議で、ロシアの財政資金が枯渇しつつあると警鐘を鳴らした。「来年には資金が尽きるだろう。われわれは外国人投資家を必要としている」と指摘する」
ロシア経済が、ウクライナ侵攻による経済制裁効果と軍事費増額で、確実に破局に向かっている。来年には、資金が枯渇するという暗い予測も出てきた。
(2)「見通し悪化の大きな原因は、エネルギーを武器に使えば、西側諸国によるウクライナ支援を抑制できるとのプーチン氏の読みが外れたことだ。欧州諸国の政府はウクライナへの支援を縮小するどころか、ロシア産エネルギーへの依存脱却に向けて代替調達先の確保に迅速に動いた。ロシア産ガスの欧州への供給がほぼ止まると、価格は当初、急騰したものの、その後急落した。ロシアは現在、石油生産を6月まで従来レベルから5%減らす意向を示している。同国の石油価格は国際指標を下回っている」
プーチン氏の読みは、ことごとく間違った。エネルギーを武器に使えば、欧州は音を上げてウクライナを長期支援できまいと見てきたのだ。現実は逆になった。欧州が、ロシア産エネルギー購入を止め、ロシア産原油上限制60ドルの枠をはめてしまったのだ。これで、ロシア産原油は欧州という需要先を失い、価格が暴落している。
(3)「ロシアのエネルギー収入は今年1~2月に前年比でおよそ半減し、財政赤字も膨らんだ。1~2月の財政赤字は340億ドル(約4兆4600億円)と、国内総生産(GDP)比1.5%余りに達した。そのため、ロシアは危機時の財政緩衝材である政府系ファンド(SWF)から赤字の穴埋めを余儀なくされている。ロシア政府は依然として国内で借り入れすることが可能であるほか、侵攻前から280億ドル減ったとはいえ、SWFはなお1470億ドル相当を保有する。行き場を失った石油についても、中国やインドが新たな受け皿になった」
ロシア財政の緩衝材役を果たすSWFは、1470億ドル相当を保有するに過ぎない。今後、これは減る一方である。軍事費と国民生活をどのようにバランスさせるかだ。
(4)「国際通貨基金(IMF)はロシアの潜在成長率について、ウクライナからクリミア半島を強制併合した2014年より前の段階では約3.5%だと推定していた。だが、生産性の低下や技術的な後退、世界からの孤立といった要因が重なり、今では1%程度まで下がったと指摘するエコノミストもいる。前出のプロコペンコ氏は「ロシアのような経済にとって、1%はないも同然で、維持する水準にすら届かない」と話す」
ロシアの潜在成長率は、すでに1%程度にまで下がっている。この程度の成長率では、ロシア国民の生活を守れないという。これは、日本で経験済みである。
(5)「今年1~2月は政府歳入の半分近くを占める石油・ガス収入が前年比46%落ち込む一方、歳出は50%余り急増した。ウクライナでの戦費が予算の重石となっており、ロシアが現時点で財政収支を均衡させるには、石油価格がバレル当たり100ドルを超える必要があるとアナリストは推定している。ロシア財務省によると、同国の代表的な油種であるウラル原油の平均価格は2月、バレル当たり49.56ドルとなった。これは同月に80ドル程度で取引されていた国際指標の北海ブレントに対して大幅なディスカウント水準だ。ウィーン国際経済研究所のエコノミスト、バシリ・アストロフ氏は、「ロシアは石油の販売先が限られるため、今では世界の市場で価格交渉力が弱まっている」と指摘する」
ロシア財政を維持するには、原油価格が1バレル100ドルでなければ無理という。現状は、その半分にすぎない。財政赤字は膨らんで当然であろう。
(6)「IMFは2027年までには、ロシアの成長率がウクライナ侵攻前の予想から7%程度切り下がると想定している。「人的資本の喪失、国際金融市場からの孤立、先端技術の入手困難などの要因がロシア経済を損なう見通しだ」としている。 ウィーン国際経済研究所のエコノミスト、バシリ・アストロフ氏は、「われわれは1年や2年の危機を言っているのではない」と述べる。「ロシア経済は異なる軌道を歩むことになるだろう」と指摘する」
ロシア経済は、ウクライナ侵攻の長期化で異次元へ進むという危機感が表明されている。


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