習近平氏は、現象面だけをみて政策を決めている。その背後にある多くの要因を無視するので、とんでもない結果を生んでいる。21年、市民の生活費負担を軽くする名目で学習塾を禁止した。それが、何をもたらしたか。大卒者の有力就職先を奪ったのだ。習氏の政敵打倒で始めたIT関連企業取締りも、大卒者の有力雇用先の発展チャンスにタガをはめてしまった。こうした計算違いが今、ブーメランとなって中国社会へ“逆襲”しようとしている。
『フィナンシャル・タイムズ』(8月21日付)は、「中国の高齢化、日韓より深刻」と題する記事を掲載した。
中国政府は、自国の成長は独自の「中国モデル」によるものだとよく強調するが、中国経済の軌跡は日本や韓国のそれと極めて似通った道をたどっている。つまり、経済発展の当初は、低コストの労働力を強みに輸出主導で急速な工業化を進めたものの、ここへ来て成長が鈍化しているのは人口の高齢化と減少に密接に結びついている。
(1)「欧米では中国経済が現在、デフレや不動産バブル、債務危機に直面するのに伴って、まさに「日本化」しつつあるのではないかというリスクが頻繁に語られている。しかし、中国は経済面だけでなく社会面でも日本や韓国と類似性を抱えている点も懸念すべきだろう。これら3カ国はいずれも極めて低い出生率に悩まされており、これが経済への負担増を招く人口減少や高齢化につながっている」
後世の歴史家は、中国衰退は「習近平国家主席の時代に始まった」という烙印を押すことになろう。
(2)「中国当局から見ても、日韓の状況は自国と恐ろしく似ていると感じる部分があるかもしれない。というのも中国では経済成長率が減速し、若年の失業20%を超えるなか、報酬などが魅力的な職は減りつつあり、そうした仕事に就くための熾烈な就職競争を諦めて、代わりに最低限の生活でよしとする「寝そべり族」が増えているからだ」
若者に仕事がない以上、「寝そべり族」出現は自然のことだ。
(3)「日本では2011年、韓国は20年から人口が減少に転じたのに続き、中国でも22年、約60年ぶりに減少に転じた。中国当局にとって懸念すべきは、中国の人口減少が始まった時の国民の平均資産が日本や韓国が減少に転じた時よりも少ないことだ。中国政府は目下、出生率の引き上げに躍起となっている。だが日本と韓国の取り組みを見れば、これがいかに容易には実現できないかがわかる。それどころか中国の場合、就職先が見つからず、自分が住むアパートも借りられない若者は所帯を持つ見込みも低いため、人口動態はさらに悪化する恐れがある」
22年の合計特殊出生率は、1.09という驚くべき低さであった。今年か来年には、韓国と同様に1を割るだろう。もはや、中国の命脈は尽きかけたと言っても良い。
(4)「中国の習近平国家主席は21年、若者が直面する圧力を軽減し、子育てにかかるコストを抑えるため、塾など学校以外において営利目的で教えることを厳しく規制した。ところが、この施策は狙いに反し、大学を卒業した若者にとって最大の就職先のひとつを奪う結果となった」
20年の合計特殊出生率が、1.30と急低下した原因を学習塾になすりつけて廃止させた。現実は、「地下」で潜り家庭教師が増えている。むしろ、過程の出費は増えているのだ。
(5)「日本と韓国は民主主義国として確立しているのに対し、中国は中国共産党による一党独裁国家の下で経済成長が鈍化することになる。その中国政府には若者が抱く不平や不満について警戒すべき歴史的な理由が十分にある。というのも1919年と1989年に社会を揺るがすような学生運動が起きたからだ。中国政府はこれを弾圧によって押さえ込んだ。監視国家である中国が、学生の不満やデモ活動を鎮圧する術を持っているのはほぼ間違いない。これに対し日本や韓国などの民主主義国の方が、社会的不満のはけ口となる安全弁が多くあり、政治的な試みを進める余地が大きい」
1919年は「5・4運動」である。日本が、第一次世界大戦でドイツ敗北による中国権益を譲渡されることへ反対した学生運動だ。1989年は、天安門広場での学生弾圧で3000人とも言われる犠牲者が出た事件である。中国の若者が立ち上がるとこういう大規模な事件へ発展する。
(6)「中国の一党独裁制は常に警戒感が強く、こうした柔軟性は存在しない。習氏が推し進める自身への個人崇拝や「中国国民の大いなる復活」を絶対に実現させるという強気の姿勢によって、中国が直面している複雑な社会的、経済的課題について公に議論する道は閉ざされている」
習氏は、「習近平思想」と称するものを国民に強要している。恥ずかしい行為と思わないところが、中国の限界であろう。これしか、国家を統一する術がなくなっている証明だ。
(7)「習氏は経済成長よりも国家安全保障と政治統制を重視する考えだ。若年層との対話を試みようにも、実態をあまり理解していない様子がうかがえる。希望を持てない若者に「苦いものを食べろ」と言っても響かないのは当然で、苦境の中にいるからこそ国民の一人ひとりの人格が磨かれるのだという郷愁も、全く異なる時代に生まれた今の若者にはまず共感できないだろう。中国における高齢化社会と低成長経済への移行は、日韓よりもはるかに難しく、一筋縄ではいかない可能性がある」
この先、中国共産党がいつまで保つのか。下線部の2大脅威(人口高齢化・低成長経済)を乗切れるのは、権威主義国家か自由主義国家か。世界史のエポックが始まる。


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