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中国官僚の汚職は桁違いの規模である。歴史的に、賄賂は名刺代わりに認められてきた社会である。贈賄のない官僚は、無能のレッテルが貼られてきた。問題は、「常識の範囲内」での賄賂は認めるが、超高額になると「お咎め」を受けるという点にある。この線引きが、外部の者にはわからないが、習氏はその曖昧な点を狙って「政敵弾圧」している面もある。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日付)は、「中国、汚職摘発官を海外派遣 取り締まり強化へ」と題する記事を掲載した。

 

中国政府は国外逃亡者を追跡し、盗まれた資産を回収するため、汚職摘発担当官を海外に派遣している。習近平国家主席による汚職撲滅キャンペーンを強化するため、摘発範囲を海外に拡大することが狙い。

 

(1)「中国共産党の中央規律検査委員会(CCDI)をはじめとする汚職摘発を担う政府機関は、一部の中国大使館に職員を常駐させ始めている。法執行問題などを巡り外国当局との調整を図ることが任務だという。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。関係者の1人によると、汚職摘発チームは20カ国・地域(G20)の参加国など、腐敗官僚が多額の不正資金を隠し持っている可能性が高い国を中心に活動する。CCDIは今年、腐敗撲滅のため国境を越えた取り組みを強化することを公約に掲げた。特に習氏が唱える巨大経済圏構想「一帯一路」の協力国を対象に取り締まりを強める構えで、これにはG20参加国も含まれる」

 

中国は、海外の大使館に汚職摘発の要員を配置しているという。中国の汚職規模がいかに大きいかを証明している。近代官僚制が根付かず、清朝時代の家産官僚制の遺風が残っているのだ。中国が、近代国家としての「革命」ができなかった理由はここにある。未だに、家産官僚制のままである。

 

(2)「習氏は2012年に実権を握って以降、徹底した腐敗撲滅運動を推進しており、今回の海外派遣はその取り組みを改めて後押しするもの。中国当局によると、習氏が党総書記に就任して2期10年で、国外に逃亡していた10700人近い被疑者が強制帰国させられた。これには中国の最重要指名手配犯100人のうち、60人以上が含まれる。だがCCDI当局者は、未解決事件を解決し、巧妙な犯罪者による不正行為を抑止するため、汚職摘発官たちが一段と困難な課題に直面していると話す」

 

習氏の2期10年間で、国外逃亡した1万0700人近い被疑者が強制帰国させたという。驚くべき数字だ。摘発されただけでこれだけの人数である。氷山の一角である。

 

(3)「CCDIは昨年12月発行した機関紙に寄せた論評で、「国外逃亡の多くは長い年月を経た古い事件で、有効な手掛かりがほとんどない」とし、汚職の取り締まりには国際協力の強化が必要だと呼びかけた。また、当局者が連携を強化し、新たな戦略や技術を考案することで、こうした困難を乗り越えなければならないとした」

 

元々、官僚トップになると、子弟を米国へ留学させるとともに財産を米国へ移しており、本人一人が中国で勤務する。こういう例が報道されていた。身が危うくなると、すぐに米国へ逃亡する準備をしているというのだ。国家への忠誠はゼロである。

 

(4)「各国の中国大使館に汚職摘発官を常駐させれば、受け入れ国が警戒心を強める恐れがある。欧米諸国では、中国の公安部隊が国境を越えて法執行任務を遂行しようとしていることへの懸念が高まっている。例えば米当局は、中国の工作員が許可なく米国内に滞在する逃亡者を追跡していると繰り返し苦情を申し立てている。汚職摘発担当官が海外で具体的にどのような活動に従事するかは明らかにされていない。関係者の1人によると、一部の職員はリーガルアタッシェ(大使館勤務の法務官)として派遣される可能性が高く、これは中国の警察職員が外国政府との連絡官として海外派遣される際の肩書と同じだ」

 

中国は、海外へ「私設警察」を設けて、中国人を監視しているという報道が相次いでいる。汚職摘発官とこの「私設警察」とは同一なのかという疑問が残る。他国で、中国の警察権を執行するのは違法であるからだ。

 

(5)「人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」のキャンペーン・ディレクター、ローラ・ハース氏によると、CCDI関係者を法執行機関の連絡官として大使館に常駐させることは、海外におけるCCDIの活動と、法の枠を超えた手法を行使して逃亡者を中国に強制送還させる措置を正当化するための試みだ。ハース氏は、常駐されれば標的となり得る人々の「権利と自由の享受に深刻な影響」を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らす」

 

下線のような問題点がある。汚職摘発官という名目で「私設警察」をつくっている疑いも消えない。