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韓国国会は21日、最大野党「共に民主党」代表の李在明氏の逮捕状請求に同意した。票決では、賛成が反対を規定でわずか1票上回る(票数では3票差)というきわどいものであった。「共に民主党」は、国会では最大の議席で過半数を占めている。だが、党内から大量の造反者が出て、逮捕状請求に同意という事態になった。検察は、この結果をもって裁判所へ正式に逮捕状を請求する。裁判所は、過去の例でみると逮捕状請求の2割を棄却している。今回の逮捕状請求が受け入れられるかは、結果を待たなければならない。 

『聯合ニュース』(9月21日付)は、「韓国国会、最大野党代表の逮捕同意案を僅差で可決ー党内から『造反』」と題する記事を掲載した。 

韓国国会は21日、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表に対する逮捕同意案を賛成多数で可決した。現職の国会議員である李氏は、会期中に国会の同意なしに逮捕・拘束されない不逮捕特権を持つが、同意案の可決により逮捕状発付の是非を判断する裁判所の令状審査が実施されることになる。

 

(1)「この日の国会本会議で採決が行われた李氏の逮捕同意案は、賛成149人、反対136人、棄権6人、無効4人で可決された。採決には在籍議員(298人)のうち295人が参加した。逮捕同意案が可決されるためには、出席議員の過半数(148人)の賛成が必要だが、今回の採決では賛成票が必要数をわずかに1票上回った。与党「国民の力」所属議員110人に同意案に賛成する意向を示していた野党「正義党」の6人、「時代転換」の1人、「韓国の希望」の1人、与党系の無所属議員2人が賛成したと仮定する場合、民主党で29人が賛成したと推定される」 

下線のように、民主党から29人が逮捕に賛成票を投じた。棄権6人と無効4人の計10人が、間接的な逮捕賛成に回っている。合計で39人が党の方針と異なる造反者となった。前回2月の逮捕状請求では、賛成が16人、棄権と無効は計20人であった。結局、36人の造反者が出た計算になる。今回と前回を比較すれば、造反者が3人増えた計算になる。 

造反者は、来年4月の総選挙で党から「公認」されないリスクを感じながらも、李氏の余りに破天荒な振舞に拒絶感を示したものである。李氏は、異なる罪名で2回も国会へ逮捕状請求の承認を求められた異例の存在だ。どう弁護しても、公党の代表に相応しくないことは明白である。日本では、考えられない韓国の政治風土と言うほかない。

 

(2)「同意案の可決を受け、国民の力の首席報道官は「民主党は国民に贖罪(しょくざい)すべきだ」とする論評を出した。共に民主党は論評を出さなかったが、同党の院内報道官は記者団に「執行部が議員たちに対し複数にわたって否決を訴えたが、違う結果が出て残念だ」と述べた」 

「共に民主党」は、自党に不利な事態であるので沈黙している。あれだけ、騒ぎ回っていたのがウソのような状態だ。今後の党運営を考えると言葉も出ないのであろう。 

(3)「李氏を巡っては、ソウル近郊の城南市長だった時期の都市開発事業を巡る背任容疑や、京畿道知事時代に下着メーカー大手・サンバンウルグループを通じ巨額資金を北朝鮮側に不正に渡した疑惑に絡む容疑で検察が逮捕状を請求していた。検察は、今年2月にも別の疑惑を巡り李氏の逮捕状を請求したが、この時は僅差で逮捕同意案が否決された。検察は3月下旬に李氏を在宅起訴した」 

李氏は、先の大統領選挙運動中に微妙な演説をした。落選すれば逮捕されて刑務所へ送られると涙ながらに語ったのだ。是が非でも、逮捕を免れたいという一心であったことは間違いない。そのために、用意周到に準備してきた。ハンストも、国会へ逮捕状請求が出る日まで計算していたと報じられている。

 

李在明氏は20日、自身に対する逮捕同意案の国会採決を巡り、フェイスブックに「明らかに違法で不当な今回の逮捕同意案の可決は、(政権の意向に沿った)政治検察の工作捜査に翼を与えるもの。検察独裁の暴走機関車を国会の前で止めてほしい」と書き込んだ。逮捕同意案の国会本会議での採決を21日に控え、党内に否決を呼び掛けたものと受け止められる。 

李氏は6月19日、自ら国会議員の「不逮捕特権」を放棄すると宣言を出した。この事実と重ね合わせると、20日のフェイスブックでの発言は大きく後退している。検察の手が身近に迫ってきて、「SOS」を発したのであろう。 

韓国政治は、これから激動期を迎えるであろう。左派が、どのように対抗するかである。だが、李氏の北朝鮮への送金事件は「重罪」である。金大中・元大統領も、現代財閥に資金を提供させて北朝鮮代表の金正日と会談した例がある。李氏は、この前例に倣って下着メーカーに資金を送らせたとみられている。だが、当時の李氏は知事にすぎない。韓国を代表するポストではなかった。大統領選挙を有利に運ぶための戦術に使おうとしたのだろう。 

韓国左派にとって、「李在明逮捕」が現実化すれば致命的である。左派勢力が大きく後退する契機になるだろう。李氏は、紛れもなく「86世代」の一員である。貧しい家庭から身を起こして権力の頂点を目指してきたが、危ない橋ばかりを歩いてきた。その咎めが出たのだろうか。