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中国の住宅価格の変動をみて気づくことは、前月比「0.2%」の増減率などというように、極めて変動幅が狭い点である。日本の不動産市場では、とうていそのような小幅な変化であるはずがない。中国では、住宅販売価格が規制されている結果だ。これでは、変化率も小幅に止まるほかない。価格暴騰時に抑制策として取られた政策である。

 

現在のように需要が低下している時は、価格規制が需要を抑制している。そこで、思い切って価格規制を撤廃して値下がりを容認すれば、需要が出て企業の在庫整理が一気にすすみ資金繰りが楽になるだろう。

 

『ロイター』(9月22日付)は、「中国の住宅価格規制 撤廃で底値確認必要」と題するコラムを掲載した。

 

中国の不動産会社は資金難と販売難の双方に見舞われて経営存続に四苦八苦している。ではなぜ、物件を値下げして手元に残る大量の在庫を売り切らないのだろうか。それはやりたくてもできないからだ。2016年に起きた前回の不動産危機後に、住宅価格の一方的な動きを抑えるための規制が導入された。こうした措置がなお残り、中国経済の回復を妨げる要素になっている。

 

(1)「不動産価格の安定を実現させる上で役立ったのは、地方政府が設定した「ガイダンス」だった。そのおかげで、恒大集団や碧桂園といった業界最大手クラスの不動産会社が債務再編に苦闘する中でも、主要70都市の新築住宅の平均価格は1年余りにわたって毎月の変動率が2%程度にとどまった。しかしこのような規制が価格の歪みを覆い隠した。市場が強気ムードに包まれていた局面では、主要都市の上限価格は、人々が喜んで支払おうとした価格よりもずっと低かった。そこで物件募集が始まると多数の買い手が殺到し、運良く住戸を手に入れられた向きは、供給が限られる中古市場で転売して相当な利益を得ることができた。多くの中国人が価格上限について、住宅の買い手候補に対する「補助金」とみなした理由の一つがこうした状況だった」

 

中国の不動産政策失敗は、住宅価格へ介入したことだ。自由な価格変動が需給を調整したはずである。人民元相場も毎日、管理変動制という形で介入している。社会主義経済の最大矛盾である。政府の過保護政策に慣らされているので、市場機能への信頼がないのだ。

 

(2)「ところがあっという間に時間が流れ、今や規制された価格は逆に市場で想定される時価を大きく上回る形に一変している。一部の不動産会社は、駐車場や、はたまた金の延べ棒までおまけにつける実質的な値引きで事態打開に動いたが、昨年の住宅販売は27%減って2017年の水準に戻った。今年の販売はさらに悪化しそうな流れだ。だから価格規制を撤廃することこそがもっと明確な解決策になるだろうし、ロイターが今月伝えたように、当局もそれを検討している」

 

不動産開発企業が値下げをすると、地方政府からお咎めを受けるという異常さである。さらに、住民が反対運動をするおまけまでつく。中国は、価格変動に対して「寛容」でない社会である。市場機能というものへ理解が足りないのだ。

 

(3)「財新によると、広州市は既に7年続けてきた新築住宅の価格上限をひそかに廃止した。より多くの都市が追随すれば、手元不如意に陥っている不動産会社は今後、必要な資金を生み出し始めるだろう。例えば碧桂園の場合、昨年末時点で建設中のプロジェクト3000件を含めて、住宅用地として2億0200万平方メートルも保有していた。これらの資産をどれだけ迅速に現金化できるかは、最終的に売却価格の魅力度に左右される」

 

碧桂園は、手持ち在庫(住宅と土地)を自由に処分して資金繰りをつけられれば、社債の償還で問題を起こすリスクも減るはずだ。財政投入よりも、この方が効果的であろう。

 

(4)「価格急落は需要を喚起する半面、政府はその大きな副作用に立ち向かう必要が出てくる。現在の住宅所有者は、自宅の価値が見る見る目減りしていくのを喜ばしくは思わないだろう。何しろ中国では持ち家率が2020年までに90%まで高まり、家計資産に占める不動産の割合は7割に達する。実体経済が低調な中で、歪んだ住宅価格の修正がどのように落ち着くか見通せない面もある。それでも市場の底値を見つけだすことこそが、不動産市場復活にとって重要ではないかと思われる」

 

中国は、不動産税(固定資産税)や相続税を導入すれば、住宅値下がりを受け入れる余地が出てくるかもしれない。そういう方向へ誘導する政策が必要になろう。