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韓国経済は、重大局面に遭遇している。G7広島サミットでも明らかにされたように、世界は中ロ枢軸と自由陣営が対立する局面となり、グローバル化時代の終焉を告げた。もはや、自由貿易時代には戻れない状況下で、韓国の輸出依存経済も終わったのだ。 

韓国が、輸出依存に代わって内需を振興するには、国内改革が不可決である。だが、左派による既得権益への抵抗でどうにもならないのだ。左右両派の政治的対立は、国内改革への大きな障害になっている。つぎの記事を参照していただきたい。

2023-05-11

メルマガ462号 尹政権、内政改革で高いハードル 韓国の未来は「あと4年で決まる」

 

前記のような問題意識が、次の韓国メディアで取り上げられた。

『中央日報』(5月26日付)は、「韓国産業研究院『韓国の輸出主導型成長は終わった』」と題する記事を掲載した。 

数十年間続いた「グローバル化」が事実上終止符を打った中、韓国の輸出環境も急速に悪化している。過去とは異なり、最近10年間の輸出増加率が経済成長率を下回ったことが分かった。産業研究院は、米国・中国葛藤などで交易状況がさらに悪化する可能性が大きいとし、成長率維持のための民間消費活性化を呼びかけた。
(1)「産業研究院は25日、このような内容の「第2次グローバル化の終焉と韓国経済」(カン・ドゥヨン上級研究委員)という報告書を公開した。報告書は半世紀以上続いた世界GDP(国内総生産)比貿易の上昇傾向が2008年世界金融危機以降消滅したと評価した。韓国の輸出主導型成長も終わりつつある。国際通貨基金(IMF)基準で、この10年間(2013~2022年)の世界貿易の年平均増加率は3.1%で、金融危機以前の1990~2007年(7%)に比べて半分以下に鈍化した。韓国の輸出増加率は同期間12.9%から2.8%へと下がり、それよりはるかに大きな下げ幅を見せた」

 

世界貿易の成長率が低下している中で、韓国は輸出依存経済を改める努力を怠ってきた。民間消費支出の対GDP比は、40%台に止まってきたのである。この大きな理由は、大企業と中小零細企業の生産性格差がある。その主因は、大企業労組が生産性以上の賃金を獲得し、そのしわ寄せで中小企業製品を買い叩き、中小企業労働者を低賃金へ追込んできた。大企業労組こそ、韓国の既得権益集団を形成した核である。この集団が、左派勢力の中心になり政治すら動かしてきたことが、「悲劇の原点」である。 

(2)「産業研究院が、韓国銀行の資料を分析した結果、この10年間(2013年1-3月期~2023年1-3月期)の経済成長率は年平均2.45%で、輸出増加率(2.43%)を小幅に上回った。2013~2019年に範囲を狭めれば、両者の格差はほぼ1%ポイントにさらに広がる。経済成長率6.32%、輸出増加率13.18%だった1990~2007年とは完全に変わった数値だ。産業研究院は今後、世界貿易環境がさらに悪化する可能性が大きいと指摘した。特に、激化する米中葛藤が世界経済「デカップリング」(脱同調化)につながれば、世界経済・交易停滞が加速するという見通しだ」 

世界経済は、米中対立で自由貿易が不可能になり縮小過程へはいる。それが、西側諸国の経済安全保障にとって、やむを得ざることだという認識だ。自由貿易によって、西側の技術が中国の軍事技術に使われ、台湾侵攻という民主主義の危機を招く事態を回避する狙いである。現状は、「準戦時体制」へ移行している。ロシアのウクライナ侵攻が、世界の眠りを覚まさせたのである。韓国には、この認識が希薄である。

 

(3)「内部的な変化の努力も欠かせない。輸出の成長寄与度の下落を補填するための内需活性化が代案として挙げられた。経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の対GDP比民間消費の割合は48.4%で、米国(68.2%)、日本(53.5%)、欧州連合(EU·52.3%)より低かった。産業研究院のカン・ドゥヨン上級研究委員は「グローバル化の終焉以降、韓国経済は民間消費と輸出が成長をけん引する役割を分担しなければならない。そのためには民間消費の活性化が必要だ」と述べた」 

企画財政部と韓国開発研究院(KDI)が25日、「韓国経済の今日と明日」をテーマに経済開発5カ年計画樹立60周年記念国際カンファレンスを開いた。前・現職の経済副首相や長官、KDI院長が参加した。

 

秋慶鎬(チュ・ギョンホ)経済副首相兼企画財政部長官は開会の辞で、次のように述べた。 

「60年間の誇らしい成果が今後60年を保障することはない」として、「世界景気の鈍化や金融不安、輸出・投資不振、国家債務の速い増加、国際基準とかけ離れた規制、世界最低の出生率による人口減少などで成長潜在力が急速に下落している」 

これは、韓国経済の現状を率直に述べたものだ。これを打開するには、次の田允迵(チョン・ユンチョル)元副首相兼財政経済部長官が指摘することにつきる。 

「自分の利益にこだわって皆が損をする現実を指摘した。同時に、また「経済発展過程でやむを得ず派生した過度な規制を果敢に解かなければならない」として、「民間創意性が発揮されるように規制は廃止する一方で、公正な市場に向けた規則を作り管理するのが政府の役割」と説明した。

韓国は、「G8」などという夢物語を忘れて危機感を持つことであろう。左派が、既得権益にこだわらず改革に協力することだ。それなしには、韓国経済が保たないであろう。