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世界金融不安が中国へ

早くから警戒のIMF

住宅で大量在庫が発生

地方債務1200兆円

 

中国は過去10年間、不動産バブルをテコにGDPを押し上げてきた。それもついに、年貢の納め時になったようである。中国の経済活動が、厳しいゼロコロナ政策で逼塞させられ、住宅需要は失速したからだ。これまでの「住宅投機熱」は一変した。

 

住宅部門は、中国GDPの25~30%の寄与度とされる。最大の需要部門であるだけに、住宅需要の落ち込みは経済成長に大きな影響を与えるのだ。これが引き金になって、住宅関連企業の抱える過剰な債務の返済が滞り始めており、銀行返済へ跳ね返るリスクの高まりを見せている。

 

折り悪く、米国の急激な金利引き上げによって、米国内で銀行破綻が発生。それが、スイス金融機関へと波及するなど、世界の金融不安が一挙に高まる事態になった。過剰債務を抱える中国が、この圏外に立つことは難しい。地方銀行が、劣後債償還を見送る事態へと波及している。不動産バブル後遺症の渦中だけに、中国はまさに緊急事態の発生である。

 

世界金融不安が中国へ

中国は最近、中小銀行が発行した劣後債の利回りが急激に上昇(価格は下落)している。3月上旬まで5〜6%前後であった利回りが3月下旬、約8%まで跳ね上がった。これは、湖北省の農村商業銀行など4行が、劣後債の繰り上げ償還を見送った結果である。クレディ・スイス・グループの「AT1債」(永久劣後債)は、救済過程で無価値となり世界金融不安を煽っている。この波が、中国まで達しているのだ。

 

中国には、もう一つ「固有の黒事情」が潜んでいる。銀行融資に賄賂が動いていることだ。本来ならば、融資を受けられない企業が贈賄によって銀行融資を可能にしている。これが、不良債権リスクを高める背景だ。現在、この種の融資に対して根絶すべき動きが強まっている。銀行業務の監督が、これまでの国務院(政府)から共産党へ移管されたことだ。不正は、厳罰へと直結する仕組みが導入されたのである。

 

共産党中央規律検査委員会は、汚職など規律違反を摘発する機関である。この中央規律検査委員会が2月に、反腐敗闘争の対象として金融界をやり玉に挙げた。「金融界にはびこるエリート思想や拝金主義、西側崇拝を打破する」と宣言したのである。金融界の給与待遇を厳しく管理するほか、金融界への党の統制力を強めるという狙いだ。

 

2021年の国有金融機関の平均年収は、国有企業平均の1.53倍で業種トップである。金融機関は、高い利ざやで得た利益を給与で支払ってきたのである。中国経済は、低成長時代へ入り利ざや圧縮が不可避となっている。高い給与を支払うよりも、内部留保を厚くして金融リスクへ備えることが、最優先される事態になったと見るべきだろう。

 

中央規律検査委員会は、金融界の高い給与がエリート主義と拝金主義を生んだと非難している。これが、収賄を招いているとしている。だが、「贈収賄」は中国の文化である。権限のある者に贈賄するのは、一種の「挨拶」となっているのだ。ましてや、融資を受けたいとなれば「贈賄」に走るのは必然であろう。これを阻止するには、企業の支払い能力を示す厳正な「企業格付け」が不可欠である。

 

中国は、この「企業格付け」が賄賂によって歪められる異常事態だ。まさに、「賄賂大国」中国ならではの混迷ぶりである。中央規律検査委員会は、こうした悪弊を権力によって取り締まろうとしている。

 

中国の過剰債務から発生する不良債権処理は、最終的に金融機関の利益で償却するほかないであろう。それには、国有企業平均の1.53倍にもなる国有銀行等の給与水準を引き下げ、内部留保を高めるほかないのだ。さらに、新たな不良債権を発生させないように、監督しなければならない。これが、共産党へ銀行監督業務を移管させた本当の理由と見られる。中国は、金融危機に備えて「緊急シフト」で臨んでいるのだ。

 

早くから警戒のIMF

IMF(国際通貨基金)は、中国の不動産がらみによる不良債権発生を最も早くから警戒してきた。中国経済の年次報告書で2021年1月、金融リスクを抑えるため「銀行への監督を強化すべきだ」と指摘した。IMFは、金融監督の強化の一環として「包括的な銀行再編の仕組みを整えるべきだ」とも強調。具体的には、基金を設け、経営が立ちゆかなくなった銀行へ一時的に資金を投入し、市場から円滑に退出させることも求めたのである。

 

中国は、このIMFの警告に耳を貸すことはなかった。IMFは、その後も同じ趣旨の警告を重ねた。中国は、具体的に対応することもなく、ずるずると事態の悪化に任せてきた。不動産バブル崩壊という正しい認識に欠けた結果である。農村部の人たちが都市部へ住むことで、新しい住宅が必要になる。こういう理屈にこだわった。住宅ブームが、長期に続くという幻想に酔っていたのだ。(つづく)

 

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