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西側諸国は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁で、ハイテク部品を集中的に輸出禁止処分にしている。この結果、すでに武器の生産は大幅に遅延状態に追込まれている。さらに、航空機の部品供給もストップし、安全運航にまで問題が発展する気配である。

 

西側諸国は、ウクライナ侵攻の早期解決を目指して、さらなる禁輸措置の強化に取組む意向を見せている。医薬品などの人道的配慮を除けば、全面的な禁輸措置を検討中である。

 

『ブルームバーグ』(4月20日付)は、「米国含むウクライナ支援国、対ロ輸出のほぼ全面禁止検討-関係者と題する記事を掲載した。

 

米国などウクライナを支援する一部の主要国は、ロシアへの輸出をほぼ全面的に禁止する方向で検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。ロシアに対する経済的圧力を大きく強める可能性がある。

 

(1)「関係者らによれば、主要7カ国(G7)の当局者は5月に開催される首脳会談(広島サミット)を控え、対ロ輸出をほぼ全面的に禁止する案について協議している。この措置に欧州連合(EU)加盟国が参加することも目指しているという。この案はまだ協議中であり、内容は変更される可能性もあると、関係者らは語った。この案は、例外として認められない限り対ロ輸出を全面的に禁止する内容で、実現すれば既存の対ロ制裁を一変させることになると、関係者らは述べた。現時点では、制裁対象となっていない限り全ての輸出が認められている」

 

西側諸国は、ウクライナ侵攻の早期解決を求めて、さらにロシアへ経済制裁圧力を加え、継戦能力の抑制を目指す。ロシアは、経済制裁で戦車の生産で大きな障害になっている。ただ、古い戦車の在庫は山ほどあるとされるので、どこまで継戦能力を抑制できるか疑問の声もある。

 

(2)「関係者の1人によれば、G7首脳がサミットでこの案を支持した場合、今度は輸出禁止の除外対象となる品目の詳細について合意する必要が出てくる。医薬品のほか、食品を含む農産物は除外対象となる可能性が非常に高いという。米国家安全保障会議(NSC)の報道担当は、対ロ輸出をほぼ全面禁止する可能性についてコメントを控えた」

 

詳細は、5月の広島G7サミットで決定される。EU(欧州連合)全体の参加も検討されているので、大きな輪に広がりそうでる。

 

米『CNN』(4月19日付)は、「新型兵器の製造に困難抱えるロシア 旧型投入で継戦能力維持かーCSIS報告書」と題する記事を掲載した。

 

戦場での損耗と西側諸国からの制裁により、ロシア軍は勢いを失った状況にある。それでもロシア政府は引き続き、ウクライナでの戦争を引き延ばすだけの戦力を保持する見通しだ。戦略国際問題研究所(CSIS)の新たな分析で明らかになった。

 

(3)「CSISの試算によれば、ロシア軍はこれまでの戦闘で戦車やトラック、大砲、ドローン(無人機)といった主要な装備を1万単位近く失った。ただ一方で冷戦期及びそれ以前の装備の在庫を活用し、これらの損失を埋め合わせることは可能だという。報告書では、ロシアが戦争開始から1年で失ったとみられる戦車の数を1845両から3511両と推計。とりわけ2013年に初めて投入された比較的新型の主力戦車「T72B3」の被った損害が甚大だった」

 

ロシア軍は、過去1年で大量の戦車を失い、主力戦車「T72B3」の損害も甚大という。

 

(4)「CSISの報告書によると、ロシアのある戦車工場では1カ月で約20両の戦車を製造可能だが、ロシアは毎月ウクライナであらゆる型式の戦車を平均150両近く失っている。ロシアが数十年前の戦車を稼働させなくてはならないのは、新たに製造するだけの資源がないためだと報告書は指摘。西側諸国による制裁の結果、部品の調達が不可能となり、最新式の戦車を組み立てられない状況にあるという具体的には砲手が標的を捉えるのに必要な光学システム、ボールベアリング、工作機械へのアクセスが制裁により絶たれたと報告書は指摘する。侵攻前の生産期間中、光学システムはフランスからの輸入に頼っていたという」

 

ロシアは毎月約20両の戦車を製造している。一方、毎月の平均で新旧合わせて150両の戦車を失っているという。ただ、過去に膨大な在庫があるので、第二次世界大戦後に生産した戦車も駆り出しているほどだ。対ロ輸出の全面禁止で、新鋭武器生産を抑制する。

 

(5)「これらの輸入が途絶えたことで、光学システムはより旧式のものを搭載せざるを得ず、砲手の射程は最大で2キロ短くなった可能性があると報告書は指摘する。また高品質のボールベアリングはあらゆる種類の移動車両を製造する上で極めて重要な部品だが、侵攻前のロシアにこれらのベアリングの55%を供給していたのが欧州と北米だった。これらの供給源が失われた今、ロシアは不足分を国内生産か品質で劣る中国産やマレーシア産の輸入で補おうとしているとみられる。航空機や無人機、ミサイル、電子戦の装備についても、マイクロチップなど最新のハイテク機器が必要になる。これらをロシアが国内で適切に供給することは不可能であり、西側の制裁が発動する中にあって輸入も困難が生じると、報告書は述べている」

 

最新鋭武器には、ハイテク機器が不可欠である。西側諸国は、すでに「武器輸出国」ロシアを輸出契約を守れずピンチに陥らせている。ロシアは、インドとの武器取り引でき約100億ドル相当の供給を停止している状態だ。