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中国から日本への福島問題をめぐる「抗議電話」は最近、沈静化してきたようである。ひところ、日本への団体客の予約キャンセルも多かったが、日本の観光業界ではすでに「脱中国シフト」へ切り替えているという。この効果によって、中国観光客の動向が大きく影響を及ぼさなくなってきたという。

 

中国からのツアー客は、中国系ホテルに宿泊している。このため、日系ホテルは中国ツアー客が減っても影響ないというのだ。困っているのは、中国系ホテルという。中国による福島処理水への反対騒ぎは、中国資本を困らせるという皮肉な結果を招いている。

 

『産経新聞』(9月18日付)は、「『国慶節』、観光業の〝脱中国〟契機に 処理水影響は限定的」と題する記事を掲載した。

 

東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出による中国人観光客の回復遅れで日本の観光業界への打撃が懸念されてきたが、影響は限定的なのが実情だ。ほかの国からの観光客を確保できているためで、影響はむしろ中国企業に出ているとの指摘もある。中国では9月末に「国慶節」(建国記念日)の大型連休が始まるが、これまでの流れを教訓に中国頼みを回避しようと、業界の〝脱中国〟への転換の契機となる動きも出てきた。

 

(1)「大阪市内のホテル関係者は、「処理水放出問題の影響はない」と口をそろえる。観光庁の7月推計で全国の客室稼働率は57.8%と新型コロナウイルス禍前の令和元年(63.3%)の9割超まで回復。大阪市内のあるホテルでは国内客や中国以外の国・地域からの予約で満室続きだ。リーガロイヤルホテル京都(京都市下京区)は中国からの予約は少ないが、国慶節の連休がある今年9、10月の稼働率は前年同期から30ポイントも急回復する見通しとなっている」

 

全国の客室稼働率は、7月推計で57.8%と令和元年の9割超まで回復している。中国人観光客は、ツアー客が減っても富裕層は増えているという。

 

(2)「幾度も報道される中国人客による日本旅行の大量キャンセルは、「(訪日旅行を生業にする)中国の旅行会社に出ている」(大阪観光局)。中国の旅行会社はコロナ禍前に大量の団体旅行者を日本へ連れて来たが、「受け皿は中国人が経営する店も多かった。最も影響を受けるのは中国系の企業との見方もできる」(旅行業界関係者)日本の旅行会社への影響も指摘されるが、7月の主要旅行業者の訪日客の取扱額は令和元年7月比で85.6%まで回復。取扱額全体に占める割合も約5%にすぎない。

 

下線部は、中国ビジネスの連携プレイの「凄さ」を見せつけている。中国人ツアー客は、中国系ホテルへ宿泊させることでマージンを上げている。こうなると、日本は、騒音とゴミの迷惑を被るだけで、トータルのプラスは少ないのだ。

 

(3)「観光業界では、脱中国にシフトする動きが出始めた。訪日旅行業のフリープラス(大阪市中央区)の男性幹部は「中国以外の国(からの集客)で忙しくさせてもらっている」と話す。「中国にも上流階級に位置づけられる知識人は、処理水放出を冷静にみる人が多い。こうした層の動向を見守りながら富裕旅行の獲得につなげたい」と特定の国に依存しない重要性も示した」

 

日本の観光業界は、中国ビジネスの凄さに呆れており、「脱中国」へシフトしている。と言っても、中国富裕層は日本にとって大切な客層である。この人たちは、中国政府の宣伝を信じておらず、日本を堪能しているのであろう。

 

(4)「星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路(よしはる)代表は、日本は欧米市場に注力した観光戦略にシフトすべきと指摘する。滞在日数の長い欧米客の割合が高まれば、1日当たりの客数が減りオーバーツーリズム(観光公害)緩和にもつながるとみる。大阪は、今年1~5月のアジア圏訪日客が約7割と、京都よりアジア系の観光客が多い。この点から、「大阪の魅力をどう欧米に発信するかが重要」と強調する」

 

大阪は、アジア人に好まれている観光地である。京都よりもアジア系観光客が多いのだ。これが、観光公害をもたらしている。これを避けるには、滞在日数の長い欧米客の割合を高めることだという。観光客数の多寡を競うよりも、滞在日数の多い國の集客に努めた方がプラスになると指摘している。こういう意味では、中国人観光客はターゲットでなくなるのだ。