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中国は、インフラ投資重視の経済政策を続けているが、IMFゲオルギエワ専務理事から「消費重視」への成長モデル転換を要請された。このままだと、近くGDP成長率は4%を割ると厳しい警告が出された。 

『ロイター』(9月17日付)は、「IMF、中国に成長モデル転換要請へ『消費重視を』―専務理事」と題する記事を掲載した。 

国際通貨基金(IMF)は中国経済に関する審査(4条協議)で、国内消費の喚起、不動産部門への対応、地方政府の債務抑制が必要との認識を中国側に示す。

 

(1)「ゲオルギエワ専務理事がロイターとの単独インタビューで明らかにした。債務を原動力にしたインフラ投資と不動産をテコとする経済成長モデルを転換し、国内消費を重視する必要があると強く訴える方針。米欧企業が供給網で脱中国に動いていることに加え、高齢化と生産性低下が経済成長率を「抑制する要因」になっていると指摘。不動産部門の問題が消費低迷の原因になっているとの認識も示した」 

中国経済は、袋小路へ入り込んでいる。ここからの脱出は、国内消費の重視であると指摘する。習近平氏の政策とは真逆だけに、対応は不可能であろう。 

(2)「ゲオルギエワ氏は「構造改革がなければ、中国の中期的な経済成長率は4%を割り込む可能性がある」と述べた。不動産部門については、経営難の不動産開発会社を救済するより、購入者がすでに代金を支払ったマンションの建設完了に資金を振り向け、消費者の不動産部門に対する信頼を回復することが重要と主張した」 

IMFの予測では、すでに26年から中国GDPが4%を割り込むとしている。中国が今すぐ行うべき政策は、販売契約済みで竣工していない住宅の早期完工であると指摘する。これが、消費者の信頼を取り戻す道であるしている。

 

(3)「IMFが10月9~15日のIMF・世銀年次会合を前に発表する新たな世界経済見通しについては、各国の経済成長率低迷に対する懸念を反映する内容になると予想。大半の主要国が新型コロナウイルス流行前の経済成長率を下回っていると指摘した。主要国で新型コロナ前の経済成長率を回復したのは米国のみで、中国は新型コロナ前のトレンドを4%ポイント、欧州は2%ポイント、世界経済は3%ポイント、それぞれ下回っているという。中国は今年、世界の経済成長の約3分の1を生み出しており、中国の経済成長率は「アジアと世界にとって重要」としている」 

新型コロナ前のGDP成長トレンドによれば、中国は4%ポイントも下回っている。米国は、コロナ前の成長トレンドへ復帰した。中国経済の不振は、世界経済にとってマイナスである。 

(4)「また、「中国から一定の資金が流出している。こうした傾向と今後の動向を注意深く監視する必要がある」とも指摘。デジタル経済やグリーン技術など投資家にとって依然魅力的な分野はあるとした。中国の強力な電気自動車(EV)の推進については、不公正競争につながる補助金を利用しないことが重要だと述べた 

中国経済の長期停滞を懸念して、資金流出が始まっている。これが、最近の対ドル人民元相場の急落になっている。この傾向が続けば、1ドル=7.3元台を割り込む事態も想定される。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月16日付)は、「中国、需要喚起の政策急げ」と題する寄稿を掲載した。筆者は、金融向け戦略コンサルティング会社アプサラ・アドバイザリー創業者。 

中国の景気低迷は先月発表された7月の経済データで新たな節目を迎えたかもしれない。消費者物価が前年同月比0.%下落(注;8月は同プラス0.1%)し弱い需要がデフレにつながるとの見方を定着させる懸念がある。 

(5)「新型コロナウイルス禍のあとに期待されていた中国の景気回復は失速している。外国人投資家はこれまで製品やサービスの需要に応える中国企業の利益急増を約束する証券会社の楽観的な報告書をうのみにしてきたが、今では不信感を抱くようになっている。それもそのはずだ。中国政府が導入した政策は期待された回復を促すどころか、中国経済の苦境をさらに悪化させている。中国はコロナ禍と不動産市場の問題の両面から打撃を受けた家計の需要不足に苦しんでいる 

中国経済は、3年間のゼロコロナと住宅不況によって家計が需要不足で最も苦しんでいる。政府は、これを無視して供給部門だけに目を向けている。アベコベの政策である。

(6)「米JPモルガンのエコノミストは、最近の報告書で「中国の政策支援は企業部門(すなわち国有企業)、インフラ、グリーン、ハイテク分野に集中している。家計部門への有意義な移転のない例外的な対策だ」と指摘する。そのうえで「中国の政策が供給や生産ではなく、需要を支えるものにならない限り、景気対策はデフレ圧力を強める結果になるかもしれない」と恐れる」 

米JPモルガンのレポートは、家計部門への有効な支援が行われていない現実を危惧している。これは、デフレ圧力を強めるだけである。IMFゲオルギエワ専務理事の指摘と同じだ。