a0960_008527_m
   

韓国は、社会が封鎖的であるばかりか、株式市場も同様の傾向が強い。韓国株は、過去10年、他の新興国市場と比較して、予想PBR(株価純資産倍率)が平均16%も下回っている。これも閉鎖的な企業経営の結果というのだ。こういう韓国でも、アクティビスト(物を言う株主)の意見が次第に採用されるようになってきた。「コリアディスカウント」も、終わるのでないかと期待する声が出ている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月30日付)は、「コリアディスカウント、ついに終止符か」と題する記事を掲載した。

 

韓国企業の取締役会でちょっとしたドラマが繰り広げられるケースが増えている。長らく沈黙を保っていたアクティビスト(物言う投資家)が主張し始めたためだ。これは、韓国の株価押し上げにつながるかもしれない。韓国株は、世界有数の重要なテクノロジー企業が名を連ねているにもかかわらず、長い間他国の市場より割安な水準で取引されてきた。

 

(1)「調査会社インサイティアによると、韓国に拠点を置く企業に対するアクティビストの提案件数は、2020年は9件だったのに対し、21年は38件、22年は56件だった。アクティビストが獲得した取締役会の議席数も、昨年は26議席と2年前の2倍以上となった。ガバナンス(企業統治)と市場規制の改善を目的とした政府の新たな政策も助けになった。それには、スピンオフ時の株主保護の強化や外資規制の緩和などが含まれる。

 

海外のアクティビストの言動には抵抗しても、国内アクティビストの意見には、韓国企業も聞く耳を持つようになり始めた。閉鎖社会に風が少し吹き込んでいる。

 

(2)「今回の変革要求は主に、外部から現状を打破しようとする外国人投資家――最も有名な例として、米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントが2015年にサムスングループ傘下企業同士の合併阻止を試みたが、失敗に終わった――ではなく、韓国内部からのものだ。インサイティアによると、2022年のアクティビスト活動の約4分の3は、韓国を拠点とするファンドまたは韓国人ファンドマネジャーによるものだった」

 

日本にも苦い経験がある。世界の注目を浴びたのが、トヨタ系列の小糸製作所の筆頭株主にブーン・ピケンズの率いるアメリカのブーン社がなったことだ。1989年春に発行済み株式の2割から3割近くも保有したが、株主総会ではピケンズの要求を否決した一件だ。日本の「後進性」を見せつけた。米ヘッジファンドが、2015年にサムスングループ傘下企業同士の合併阻止を試みたが失敗したのと形式的には類似している。韓国は、まだ日本の1990年頃の状態である。

 

(3)「アクティビスト活動の増加は、韓国企業が低評価される「コリアディスカウント」現象の減衰を促すかもしれない。ゴールドマン・サックスによると、韓国株は過去10年、他の新興国市場と比較して、予想PBR(株価純資産倍率)が平均16%下回っている。その数字は現在さらに大きくなっている。韓国資本市場研究院が2月に公表した調査によると、そうしたディスカウントの3分の1余りは株主還元率の低さが影響している」

 

韓国社会が開放的になれば、株式市場も次第に株主の要求を受け入れるようになるだろう。今は、その黎明期に当たる。

 

(4)「ゴールドマン・サックスは、韓国は日本を除くアジア市場で最も配当性向が低いと指摘している。アクティビストが韓国企業にプレッシャーをかけ、株主にもっとキャッシュを還元させることができれば、韓国と他市場との評価格差がついに縮まるかもしれない。ただ問題もある。サムスンやLGなどの「財閥」と呼ばれる一族経営のコングロマリット(複合企業)が、いまだに韓国経済と株式市場を支配していることだ。彼らのアクティビスト活動への抵抗はもっと強いだろう。しかし、特定の一族が支配していない、より規模の小さい企業では、ついに変化が訪れるかもしれない」

 

韓国は、日本を除くアジア市場で配当性向が最も低いという。これは、企業が株主の存在を軽視している結果だ。株主を労組並みに重視するようなれば、韓国の株価は上がるだろうと見ている。

 

(5)「韓国経済は半導体価格の低迷をはじめ、景気循環の難しい局面を迎えている。しかし、長期を見据える投資家にとっては、買いの好機になるかもしれない。世界経済が再び好転し、株主還元率の向上が実現した場合はなおさらだ」

 

韓国経済の回復は、半導体市況しだいである。サムスンが、人為的な減産をしないと頑張っているので、市況底入れのメドはたっていない。