中国は、アリババの巨大勢力を恐れて、これまで数々の圧力をかけてきたが、ようやく妥協点が見つかったのであろう。アリババを6分割して上場させた後、アリババが経営権を放棄するという案だ。アリババは、11億人のアプリ利用者を持つが、それぞれ6分割すれば、1社あたりの利用者は2億人足らずと小規模になる。
『日本経済新聞 電子版』(3月30日付)は、「アリババ、分割事業の経営権放棄も 上場後に検討」と題する記事を掲載した。
中国ネット通販大手のアリババ集団は3月30日、分割する事業グループについて、上場後に経営権を手放す可能性があることを明らかにした。同日開いた組織再編に関する説明会で、徐宏・最高財務責任者(CFO)が述べた。
(1)「同社は28日、持ち株会社に移行した上で6つの事業グループに再編し、それぞれに最高経営責任者(CEO)と取締役会を置く体制とすると発表した。徐氏は経営権を放棄する狙いや上場時期などについては明言を避けた。「上場後に企業を評価して、アリババの戦略全体のなかでの重要性から、支配下におき続けるか手放すかを決める」と述べた」
アリババは会社を、クラウド、中国国内の電子商取引、グローバルな電子商取引、デジタルマッピングおよびフード宅配、物流、娯楽・メディアの6事業ごとに分割する。この6事業グループにはそれぞれCEOと取締役会を置き、業績について一切の責任を負う。中国国内の電子商取引事業は引き続きアリババの完全子会社とする。張CEOは従業員宛ての書簡で、新会社はそれぞれ時機を見て資金調達や新規株式公開(IPO)を実施できるとし、「市場が最高のリトマス試験だ」と述べた。以上、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日付)が報じた。
29日の香港株式市場は、アリババ集団の6分割を好感して急伸し、一時前日比16%高となった。これで、当局のテック企業への締め付けが終わるという期待である。
(2)「完全子会社のままとするネット通販など中国コマース事業以外については、独自の資金調達や上場も検討する。張勇(ダニエル・チャン)会長兼最高経営責任者(CEO)は「(今後の)アリババの役割は、事業運営から資産や資本の運営に移行する」と話した。張氏は、「ぞれぞれの事業で業務内容や発展段階、業界や顧客、競合相手が異なる」とし、組織再編で意思決定のスピードを高める狙いがあると説明した。創業者である馬雲(ジャック・マー)氏が掲げた「102年以上続く良い企業になる」という方針は変わらないと強調した」
巨大企業の分割は、米国ではよく見られる経営手法である。習近平氏は、やみくもに国有企業の合併で大型化を推進してきた。アリババについては、6分割という逆の手法である。本心は、これでアリババの芽を摘むという認識であろう。
(3)「調査会社のクエストモバイルによると、アリババグループのアプリ利用者数は11億人を超える。中国当局はなお巨大ネット企業の影響力を警戒しているとされる。アリババは事業分割後の経営権放棄に含みを持たせることで、当局の警戒心を和らげる狙いがあるとの見方もある」
習氏が、アリババを俎上に上げたのは、11億人のアプリ利用者がいることに「恐怖感」を持ったことだ。これを利用して、「反習運動」でも起こされるリスクを警戒したのである。習氏の判断の一つは、「打倒習近平」の現れることの阻止である。
(4)「中国政府は政府による統制のもと、ネット企業などの成長を促す方針にかじを切っている。モルガン・スタンレーのローラ・ワン氏は29日、アリババの組織再編や当局の動きに関連して「中国の規制改革が完了し、民間部門やプラットフォーム企業への支援が強化されたことを示している」と指摘した」
中国は、完全に民営企業を当局の支配に組み入れる見通しがつかなければ、「無罪放免」しないはずだ。アリババの6社分割は、当局の「ゴー・サイン」が出た結果であろう。
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