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中国経済は、失速状態に陥っている。建直し策は、GDPの約4割を占める個人消費の回復しかない。だが、多額の住宅ローンを抱えている家計に対して、雇用不安のつきまとう中で「貯蓄より消費を」呼びかけたところで効果はないであろう。そうなると、中国政府が制度的に消費増強策を立てることだ。政府はこの場合、台湾侵攻計画にそった軍備強化に回す資金がなくなる。個人消費強化は、こういう「八方塞がり」状態におかれているのだ。

 

『ロイター』(8月26日付)は、「経済失速の中国、消費喚起策に立ちはだかる複数の障害」と題する記事を掲載した。

 

北京に住む書籍編集者のエリン・ヤオさん(30)はストリートダンスの教室に通ったり旅行したりと、中国政府が「ゼロコロナ」政策を続けた3年間にできなかったことをするつもりだった。しかし、それを諦めて、給料から貯蓄に回す額をパンデミックの最中よりも増やしている。「突然病気になったときのための貯蓄が十分か、自問自答しています。もし、職を失ったら、次の仕事を見つけるまで暮らすお金はあるのかと」――。お金の使い道を変えた理由をこう明かした。

 

(1)「ヤオさんが財布のひもを引き締めることになったのは、中国の1980年代の経済成長モデルに原因がある。このモデルは不動産、インフラ、鉱工業への投資に過度に依存し、消費者の所得と消費を増やす取り組みが不十分だったとの指摘が多い。中国は経済の低迷で「リバランス」、つまり不均衡の是正が焦眉の急となっているが、経済資源の家計への移転には、目先の痛みを一段とさらに大きくするような困難な決断が必要だ。具体的に言えば、国民所得に占める家計の割合を高めることは、他の部門、特に中国の巨大な鉱工業部門や政府部門の割合の低下を意味する」

 

中国GDPの構成は、個人消費4割と固定資産投資4割と偏っている。この経済では、固定資産投資を減らせば、GDPがガクッと落ち込む。それを覚悟で、個人消費を増やす対策が取れるかだ。

 

(2)「ファソム・コンサルティングの中国エコノミスト、ジュアン・オーツ氏は「鉱工業部門や政府部門の比率が低下すれば、景気後退入りは不可避だ」と予想。理屈の上では、ヤオさんは月給8000元(1097ドル)以上の仕事を見つけることができれば、支出を増やすことができる。だが、中国の雇用市場は弱く、若者の失業率は過去最高の21%超に達している。都市部の新規雇用の80%を占める民間部門は、ハイテク産業などに対する政府の規制面での締め付けから、まだ立ち直っていない。政策立案者は企業への信用供与を強化する方針を示しているが、企業は最終的に脆弱な内需によって制約を受けている

 

都市部の若者失業率が高いのは、ハイテク部門への政府の締め付けが影響している。企業はこの影響を受けるので業績は振るわないという悪循環だ。

 

(3)「ヤオさんのような国民に消費してもらうもう一つの方法は、こうした国民の抱える不安に対処することだ。エコノミストの多くが、経済の不均衡を是正するために社会的なセーフティーネットを強化するよう国に求めている。ヤオさんが暮らす北京の失業手当は期間が3カ月から24カ月で、金額は最高で月2233元(約4万5000円)。この額はヤオさんの12平方メートルもない部屋の家賃にも満たない」

 

約4万5000円の失業手当では、12平方メートルもない部屋の家賃も払えない。こうなると、消費を切り詰める以外に生きる術がない。

 

(4)「ヤオさんの両親は農村部に住んでいる。まもなく定年を迎えるが、年金は1人当たり1500元(約3万円)とわずか。ヤオさんは父親の薬代として毎月300元(約6000円)負担しているが、これはダンス教室の受講料と同額だ。ヤオさんは「公的医療保険が高齢者の医療費をもっとカバーしてくれたら安心できるのに」とため息をつく。経済的な不安もあり、彼女は子どもを持つことにも消極的。中国は高齢化が進み、特に消費がピークを迎える20代から40代で人口が減っている」

 

中国は、消費の担い手である20~40代の人口が減っている。これも痛手である。


(5)「経済学者からは需要サイドの政策案として、公共サービスを改善してより広く利用できるようにすることや、社会保障給付の増額、労働者の法的交渉力の強化、国有企業の株式の市民への分配などが挙がっている。だが、問題はこうした政策に伴うコストを誰が負担するかだ。社会保障給付を引き上げて企業の負担が増えれば、雇用と成長への打撃も大きくなる。残るのは政府部門だが、地方自治体は債務危機に見舞われている。
カーネギー・チャイナのマイケル・ペティス上級研究員は、中央政府が地方政府に働きかけてGDPの1~1.5%相当を家計に移転させれば、中国は現在の成長を維持できると試算」 

下線部は理想論である。習政権は、台湾侵攻計画を立てている以上、これを実行するはずもない。結局、決断がつかないままに「衰弱」する経済となろう。