欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は、EUと中国の貿易関係が「非常に不均衡」だと述べた。『ブルームバーグ』(9月23日付)が報じた。
(1)「ドムブロフスキス氏は23日、中国・上海で開催された外灘金融サミットの講演で、EUは「戦略的製品」に関して自らの脆弱性を軽減しようとしているが、それはEUが主要貿易相手国である中国との関係を絶つことを意味しないと述べた。EUは対中戦略において新たなバランスを取ろうとしており、中国市場へのアクセスを維持しながら同国への依存を減らすことで「リスク回避」を図っている。EUは最近、電気自動車(EV)向けの中国の補助金に関する調査を開始すると発表した」
EUは、対中貿易では万年赤字である。特に、2021年8月から貿易赤字が激増した。21年7月の年率換算赤字は1533億ドルベースであったが、22年8月には同2809億ドルの赤字へと1.83倍にも増えている。その後は少し減少したが、それでも23年5月でも同2665億ドルの赤字である。
これだけの対中貿易赤字を抱えるEUが、中国のEV輸出の的にされたならば悲鳴を上げるどころか、「怒り」になって当然であろう。中国は、余りにも無神経な動きである。
EUは、EV向けの中国の補助金に関する調査を開始する。中国からの報復が懸念されているにもかかわらず、EUが調査に踏み切るのは、欧州の自動車メーカーが中国勢との競争を巡り警戒感を高めていることの表れだ。EUの行政執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は9月13日、「巨額の国家補助金によって価格が人為的に低く抑えられており、われわれの市場をゆがめている」と欧州議会の年次演説で指摘。「EU域内に起因するこうしたゆがみをわれわれが受け入れることはない。域外によるゆがみも同様だ」と続けた。
欧州委員会は9月11日発表した夏の経済見通しで、ユーロ圏20カ国の2023年の実質成長率を0.8%と前回5月から0.3ポイント下方修正した。ドイツはマイナス0.4%と景気後退に転落する見込みで、欧州経済の失速が鮮明になった。EU経済の盟主であるドイツは、なぜ失速状態に陥ったのか。
『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「対中貿易赤字も影響、インフラ投資が急務
」と題する記事を掲載した。ハンブルク商業銀行チーフエコノミスト サイラス・デラルビア氏へのインタビューである。
(2)「(質問)ドイツ経済の現状をどう分析しますか。(答え)国内総生産(GDP)に占める工業部門の割合が、多くの他の国より高い。このため、ドイツはエネルギー価格の高騰や製造業の世界的な減速に特にさらされている。金利の上昇も同様だ。ドイツ経済が大きな打撃を受けた理由の一つになる。2023年はマイナス0.6%になるだろう。24年は0.5〜1%の成長を見込む。ユーロ圏は少し強く、23年は0.5%、24年は0.7%を見込む。ただ、欧州中央銀行(ECB)が期待するほどインフレ率が下がるとは思えない。ユーロ圏では一種のスタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)が起きる」
ドイツは、製造業のウエイトが高いのでエネルギー価格高騰の影響を大きく受けた。金利上昇も響いている。
(3)「(質問)最大の貿易相手国である中国との貿易赤字の拡大も低成長の要因では。(答え)たしかにその通りだ。ドイツは中国にとって以前ほど重要ではなくなった。中国が自国で市場を持つ大国であることを考えれば、自国向けの生産が増えるのは自然なことだ。ドイツ企業自身の誤りとは言えないが、おそらく予測してこなかったし準備もできていなかったということだろう」
中国との貿易赤字拡大が、低成長の要因になっている。中国の低成長を予測できなかった点は、ドイツ企業の誤りである。
(4)「(質問)ドイツが「欧州の病人」に再び戻るという議論があります。1990年代など当時との問題点の違いは。(答え)1990年代の終わりとは対照的に、現在の労働市場は格段に良い。失業率はたった5.8%(国内基準)で、雇用はなお増えている。実際、あらゆる部門で人手不足だ。90年代末は失業率が2桁に達し、2000年代初頭には雇用が減っていた。『欧州の病人』というレッテル貼りは少し誇張されている。ただ、構造問題に対処しなければ、数年後には欧州の病人になるかもしれない」
ドイツが、「欧州の病人」といわれるのは誇張である。だが、構造問題に手をつけなければ数年後には欧州の病人となりかねない。構造問題とは、インフラ投資の脆弱化である。インフラ部門では30年までに3700億ユーロ(約58兆円)が必要という指摘もあるほどだ。


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