中国恒大集団は、これまで理財商品の元利金返済が滞ってきた。過去2年間、返済を求める女性は、何十回となく警察に調査を求めたが動きをみせなかった。だが、今月になって風向きが変わったのだ。女性は、警察当局から申し立てを受理されたという通知を受け取った。これが、中国恒大集団会長許家印氏の逮捕であった。
警察は、2年間も被害届けを処理せずにいたにも関わらず、突然の会長逮捕に至ったのは、社会不安が高まっていることへの「ガス抜き」でもあろう。だが、9~10月という住宅販売の書き入れ時に起ったこの逮捕劇は、中国不動産業界へ「メガトン級」の爆弾投下に等しい衝撃を与える。不動産業界のイメージが回復不可能なほどの打撃を受け、住宅販売へ水を差すことだ。業界は最悪の事態である。警察は、もっと早く調査に掛るべきであった。
『ブルームバーグ』(9月29日付)は、「中国警察監視下の恒大会長、当局の怒り招いたのは市民への不払いか」と題する記事を掲載した。
中国の不動産開発大手、中国恒大集団の資金繰り難で外国人投資家が逃げ出し、金融市場が動揺、何千ものサプライヤーは窮地に陥った。しかし、当局が我慢ならなかったのは資産運用商品に資金を投じた市民への支払いを同社が怠ったことだったようだ。
(1)「恒大のドル建て債デフォルト(債務不履行)から2年近くを経て、同社を創業した許家印会長は犯罪に関与した疑いで警察の監視下に置かれた。ただ、その犯罪が何かは特定されていない。グループ内の資産運用事業従業員も拘束されている。地元メディアは、かつて同社の資産運用部門を運営していた許氏の息子ピーター・シュ氏も身柄を拘束されたと報じた。恒大は8月末、資産運用部門は個人顧客が資金を預けた「理財商品」に関係する支払いができなかったと発表。その後、警察が動いた」
「理財商品」は、ノンバンクの信託銀行が販売している。信託銀行商品は、リスクを購入者が負うシステムであるから、購入者は元利金の未返済の場合、泣き寝入りを余儀なくされる。こういう法的な限界を超えて、恒大集団会長逮捕になった。このケースは、他の理財商品の未返済にも適用されよう。となれば、理財商品の未返済企業はいずれも「逮捕」という影がちらつこう。
(2)「恒大は他の多くの中国デベロッパーと同様、他の資金調達手段を通じた資金集めが厳しくなると、個人投資家に高利回りの理財商品を販売し運営資金の足しにしていた。中国共産党の習近平総書記(国家主席)は社会不安を回避するとともに、「共同富裕」(共に豊かになる)運動の推進を望んでおり、今回の拘束は、外債保有者といった他の利害関係者よりも市民の不安解消を優先する政府の方針と一致している。また、負債を抱えた他のデベロッパーに対し、集合住宅の完成と消費者への支払いを重視するよう求めるシグナルにもなっている」
マンションの「青田売り」によって、いまだに住宅を竣工できない企業は、中国恒大集団の会長と同様に「逮捕」という事態も想定されるという。
(3)「オックスフォード大学で中国政治を研究するラナ・ミッター教授は、「不動産セクターが成長の原動力になりそうもない今、よく知られた不動産王は政治的に効果的なターゲットになる」と指摘。「共産党は反社会的な企業行動には罰則を与えるということを示したいと考えている」と語った。恒大の資産運用部門が2年前に資金繰り悪化で理財商品約400億元(約8200億円)の支払いを滞った際には抗議デモが起きた。チャオさんはそうした投資家の一人だ。過去2年間、彼女は返済を待っていた。何十回となく警察に調査を求めたが動きはなかった」
警察がここで逮捕へ動き出した理由は、民間で起った問題は民間で解決させるという意思を鮮明にしたことだ。財政資金は一銭も使わないという意思表示でもあろう。
(4)「驚いたことに、広東省深圳市の警察と関係当局は個人投資家数万人からの相談に対応するため、9月29日からの大型連休中も働くという。安全上の理由で名字だけを公開する条件で取材に応じたチャオさんは、「ほとんど気が狂いそうだった」と2年間を振り返りながら、この情報をすぐに拡散したことを明らかにした。シャドーバンキング(影の銀行)や理財商品に関する規制を以前から強化していた中国当局は9月、世帯の保護を目的に違法な資金調達を取り締まるキャンペーンを開始した。新設された国家金融監督管理総局のトップに5月に就任した李雲沢氏は9月の講演で、消費者の権利と利益を守るため多くの重大事案に対処すると表明した」
警察は、個人投資家で理財商品を購入して未返済の人たちから苦情を聞くという。新設された国家金融監督管理総局は、「消費者の権利と利益を守るため多くの重大事案に対処する」という。多くの理財商品を発行して資金繰りをつけてきた不動産開発企業にとっては、「逃げ得」は許されない事態になってきた。


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