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韓国は、輸出不振から今年のGDP成長率を予測のたびごとに引下げられる状況だ。IMF(国際通貨基金)は、当初の2%→1.7%(1月)→1.5%(4月)→1.4%(7月)と下方修正の連続である。この状況打破で浮上しているのが日本だ。文政権時代は「積弊精算」対象とされた日本が、政権交代し経済状況悪化の中で再浮上している。

 

韓国の全国経済人連合会(全経連)は7月28日、ソウルで日本の経済同友会と懇談会を開催した。今年に入ってから5月に日韓経済人会議、6月に日韓商工会議所会長団会議、7月初めに全経連と経団連のフォーラムも開催している。そして、今回の経済同友会である。韓国が、日本接近する状況が手に取るように分るのだ。

 

『中央日報』(7月29日付)は、「韓日関係に順風、両国経済界『この機会を逃してはいけない』」と題する記事を掲載した。

 

韓日両国経済界の交流・協力が正常軌道に乗った。日本経済団体連合会(経団連)・日本商工会議所と共に日本3大経済団体の一つ、経済同友会までが韓国を訪問して交流し、両国間の対話の窓口が完全に復元された。

(1)「韓国の全国経済人連合会(全経連)は28日、ソウル小公洞(ソゴンドン)ロッテホテルで「全経連-日本経済同友会晩餐懇談会」を開催した。金秉準会長職務代行は歓迎のあいさつで「最近、韓国ではサントリーウイスキーが、日本では韓国の化粧品が人気で、両国の民間交流も活性化している」とし「協力を強化すれば大きなシナジーが生まれる」と述べた。続いて「韓日企業が『得時無怠』(良い時期が訪れた時に機会を逃してはいけない)という考えで相互協力の底辺を広げるのがよい」と話した。

韓国は、文政権時代の冷え切った日韓関係で両国のビジネスが停滞したことで、その回復に躍起となっている。失われた5年間を取り戻す勢いである。

 

(2)「両国企業は、核心資源の共同開発、第3国共同進出、脱炭素などを韓日間の協力課題として議論した。ロッテケミカルは伊藤忠商事と「水素・アンモニア事業のための包括的協力MOU」を締結し、東アジア地域の水素・アンモニア供給安定性確保および市場拡大に向けて協力することにした」

韓国は、水素事業で日本の協力を求めている。日本は、水素事業で世界の先頭に立っているので日韓協力を目指している。韓国が、このように日本へ協力を求めている裏には、冒頭に上げた経済の行き詰まり問題がある。

 

『中央日報』(7月30日付)は、「低成長の沼に落ちた韓国、革新だけが生きる道」と題する社説を掲載した。

 

韓国経済の体力低下は、国の経済規模順位でも確認できる。昨年、韓国の名目国内総生産(GDP)規模は13位、前年比で3段階下落した。韓国経済はこのまま落ち込むだろうか。

 

(3)「新たな跳躍が切実な時期だ。折しも半導体に隠れていた自動車産業の善戦が注目される。低成長の沼に落ちた韓国経済に小さな希望になっている。いまは一部産業の躍進に満足する時ではない。何より韓国経済は現在成長の限界に直面した状態だ。これまで大企業を中心に展開してきたファーストフォロワー(速い追撃者)戦略が成功を収めてきたが、いまはまた中国やインドなど別のフォロワーに追われる身になった。これまでなかった新しい市場を開き世界の先頭国と肩を並べるファーストムーバー(先導者)への変身にエネルギーを注がなければならない」

 

韓国の名目GDPが、世界トップ10圏外へ落ちた最大の理由は、サムスンの半導体輸出が低調であったことだ。サムスン1社が、韓国経済を左右するのは異常である。

 

(4)「韓国の宿題である「新樹種」を育てる道は、すでに提示されている。科学技術振興とこれを土台にした技術事業化だ。環境は悪くない。韓国の研究開発投資はGDP比世界1~2位水準であり、絶対金額も世界5位に達する。大学や研究所の研究論文が「ネイチャー」「サイエンス」など世界最高水準の学術誌に相次いで掲載されている。これに対し進む道はまだ遠い」

 

韓国企業2500社の研究開発投資の49%(2021年)は、サムスン1社のシェアである。これでは、どうにもならないのだ。第二、第三のサムスンが出ない限り、韓国経済は牽引できないであろう。このほか、内需振興が不可欠である。サービス産業を近代化しなければ経済の底上げは不可能である。


(5)「最も大きな問題は、革新技術を基に新たな成長エンジンが出てきていない点だ。キーワードは韓国の産業生態系の構造的革新だ。実際にソウル大学のキム・ピッネリ教授のような世界的碩学は国内トップクラスの研究を新産業に連結するインフラが備わっていないと訴える。革新スタートアップがあちこちで誕生しているが、グローバルスタンダードに満たない規制が立ちふさがる状態だ。

 

下線部分は、基礎研究の重要性である。この部分の強化には、政府が大学の研究開発を支援するほかない。さらに、規制緩和の実行である。既得権益が二重三重に取り巻いている現状の打破が不可欠だ。韓国は、障害が多すぎる。特に医学関係は、絶対不可侵の「聖域」扱いである。ここを、崩さなければならない。