テイカカズラ
   


ファーウェイの新規発売した「5Gスマホ」は、米国が輸出規制している7ナノチップを搭載していた。これによって、「中国は独自技術で先端半導体突破口を見出した」か、と西側を驚かせた。だが、この7ナノチップを製造したSMIC(中芯国際集成電路製造)の粗利益率は半減している。7ナノチップ製造で歩留まり率が悪く、コスト高を招いていると推測されるのだ。 

7ナノチップは、古い露光設備を使っても製造可能である。この場合、「マルチパターニング技術」という面倒な過程が導入される。従来1回である露光を複数のパターンに分割し、あとでそのパターンを重ね合わせるものだ。手間暇かかって、ズレを生じ安いという難点があるという。「マルチパターニング技術」は、まさに「手造り」同様の製作過程となる。名人芸のようなもので、とても量産化は不可能だ。

 

『ロイター』(9月20日付)は、「ファーウェイ新型スマホ支えるSMIC 実力は未知数」と題する記事を掲載した。 

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の新しいスマートフォンは、米国の規制にもかかわらず中国が最先端のハードウエアを製造できることを示している。しかし、中国が利益を伴いながらこの成功を拡大して行けるかどうかは、まだ不透明だ。中国企業が政府からの多大な資金援助なしに存続できるようになって初めて、半導体戦争における永続的な勝利に近づいたと言えるだろう。 

(1)「ファーウェイは、新型スマホ「Mate(メイト)60」シリーズに7ナノメートルのチップが搭載された経緯を詳細に説明していない。しかし、テックインサイツのアナリストによる分解の結果、この端末のプロセッサ「Kirin 9000s」は中国製であることが判明した。研究者らはこれを、画期的なことだと賞賛している。研究者らの観察によると、中国の半導体大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は、米政府が規制対象としたオランダの半導体製造装置メーカーASMLの高度な極端紫外線リソグラフィ装置を使わずにこれらを製造した」 

旧製造設備でも、冒頭に指摘したように「マルチパターニング技術」という面倒な過程で製造できることが証明されている。この場合、手造り同様であるためにコストが極めて高くなるという難点を抱える。

 

(2)「他のいくつかの部品は、米国の制裁にもかかわらず、国外のサプライヤーから調達された。メモリーチップは全て韓国の半導体大手SKハイニックスの「レガシー(旧型)」製品群から取得したようだ。もっとも同社は、規制導入以前からファーウェイとは取引していないと述べている。歓喜に沸く中国のネットユーザーと国営メディアは、すかさずこの成果を大々的に宣伝し、愛国的な消費者が売り上げに貢献した。ファーウェイは現在、Mateシリーズの出荷目標を20%引き上げて4000万台にしていると、地元メディアが19日に報じた。アナリストは「Mate 60 Pro」の今年の出荷台数が500万台を超えると予測している」

「Mate 60 Pro」の他のメモリーチップでは、旧型品が使われている。7ナノチップと旧型チップが「同居」するという奇妙な部品構成である。このことから分るのは、7ナノチップが、異常な方法で製造されたことを裏付けている。

 

(3)「依然として不明なのは、SMICが極小ウェハーにどれだけ正確にデザインを印刷できるかということだ。この技術は繊細なことで知られており、少しでも欠陥があれば半導体の歩留まりが低下しかねない。SMICは、2018年頃から同様の製品を大規模に生産しているライバルの台湾積体電路製造(TSMC)に比べ、この技術に関する経験が乏しい。「Mate 60 Pro」が発売後数日で売り切れたというニュースは、入手可能な半導体の量に限りがあるため、販売台数が制限されたのではないか、との疑問を生じさせた」 

SMICは、台湾のTSMCからみて技術的に大きく引離されている。そのSMICが、7ナノチップを最新鋭技術で製造できるはずがない。

(4)「SMICはすでにプレッシャーにさらされている。同社は今年上半期の粗利益率が半減したと発表した。大きな目標を次々と達成し続けるために巨額の支出を迫られており、売上高に対する研究開発費の比率は前年同期比2%ポイント増の11.4%、金額にして3億4500万ドルに達した」

台湾のTSMCは、直近四半期の研究開発費の対売上高比率が8.7%である。SMICは売上高規模が小さいために同11.4%も投入している。さらに政府からの補助金が投入される。粗利益率半減しているのは、「手造り」7ナノチップによってコストが相当増えている結果であろう。新鋭の半導体製造設備がない以上、SMICの粗利益率は改善しない。