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韓国上場企業の2割は、3年間も営業利益で金利を支払えない「ゾンビ状態」にあることが分った。一方、日本企業は実質無借金経営(預金が債務を上回る)が、製造業の58%にも達している。日韓の金融力の差は、想像以上に広がっている。

 

『朝鮮日報』(5月23日付)は、「韓国上場企業の5社に1社は稼いだカネで利息も払えない『ゾンビ企業』 6年前の2倍に」と題する記事を掲載した。

 

昨年時点で、韓国の上場企業の5社に1社が営業活動で稼いだ資金で借入金の利払いすら賄えない状況が続くいわゆる「ゾンビ企業」であることが判明した。こうした上場企業は過去最近5年間で増え続けてきたが、コロナによる生産コスト増大、高金利に景気低迷まで重なり、6年前の2倍近くに増えた。

 

(1)「全国経済人連合会(全経連)は22日、店頭市場も含む上場企業(2347社)の2022年末時点の財務状況を分析した結果、17.5%(410社)がゾンビ企業だったと発表した。ゾンビ企業の割合は2016年時点の9.3%(218社)に比べ8.2ポイント増えた。ゾンビ企業とは、稼いだ営業利益で借入金の利払いすら賄えない状況が3年以上続く企業で、インタレストカバレッジレシオ(年間の事業利益が金融費用の何倍に相当するかを示す数値)が3年連続で1未満の企業を指す」

 

上場企業の17.5%が、「ゾンビ状態」に陥っている。それでも、倒産しないのは固定資産などの切り売りで露命をつないでいるのであろう。

 

(2)「昨年のインタレストカバレッジレシオが1未満の「一時的ゾンビ企業」に至っては全体の30.8%に達した。一時的ゾンビ企業の割合は18年まで20%台だったが、コロナの流行が深刻だった20年に34.%でピークに達し、30%台の状態が続いている。中小上場企業はコロナ以降、政府の金融支援が終了したことで資金事情が悪化した」

 

1年間の「ゾンビ企業」は、全体の30.8%にも達している。経営状態が悪化している背景には、輸出不振がある。主として対中国輸出が減っている。

 

(3)「市中銀行は20年初め、コロナ流行を受け、政府の方針で中小企業・零細事業者向けの融資の元金返済を繰り延べ、利払いも猶予した。返済期限が繰り延べられた融資の総額は残額約36兆ウォン(約3兆8000億円)に達する。昨年末時点で企業への融資残高は初めて700兆ウォンを突破し、借金は増え続けている。全経連のチュ・グァンホ経済産業本部長は「20年以降のコロナ、急激な金利引き上げ、最近の景気悪化などがゾンビ企業の増加要因とみられる」と説明した」

 

政府の救済方針で、元利金返済が繰り延べられているほどで、コロナ不況に輸出不振が重なっている。返済期限が繰り延べられた融資の残額は、約36兆ウォン(約3兆8000億円)にも達している。コロナ不況では、日本も同じ経営環境にある。だが、日本企業は膨大な内部留保を蓄積しており、不況抵抗力は極めて強い。

 

『日本経済新聞』(5月24日付)は、「製造業の過半が『実質無借金』融資、AIが活路開くか」と題する記事を掲載した。

 

(4)「日本経済の停滞、企業の資金需要が抑えられたこともあり、借入金を上回る現預金を持つ「実質無借金」企業の割合は製造業で58%。20年で30ポイント近く増えた。企業が借り入れに頼らなくなり、政策株の売却でつながりも弱まれば銀行の存在感は当然低下する。京都を拠点とする製造業の幹部は「日ごろの関係があるので銀行ともお付き合いをするが、我々の課題や問題点を踏まえた提案の質では証券会社のほうが充実している」と冷ややかだ」

 

日本では、企業が金融機関から資金を借入れない「実質無借金経営」が、製造業で58%もある。これは、金融機関にとって「困ったこと」だ。貸出が増えないことには利益が出ないからだ。ましてや、ゼロ金利時代で利ざやは圧縮されている。

 

(5)「ポスト日本型企業統治の時代、銀行の役割はどこにあるのか。活路のひとつが岸田文雄政権も力を入れるスタートアップ支援だ。三菱UFJ銀行で新興企業を担当する岩野秀朗氏は「(資本増強しようと)新株を発行すれば起業家の持ち分比率が過度に下がる場合がある。ベンチャーキャピタルのような資本の供給だけでなく、融資の出し手である銀行が果たせる役割は大きい」と話す。日本が、起業率やユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の創出で欧米に見劣りするのは、資金供給の乏しさが一因だ。足元の業績は振るわなくても、企業の将来性を正確に測れるようになれば無担保でも融資に応じられる」

 

日本の金融機関は、スタートアップ支援など、ベンチャーキャピタルのような積極的な姿勢が必要だ。こういう状態へ転換できれば、日本経済の底上げに繋がる。視点を変えれば、明るい話である。