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韓国のEV(電気自動車)販売が減少し、代わってHV(ハイブリッド車)が人気を集めており、「納車待ち」状態になっている。この傾向は、欧米でも定着している。世界的に、EVの小休止とHV見直しブームが始まっている。EVは、リチウムイオン電池を動力とするが、火災発生・長い給電時間・短い走行距離という難点を抱えている。この問題の解決には、全固体電池の実用化を待つほかない。 

こうした一連の動きは、トヨタが予測したとおりとなった。トヨタは、リチウムイオン電池の限界と全固体電池の優秀性を主張し、商品戦略もこれに従ってきた。HVを初めて世界へ送りだしたトヨタが、全固体電池でも27年から先陣を切って、本格的なEV時代を切り開く。日本にとっては、心強い動きとなろう。

 

『中央日報』(10月30日付)は、「売れ行き振るわない電気自動車、納車まで1年待ちのハイブリッドカー」と題する記事を掲載した。 

(1)「韓国の電気自動車市場がマイナス成長に転じた。1~9月に韓国で販売された電気自動車は11万5007台で前年同期の11万7235台と比較して2228台減った。電気自動車発売が続いた2021年以降で韓国の電気自動車販売台数がマイナスに転じたのは今年7-9月期が初めてだ。韓国の電気自動車販売台数は5月の1万1648台から昨年の販売台数を超えることができず鈍化し始めた」 

韓国のEV販売は、1~9月で初めて前年同期比1.9%減になった。すでに、5月から前年比で減少が始まっていた。
(2)「電気自動車の穴はハイブリッドが埋めた。1-9月に韓国で売れたハイブリッドカーは26万1309台で前年同期の19万356台と比較すると37.3%増加した。ハイブリッド人気は出庫待ち期間にも現れる。ヒョンデの10月の納期表によると、「アバンテ・ハイブリッド」は12カ月以上待たなくては納車されない。「サンタフェ・ハイブリッド」は納車待ちが10カ月、「ソナタ・ハイブリッド」は7カ月以上必要という。これに対し電気自動車の大部分は納車待ちが1カ月前後と短い。「アイオニック5」は新車出庫まで4週間、と「アイオニック6」は3週間待てば良い。ジェネシスの電動化モデル「G80」は出庫待ち期間が1カ月にすぎない」 

HVの1~9月販売台数は、前年同期比で37.3%増と勢いがついている。ヒョンデの10月の納期表によると、「アバンテ・ハイブリッド」は12カ月以上待たなくては納車されないほどの人気が出ている。

 

(3)「ハイブリッドの好調は世界市場でも明確だ。エコカー政策が強力な欧州市場が代表的だ。欧州では電気自動車成長は急だが絶対的な販売台数ではハイブリッドが電気自動車を大きく上回る。欧州自動車工業協会(ACEA)によると、1-9月の欧州のハイブリッドカー販売台数は199万8921台だ。ここにプラグインハイブリッドカーの販売台数59万7376台を加えると欧州だけで259万6297台のハイブリッドカーが売れた」 

欧州でもHV人気が定着して、EVを上回っている。 

(4)「れに対し、1-9月の欧州の電気自動車販売台数は111万2192台でハイブリッド モデルの半分に満たなかった。勢いに乗るハイブリッドカーはガソリン車にまで追いつきそうだ。1-9月に欧州で売れたガソリン車は287万8365台だったが欧州のハイブリッドカーの年間成長率が28%水準であることを考慮すれば今後1~2年間でガソリン車の販売台数を超えるものとみられる。サムスン証券のイム・ウニョン氏は「電気自動車需要が振るわないという認識が拡散しハイブリッドカーに対する関心が急増している。ハイブリッドに対する消費者の関心は米国と韓国市場で高いとみられる」と話した」 

欧州のEV販売は、1~9月でHVの半分にも満たない状態である。HVが、ガソリン車を上回る勢いである。かつて、欧州でのHV販売は苦境に陥っていたが、見事に勢いを取り戻している。

 

(5)「ハイブリッドカーが善戦し市場を先導する日本の自動車メーカーの株価は上がっている。2月に1800円水準にとどまっていたトヨタの株価は9月には2800円を超えた。トヨタ自動車の豊田章男会長は25日にジャパンモビリティショーで記者らと会い、人々がようやく電気自動車の現実を見ているとして最近の電気自動車沈滞に対する意見を表明した。彼は普段から「電気自動車が炭素排出量を減らす唯一の方法ではない。ハイブリッドカーを大量に販売すれば短期的な効果を出すことができ、こうした選択肢を制約してはならない」と話した」 

トヨタの豊田会長が社長を辞任した理由は、EV出遅れが問題化されたことである。豊田氏は、リチウムイオン電池の欠陥を指摘し、全固体電池こそ本命であり、それまでの繋ぎはHVの役割という信念を持って経営に当たってきた。これが、世界の環境運動家から敵視され、「豊田辞任」運動まで起こされていた。それだけに、豊田氏はHV復活と全固体電池実用化へメドをつけて一矢報いた気持ちであろう。世の中の動きは、ここ半年でガラリと変わったのだ。