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世界の低所得国は、パンデミック下で国家財政が火の車になっている。ここ10年、中国は「一帯一路」プロジェクトで低所得国へ過剰融資を行い、財政破綻の原因を作ってきた。当然、貸付国の責任も問われる。中国は、他の債権国へ協力して債権整理に臨むことを極力避けている。貸付金が、「又貸し」であることも影響しているのだ。 

『フィナンシャル・タイムズ』(4月13日付)は、「中国が変えた『破産国家』の債務再編」と題する記事を掲載した。 

財政が脆弱な貧困国は長い間、債権者と話をつけて危機から抜け出すことができずにいる状況は、国家破産の処理の複雑さを物語る。もはや完全な破綻だとみる専門家もいる。最近、政府債務のデフォルトに陥った一連の国は重大な事態を迎える恐れがあり、この問題は、米ワシントンでの国際通貨基金(IMF)・世界銀行の春季会合で重要議題に取り上げられた。IMFのゲオルギエバ専務理事は会合開幕前の講演で、低所得国の約15%がすでに「債務危機」状態にあり、ほぼ半数の国がその瀬戸際にあると指摘した」

 

 

(1)「今、国家の債務に関して、混乱を引き起こす不透明で強大な力が新たに出現し、これまでのもろいパッチワーク(継ぎはぎ)状態が完全に崩れる恐れが生じている。その力とは中国だ。一部の専門家は、中国政府の発展途上国への積極融資と西側の標準的ルールに従うことを拒む姿勢について、債務整理を妨げる最大の要因であり、一部諸国を長く借金地獄に閉じ込める恐れがあると捉えている」 

中国が台頭する以前は、債務破綻国について主要債権国が話し合い、債権減免で経済再建を手助けしてきた。それが、今では通じなくなっている。中国の貸出が急増しており、債権減免が中国の国際収支に影響を及ぼすためである。つまり、債務の「又貸し」であるからだ。貸出金利7%以上という「高利」がそれを裏付けている。

 

(2)「英王立国際問題研究所(チャタムハウス)で中国を専門とするユ・ジエ上級研究員は、中国政府の姿勢は「経済的合理性よりも地政学的競争に関わる部分のほうが大きい」と指摘する。「国際金融機関はおおむね米国と欧州の人たちによって運営されている。中国は、西側の指図を受けずに債務減免の問題を提起できるようになりたいと考えていた」と指摘。中国が重要な存在として台頭したことでシステム全体が未知の領域に入ったと指摘する。「条件を指図する力を持ち、不本意な取引には応じずに待ちの姿勢をとれる一つの債権大国が現れた。その存在が状況を一変させた」と指摘される」 

中国が、下線部のように硬直姿勢になっているのは、中国が資金的ゆとりを持って融資したのでない結果である。「投資」と同じ感覚で行った。そうであれば、債権の減免が中国経済の屋台骨を揺るがすのだ。

 

(3)「IMFが2月末に公表した最新統計によると、モザンビーク、ザンビア、グレナダなど9つの貧困国がすでに「債務危機」の状態にあり、27カ国がそれに至る「高いリスク」を抱えている。さらに26カ国が監視対象国に指定されている。元IMF高官でパキスタン中央銀行総裁を務めたレザ・バキル氏は、これらの国々には経営難で助けが必要となる国有企業も数多く存在すると指摘する」 

実に、62カ国が債務リスクを抱えている。これらの多くは、中国が融資に関わっている。一帯一路で中国の勢力圏を拡大しようという狙いであった。 

(4)「2001年にアルゼンチンが800億ドルの債務でデフォルトを起こして以来、米国が過半数の債権者が合意すれば、再編に同意しない債権者に受け入れを強制できる「集団行動条項(CAC)」を提唱した。12年のギリシャの債務再編後、CACはさらに強化された。しかし、それが役立つのは債務再編の合意が成立してからだ。多くの専門家が、最大の根本的問題の解決には全くつながらないと指摘する。その問題とは、経済危機を悪化させる恐れを伴う複雑なプロセスに警戒の目を向け、デフォルトの政治的恥辱を恐れて、債務国が再編を求めるのがあまりに遅くなってしまうことだ」 

CACは、スリランカの債務再編に適用されよとしている。スリランカは、債務の50%強が中国である。その中国が消極的であるので、日本・フランス・インドが音頭を取って整理案を出し、中国へ協力を求めている。主貸出国が逃げ腰で、他の少額貸出国が債務整理の主役になっている。主客転倒である。

 

(5)「この10年間にわたり中国が世界中の途上国に巨額の融資を提供したことで問題がさらに膨らみ、破綻したとする声さえ出ている。そうした融資の多くは規模や条件、性質ばかりか、時にはその存在さえ不透明になっている。中国は、融資の大半についてIMFや経済協力開発機構(OECD)、国際決済銀行(BIS)に報告しておらず、その総額はつかみ難い。だが、米ウィリアム・アンド・メアリー大学の研究機関であるシンクタンク、エイドデータは融資総額を約8430億ドルと推計している。中国はパリクラブのメンバーではなく、大半の場合、融資は無数の国有銀行または政府系金融機関によって行われ、実態をさらに見えにくくしている」 

下線部のように、中国は極秘条件で途上国へ貸し出している。契約条項に外部に漏らさないという「秘密条項」がついているのだ。万一違反すれば即刻、契約解除という文言まである。これこそ、中国が後ろめたい融資であることを自ら認めた形だ。担保の取り上げを策していたことを裏付ける。