テイカカズラ
   


ロシアの民間軍事会社ワグネルのトップ、エフゲニー・プリゴジン氏は、ロシア軍を痛烈に批判している。おれは、軍内部の混乱を露呈する形になっている。特にウクライナ戦争でロシアがつまづきつづければ、新たな「革命」がロシアを揺るがしかねないとの見方まで示している。『CNN』(5月25日付)が報じた。

 

今後、ロシア軍の敗北が続けば革命を予告することは、プーチン体制下で「禁句」のはずである。プリゴジン氏は、それを平然と言い放っている裏には、この主張を容認する「勢力」が軍内部に存在することを示唆している。

 

『ハンギョレ新聞』(5月27日付)は、「ワグネル創設者の激しいロシア軍批判『ポスト・プーチン』の権力闘争の序幕か」と題する記事を掲載した。

 

ロシアの傭兵集団ワグネル・グループの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が、ウラジーミル・プーチン大統領体制のもとで決して容認されなかった水準まで軍部を批判し、「ポスト・プーチン」を意識した権力闘争が始まったのではないかという分析まで出ている。ロイター通信は23日(現地時間)、ウクライナ東部ドネツク州の最大激戦地であるバフムト占領作戦を率いているプリゴジン氏のロシア軍部批判が日増しに激しくなっていると報じた。

(1)「プリゴジン氏は同日、ワグネルの公式テレグラムのチャンネルを通じて、ロシアのベルゴロド州で2日間交戦が起きたのはセルゲイ・ショイグ国防長官の責任だと主張した。同氏は「数カ月前にベルゴロド地域で軍人を訓練させると発表したところ、ショイグ長官が電話をかけてきて、憤慨しながら『ロシア軍には国境を防御する能力がある』と言った」とし、ベルゴロドで交戦が起きたことに対して軍官僚が責任を取るべきだと主張した」

 

反プーチンを掲げるロシア人の集団が、ウクライナに隣接するロシア南西部ベルゴロド州に侵入し、ロシア側が恥をかく事態となった。ロシア国内で影響力を持つ軍事アナリストの間でも怒りや困惑が広がっているという。プリゴジン氏は、ロシア軍が「どんな形態であれ対抗する準備が全くできていない」と批判する裏には、一定の支持が与えられていると見られる。

 

(2)「プリゴジン氏は20日、バフムト占領完了を宣言する動画でも、ロシア軍部を強く批判している。同氏は「我々を助けた人々と、支援を積極的に拒否し結局敵を助けた人々のリストを持っている」とし、「彼らがいつかは自分たちの行動に責任を負うことになるだろう」と警告した。プリゴジン氏のロシア軍部攻撃は、ロシア内部の軍批判勢力を代弁するものだという分析が出ている。特に、プリゴジン氏が極度に無礼な態度を見せるのは、プーチン体制後の権力闘争を意識したのではないかという指摘も出ている」

 

プリゴジン氏は、『CNN』によれば次のようにも発言している。「ウクライナは世界最強の軍隊の一つだと思う」と述べ、「しっかり組織化され、しっかり訓練され、情報収集も最高レベルだ。彼らはどんな軍のシステムも、ソビエトや北大西洋条約機構(NATO)と同様の成功をもって運用できる」と続けた。これは、ロシア軍を誹謗中傷したことに等しく、本来であれば罰せられる対象である。それがないのは、プーチン体制後の権力闘争が始まっている証拠かも知れない。

 

(3)「米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際学大学院所属の歴史学者セルゲイ・ラドチェンコ氏は、「プリゴジンの行動には多くのミステリーがある」とし「プリゴジンがロシア軍部の分裂、内紛、(これに対する)プーチンの無関心とプーチンの権力の弱体化などに映りうる状況を演出するのは、偶発的なことではないだろう」と指摘した。2014年のロシアのクリミア半島強制併合に関与した元情報要員のイーゴリ・ギルキン氏は、「権力の中枢の一部がプリゴジンの背後にあるということは疑いの余地がない」とし、「プリゴジンの公の挑発と国防部の沈黙は支配階層内部の矛盾の結果」だと指摘した。また「これはポスト・プーチンを狙った生存闘争の始まり」だと付け加えた」

 

下線部は、無視できない動きである。「権力中枢の一部が、プリゴジンの背後にいることは疑いの余地がない」とまで指摘している。これが、事実とすれば厄介な事態になろう。

 

(4)「ロシア大統領選挙が来年4月に予定されているだけに、プーチン大統領がこのように公開された対立を放置し続けることはないだろうという指摘も出ている。西側のある外交官は「(このような状況でも)プーチン大統領が何の措置も取らなければ、彼の力が弱まったことを示すことになるだろう」と指摘した」

 

今後、プーチン氏はプリゴジン氏の発言に対して、どのように対応するのか。この動きが、プーチン権力の盛衰を示す尺度になると言うのだ。