テイカカズラ
   

中国は、インフラ投資一本で景気回復を進めてきた。だが、地方都市の財政悪化でインフラ投資を行う余裕も失っている。地方政府は、過去3年間のゼロコロナによる景気低迷と、不動産バブル崩壊による土地売却収入の激減で、財政基盤はガタガタになっているのだ。

 

『ロイター』(6月2日付)は、「中国、100都市以上が利払い費で困難に直面ー調査」と題する記事を掲載した。

 

米調査会社ロディウム・グループは、中国で昨年少なくとも102の都市が債務返済コストの管理で困難に直面したとの報告書をまとめた。これにより、財政政策を通じた景気支援が難しくなっているという。

 

(1)「調査は205都市の昨年の財政データと、地方政府の資金調達とインフラ投資を担う融資平台2892社の財務諸表を基に行った。中国では不動産会社の債務抑制策や新型コロナウイルス対策で地方政府の財政が悪化。昨年は205都市の半数で利払い費が財源の10%以上に達した。10%を超えると、債務返済コストの管理が難しくなるという。

21年の年次データを基にした2月の調査(318都市を対象)で利払い費が財源の10%以上に達した都市は全体の3分の1だった。蘭州と桂林の利払い負担は昨年、財政能力を超えたという

 

昨年、中国205都市の半数で利払い費が財源の10%以上に達した。10%を超えると、債務返済コストの管理が難しくなるという。中国の地方政府は、社会保障費も7割を負担させられるなど、中央政府によって徹底的に絞り取られている。しかも、インフラ投資まで地方政府任せでは、負担の限界を超えている。

 

(2)「報告書は、「現在の地方政府の財政悪化は、財政政策を活用した景気支援を妨げる要因となっている」とし「実際のところ、これが今年、中国の景気回復に向けた有効な財政支援が行われていない主因だ」と述べた」

 

地方政府は、公務員も大量に採用させられている。中央政府から見れば景気悪化では「何でも屋」の役割を担わされているのだ。すでに、インフラ投資の余力もない以上、今年の景気回復は困難である。

 

『日本経済新聞』(5月31日付)は、「中国経済、インフラ頼み 5年で高速鉄道3割 空港1割拡大 」と題する記事を掲載した。

 

中国政府が国内交通インフラの5カ年計画をまとめた。最終年の2027年に高速道路や空港数は1割、高速鉄道は3割拡大する。交通向け投資は22年に過去最高を記録しており、23年も高水準を維持する。不動産市況の低迷などで地方経済が疲弊するなか、インフラ頼みの色彩が強まっている。

 

(3)「交通運輸省などが計画を策定した。中央政府が管轄する高速道路は21年末時点で11万7000キロメートルあり、27年に13万キロメートルと11%延ばす計画だ。省など地方政府の管轄分を含めた全体の高速道路は21年末で16万9100キロメートル。全体の延伸計画値は不明だが、さらに規模は大きくなる。米国の連邦道路庁によると、20年時点で米国の高速道路は約9万8000キロメートル。中国は高速道路の総延長ですでに世界首位だが、さらに差を広げる」

 

中国は、高速道路の総延長ですでに世界首位である。だが、さらに延長する。人口減社会に入って、いずれは「無駄な投資」になる。資金回収もできず、赤字垂れ流し要因となるのだ。

 

(4)「『中国版新幹線』と呼ばれる高速鉄道も同様だ。国有企業の中国国家鉄路集団が独占運営しており、22年末の総延長は約4万2000キロメートルと、日本の新幹線の約13倍。一国の高速鉄道として世界最長だ。こちらも27年に5万3000キロメートルと、26%延ばす。このほか22年末で254カ所ある空港は、約280カ所に増やす計画だ。全国の交通向け固定資産投資は22年が約3兆8000億元(約75兆円)で過去最高を更新しており、23年も高水準を維持する。交通運輸省の徐成光・副部長(副大臣に相当)は2月に「交通インフラの投資は規模が大きく、経済効果が早く、雇用も拡大できる」と説明。「投資を拡大し、経済全体を好転させる支援をする」と述べた」

 

インフラ投資は、GDPを押し上げる効果はある。ただ、リターンが少なく「死の投資」になっており、負債を増やすだけである。返済を考えたことは、皆無と見られる。

 

(5)「もっとも各交通の経営は厳しい。有料道路全体でみると債務返済や補修費などの総支出が通行料金の総収入を上回り、大幅な赤字だ。政府などが抱える高速道路の債務残高は21年末で7兆4853億元にのぼる。高速鉄道を運営する鉄路集団も赤字路線が多く、負債総額は22年末時点で6兆1068億元。高速道路と鉄道の「双子の債務」は合計で約13.6兆元と、22年の国内総生産(GDP)の約11%にあたる巨大な規模だ

 

高速道路と鉄道の「双子の債務」は、GDPの約11%に当たる。この巨大な債務をどのように返済するのか。その計画はない。無責任政治の極である。