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ウクライナ軍のザルジニー総司令官は5月27日、通信アプリ「テレグラム」に、「われわれのものを取り戻す時が来た」とのメッセージと共に、ロシア軍との戦闘に臨むウクライナ軍の映像を投稿した。

 

『時事通信』(5月27日付)は、「ウクライナ総司令官『領土取り戻す時』、反転攻勢を宣言か」と題する記事を掲載した。

 

ロシアに占領された領土を奪還するための大規模な反転攻勢の開始を宣言した可能性がある。反転攻勢の時期を巡っては、ウクライナ政府内部や専門家の間でも見解が分かれている。ウクライナのポドリャク大統領府顧問は25日、イタリアの公共放送RAIのインタビューで、大規模な反転攻勢は「既に始まっている」と発言。ただ、軍トップが表明したのは今回が初めてとみられる」

 

(1)「約1分間の映像では、部隊指揮官と整列した兵士らが「断固たる反撃にご加護を」「神聖なる勝利を」などと声を上げ、戦闘に向かう様子が映されている。フェイスブックにも投稿され、「ウクライナ軍に対する国際支援の一環として、侵略者からのウクライナ解放にささげる壮観な動画が公開された」とのメッセージが添えられた。

 

ロシアは、ザルジニー総司令官が前線で重傷を負ったという「偽情報」を流したが、それだけ追込まれていることを間接的に伝えている。

 

(2)「ウクライナ国防省の情報本部は、「ロシアが(占拠するウクライナ南部の)ザポロジエ原発の事故を偽装する準備をしている」との情報を公表した。「敷地を自ら攻撃し、放射性物質が漏えいしたと発表することを計画している」といい、国際機関による調査を名目にウクライナの反転攻勢を阻止する狙いだと主張している」

 

ロシアは、ザポロジエ原発の周囲に防衛戦を張っているが、ここでも「嘘情報」を流している。劣勢であることを隠すためとみられている。

 

(3)「ロシアは26日、ウクライナ全土でミサイルと無人機による大規模な攻撃を行った。東部ドニプロでは診療所や動物病院にミサイルが着弾し、少なくとも2人が死亡、子どもを含む30人以上が負傷。ウクライナのゼレンスキー大統領は「吐き気のする連中だ」と非難した」 

 

ロシアは、無差別攻撃を行っている。弾薬を節約しなければならない時期に、無駄な弾を撃ち込んでいる。防衛一方で気持ちが動転して、むやみやたらと打ち込んで気分を紛らしているのであろう。

 

『CNN』(5月28日付は、「春の反転攻勢は『既に開始』の認識、ウクライナ政府高官」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は27日までに、同国が準備しているとされる春の反転攻勢について「たった一つの作戦」の実行がその開始を意味するようなものでなく、「既に始まっている」との認識を示した。

 

(4)「25日時点での発言で、反攻の意味合いについて「特定の1日の特定の時間帯に赤リボンを厳かに切って始まるような単一の(大規模な)作戦ではない」とSNS上で説明。異なる方面でロシアの占領軍を破壊する多数の異なる行動を伴う」として、「昨日起きたし、本日もあるだろうし、明日も続くだろう」と反攻作戦が既に進んでいるとの判断を示した。「敵の後方支援の拠点をたたくのも反攻である」と続けた」

 

タス通信などによると、ロシア軍の占領下にあるウクライナ南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所で26日夜、爆発があった。露側は、ウクライナ軍が長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」(射程250キロ・メートル超)2発を発射したと主張している。マリウポリは前線から約80キロ・メートル離れている。米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲システム「HIMARS」の射程の限界付近に位置し、反転攻勢の候補地の一つにも浮上している。

 

(5)「ウクライナ情勢に関しては最近、ドローン(無人機)によるロシア側への越境攻撃、中南部ザポリージャ州での戦闘激化、英国がウクライナへ供与した長距離巡航ミサイル「ストーム・シャドー」の実戦配備やロシア軍の燃料貯蔵施設などが破壊される展開が続いている。これらの動きを受け反攻は既に始まったとの臆測も多く流れていた。ウクライナのゼレンスキー大統領はこれまで、全面的な攻勢を仕掛けるまでには「まだ時間が必要」と再三発言してきた。反攻開始の意味合いを紛らわせて混乱を誘うことも反攻計画の一部との指摘もある」

 

中南部ザポリージャ州での戦闘激化は、ウクライナ軍がこの地点を突破してクリミア半島への補給線を断つ狙いかも知れない。その意味で、すでに反攻作戦は始まっている。