テイカカズラ
   

中国政府は、住宅不況打開で小出しの対策を行っているが未だ手応えはない。この結果、次のような状況になっている。

1)新築住宅価格は、過去10カ月で最も大幅な下落。新築住宅価格は前月比0.3%下落。前年比でも0.1%下落した。7月は前月比0.2%、前年比0.1%、それぞれ下落していた。

2)不動産投資は前年比19.1%減少。7月は17.8%減だった。減少は1年6カ月連続。

3)住宅販売は2年2カ月連続で減少した

 

こういう状況下でJPモルガンが内外の投資家に対して、「中国の不動産危機は最悪期をまだ脱していないと考えるか?」という調査を初めて行った。結果は、予想通り「終わっていない」であった。

 

『ロイター』(9月16日付)は、「中国不動産危機、最悪期はまだ脱せずーJPモルガン調査」と題する記事を掲載した。

 

JPモルガンが実施した中国内外の投資家を対象とする調査によると、中国の不動産危機は最悪期をまだ脱していないとの見方が大勢を占めた。

 

(1)「JPモルガンのアナリストは15日に発表された調査の概要で「当然のことながら、大半の投資家は弱気だ」と指摘。中国の不動産市場がまだ危機の「谷」にあると答えた回答者は全体の55%に達した一方、最悪期は過ぎ去ったと答えた回答者は26%にとどまったという。JPモルガンがこのような調査を実施したのは今回が初めて。また中国国内と海外の投資家の見解に大きな相違はなかったとした」

 

中国の不動産市場が、まだ危機の「谷」と見るのは全体の55%。最悪期は過ぎ去ったと見るのは26%に過ぎなかった。住宅販売の増加が、回復条件となるのであろう。その意味では、最悪期は過ぎ去ってはいない。

 

(2)「回答者の約60%が、今後3カ月の間に企業の株価は上昇すると予想している。ただ、ポジションを積み増す可能性が高いと答えたのは16%のみだった。一方、最大の懸念材料は「非効果的な政策対応」とし、続いて銀行システムへの波及、不動産販売の二番底、住宅価格の大幅な下落が懸念されているという。中国政府による支援策が今後36カ月の間に不動産販売を押し上げるかどうかについて40%強の回答者が「中立的な見方」を示した。今後、中国政府が非常に力強い景気刺激策を実施すると予想しているのはわずか17%だった一方、65%は地方政府または地方自治体が徐々に支援を強化すると見込んだ」

 

今後3カ月の間に約60%の人が、株価上昇を予想している。だが、「当てずっぽ」という印象が強い。株式を買う人が16%しかいないことに現れている。中国不動産危機の本質は、実需でなく思惑で高値をつけたことだ。完全なバブル現象である。こういう過程で、株価が早期に底入れすると見るのは余りにも近視眼と言うほかない。

 

中国国家統計局が15日発表した8月の粗鋼生産は前月比4.8%減の8641万トンと、予想以上に減少した。一部の製鉄所が利益率縮小を受けて減産した。前年同月比では3.2%増加している。粗鋼減産は、需要の大宗を占める建設需要の停滞を反映したものだ。

 

コンサルティング会社マイスチールによると、8月末時点で黒字だった中国の製鉄所は全体の半数。7月下旬は約3分の2の製鉄所が黒字だった。月を追うごとに赤字企業が増えている。国家統計局によると、1~8月の中国の粗鋼生産は、前年同期比2.6%増の7億1293万トンである。これから、赤字企業の増加とともに漸減していくであろう。

 

『ロイター』(9月15日付)は、「中国政府の土地販売収入、8月は前年比-22.2% 20カ月連続減」と題する記事を掲載した。

 

中国政府の8月の土地販売収入は20カ月連続で減少した。債務問題が深刻化する中、地方政府の財政を一段と圧迫しそうだ。

 

(3)「政府土地販売収入は、中国財政省が15日に発表した統計に基づくロイターの計算で前年比22.2%減少。前月は10.1%減だった。1~8月は前年比19.6%減の2兆7100億元(約3728億2000万ドル)。長年の過剰なインフラ投資と土地販売収入の急減を受け地方政府の負債は拡大。中国経済と財政の安定に大きなリスクをもたらしている。S&Pグローバル・レーティングのクレジットアナリスト、ウェンイン・ホァン氏は、「重要な収入源である土地販売収入の減少は地方政府の財政を悪化させ、裁量的な支出能力を低下させる可能性がある」と指摘した」

 

地方政府の都市販売収入は、1~8月に前年比19.6%減になっている。地方財政で歳入減になっている。この状態では、住宅対策を行うゆとりもない。お手上げ状態だ。不動産危機を脱出する時期は、不明と言うしかない。