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朱子学が近代化の壁に

コリア経済今がピーク

世界最悪の特殊出生率

近く日本以下の成長へ

 

韓国は、ユン政権の登場で外交政策も大きく変わった。1年前の文政権時代の「親中朝・反日米」が、「親日米・反中朝」へと逆転したからだ。ただ、韓国世論の基調にはさしたる変化はない。この結果、現在の右派政権がいつ左派政権になるか分らない脆弱性を抱えている。その意味で、不安定の中での安定という奇妙な形に収まっている。

 

韓国の右派と左派では、政治哲学が180度もの対立をしている。右派の市場主義(企業主義)と左派の反市場主義(反企業主義)というように、ここには決定的な違いがあるのだ。この延長線で、右派の親日米と左派の反日米となって対立する構図ができている。こうした水と油の関係が、民主政治に不可欠な「対話」を阻害している。これが、韓国政治最大の弱点である。

 

民主政治は、対話(コミュニケーション)によって成り立つものだ。韓国の右派と左派では、価値観そのものが白と黒の関係であるため、対話が最初から成立しない宿命を負っている。常に、非難と問責の応酬で終わっている。これ以上、不幸なこともあるまい。

 

現在、福島原発処理水をめぐって、右派と左派が猛烈な対立をしている。右派(ユン政権)は、科学分析の重要性(無害)を主張するが、左派はこれを信じず風評を重視する、という具合だ。韓国は、風水(易)によって日常生活が大きく支配されている社会だ。この非科学的土壌は、風評を最も受け入れ安い基盤を生んでいる。

 

WTO(世界貿易機関)は、日本が韓国の福島農水産物に対する輸入禁止措置を提訴した一件において、一審で日本の主張を認めながら最終審で、韓国の主張する「風評論」に軍配を上げた。つまり、韓国において「風評」は科学以上のウエイトを持つことを証明したのである。2008年には、偽情報に端を発する「狂牛病騒動」で李明博政権の支持率が急落する事態まで生んだ社会だ。根も葉もない噂が、世論を支配しているのである。

 

朱子学が近代化の壁に

こういう科学よりも風評を重視する背景には、朝鮮李朝が朱子学を国教として受け入れたことが大きく影響している。朱子学は、中国儒教として朝鮮へ伝えられた。中国以上に解釈が精緻化したので、「自己を絶対化」し他の思想を受け入れない独特の発展をした。李朝は約500年続いたが、これによって朝鮮の「独善」に磨きがかかり、開国を遅らせるという近代化阻害要因になった。

 

日本が、明治維新で開国したという告知書を李朝に送った。李朝は、「日本国天皇」の名前であることから、「頭が高い」と受け取りを拒否。これが、日韓紛争「第一号」になった。日韓では最初から、感情的にしっくりいかない伏線があった。

 

韓国朱子学は今なお、韓国社会の底流に生き続けている。左右両派の妥協なき対立の原点は、この朱子学の影響が尾を引いている結果とみるほかない。文政権時代には、学生が「反政権ビラ」を蒔いて、文在寅氏から名誉毀損で訴えられた事件がある。

 

ビラの趣旨は、「文政権は、国益を毀損し反日フレームで政治的な利益を得ている。自分たちは愛国、民主化勢力であり、他の人は積弊、親日売国奴勢力と二分する。こうした政治的利益目的で、国論を分類する行為は不当である、と批判した」。これが、政権を刺激したのだ。名誉毀損は、「文在寅」本人の告訴によって成立する。文氏は、若い学生を相手に告訴したのだ。これこそ、韓国朱子学の象徴的事例である。

 

批判を受け入れない韓国朱子学が、韓国左派には強烈な力になって根付いている。この独特の価値観をひっさげて国際社会で通用するはずがない。最近は、韓国がG7首脳会議に相次いで招待されていることから、「G8にふさわしい国格」と自画自賛する声が増えている。右派政権では西側諸国と協調できても、左派政権になったら「G8」はまとまりを欠くであろう。左派は本質的に、「親中朝:反日米」路線である以上、他のG7の諸国と協調することは考えがたいのだ。

 

コリア経済今がピーク

韓国経済は現在、GDPで世界10位にある。この位置は今後、安泰であろうか。実は、極めて不安定になっているのだ。10位になったのは2020年以降である。2000年からの推移は、11~13位である。対中国輸出が急伸して、GDPの世界順位が上がってきたものである。一時は、中国GDP成長率の半分が、韓国GDPを押し上げるとされていたほど、中国の成長率が韓国GDPに寄与した。

 

現状は、全く状況が異なってきた。中国経済の停滞が色濃くなっているのだ。この影響を受けて、韓国の対中国輸出は22年10月から前年同月比で連続マイナス状況が続いている。中国経済は、23年1月から「ゼロコロナ政策」を廃止したものの、回復が遅々としたペースである。現在は、従来のイメージからほど遠い状況である。(つづく)

 

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