中国の王文濤商務相は5月26日、日本の西村康稔経済産業相と会談した。その際、日本の半導体装置輸出規制について、「間違ったやり方を正す」よう求めた。中国商務省が29日に声明を出した。王氏は、日本が中国の強い反対や業界内の意見を無視したと指摘。日本の行動が経済と貿易の国際規則を「著しく違反した」と批判した。ただ、「主要な経済・貿易分野で実利的な協力を推進するために日本との連携に前向き」とも表明した。
これまでの中国報道では、日本が半導体装置輸出規制を行えば、対抗手段を取ると強気姿勢を見せてきた。だが、日中閣僚会議ではトーンダウンしており、「日本との連携に前向き」としている。輸出規制が始まった場合、中国への影響はどのようになるのか。中国側の報道を見ておきたい。
『東洋経済オンライン』(5月31日付)は、「日本の先端半導体『輸出規制』中国はどう見る」と題する記事を掲載した。これは、中国紙『財新』記事の転載である。
日本政府は5月23日、先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に追加した。2ヶ月の周知期間を置き、7月23日から施行する。その後の輸出には、経済産業大臣の事前許可が必要になる。追加された23品目は、半導体の製造装置とその部品がほとんどを占める。工程別では、3品目が半導体の洗浄、11品目が薄膜形成、4品目が回路焼き付け、3品目がエッチング、1品目が検査に関わるものとなっている。
(1)「今回の措置の背景について、経済産業省は同日付の通知のなかで「国際的な安全保障環境が厳しさを増すなか、軍事転用の防止を目的として、半導体製造装置に関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案し、特定の貨物及び技術を輸出管理の対象に追加することとした」と説明した。これに対し、中国商務省は報道官コメントを直ちに発表。「日本政府の決定は輸出管理の乱用であり、自由貿易(の基本原則)および国際的な貿易ルールを著しく逸脱している。中国は断固として反対する」と批判した」
中国としては、これまで自由に輸入できたものに規制がかかる。当然、反発するであろう。ただ、中国は民間と軍事との壁がなくなっているので、軍事転用されることを前提にしなければならない。常時、尖閣諸島の領海侵犯をしている中国への輸出規制は当然の措置である。
(2)「日本政府の規制強化は、中国の半導体産業のオペレーションにどの程度のインパクトを及ぼすのだろうか。「規制対象は回路線幅14nm(ナノメートル)またはそれ以下の先端半導体の製造装置に限られている。フォトレジスト(感光材)などの材料は含まれておらず、中国への影響は小さいのではないか」。財新記者の取材に応じた東京在住の専門家は、自身の分析をそう語るとともに、次のように付け加えた。「ただし、半導体製造装置のなかには14nm以下と以上のどちらにも使えるものがある。輸出管理の運用次第では、規制が(14nm以上の)成熟プロセスにまで拡大する可能性も排除できない」と指摘した」
規制対象が、14nmまたはそれ以下となっている。だが、半導体装置輸出規制を行うオランダは、規制に積極的姿勢であり、規制の境界である先端半導体へも規制を広げるとしている。日本も、同じ歩調を迫られよう。
(3)「中国の半導体製造装置メーカーに出資している投資業界関係者は、財新記者の取材にこうコメントした。「中国の半導体メーカーの多くは、(規制強化を見越して)予備の装置や材料を大量に買い付けていた。そのため短期的には、日本の輸出管理強化の影響は大きくない。しかし長期的には、中国(の半導体産業)は製造装置の国産化による(輸入装置の)代替能力を問われることになる」と指摘する」
中国企業は、輸出規制を見込んで部品など消耗品は大量に輸入しているので、当面の事態には対応可能である。米中対立は、長期が予想されるだけにいずれ問題が起る。半導体装置は中国独自につくることは特許に触れるので困難とされている。現行方式による製造は、不可能と言われており、全く違う製法を編み出す以外に道はないようだ。そうなると、今回の影響は大きくなろう。
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