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米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11月2日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの市民を助けるため、イスラエル軍とハマスの戦闘を一時停止する案を模索していると明らかにした。その上で、こうした戦闘の一時停止はイスラエルの自衛を妨げることにはならないという認識も示した。

 

カービー氏は、記者団に対し「支援活動と人質の救出に向けた取り組みを継続するために必要となる可能性のある一時停止」について検討することを目指しているとし、「イスラエル当局と協力し、民間人の死亡や巻き添え被害のリスクを最小限に抑えるよう全力を尽くしている」と語った。『ロイター』(11月3日付)が伝えた。

 

米国は、イスラエルのハマス攻撃は自衛権の範囲という解釈である。ただ、民間人への被害を食止めるべく「戦闘の一時停止案」を出したものだ。

 

『ハンギョレ新聞』(11月2日付)は、「イスラエル、ガザ地区の南北分断図るか『220万人強制移住』のシナリオまで用意」と題する記事を掲載した。

 

イスラエル国防軍(IDF)の地上作戦が、ガザ地区を一定期間南北に分断する結果を生むという予測が出ている。海外メディアは、イスラエル軍の最近の動向を、地域をナイフで薄く切り取るように清掃し掌握していくという意味で、「スライス戦法」と呼んでいる。

 

(1)「イスラエルが「ハマス根絶」のために北部攻略に焦点を合わせており、軍事作戦が終わった後に明確な政治的解決策を提示するのも難しいからだ。こうなると、ガザ地区は「当面の間」イスラエル軍が占領した北部と避難民が集まっている南部に分断される可能性がある。『ワシントン・ポスト』紙は10月30日(現地時間)付で、「イスラエル軍、秘密に包まれたガザで地上攻撃の初期段階へ」という見出しの記事で、イスラエルの軍事専門家の話として、「イスラエル軍は大規模なDデー攻撃(一斉攻撃)の代わりに、慎重に数マイルまたは100ヤード(約90メートル)ずつ前進し、ハマスが隠蔽した爆発物とトンネルを見つけだすことで、(北部の主要都市)ガザシティ周辺に戦車と兵力を迅速に配置できる道を作っているものとみられる」と報じた」

 

下線部のように、イスラエル軍は一斉攻撃の代わりに、100メートル未満に区切る前進しているという。ハマスを「しらみつぶし」にする戦術であろう。トンネルを狙った攻撃とみられる。

 

(2)「イスラエル軍はこれと共に、ガザ地区北部の住民に繰り返し「南部への退避」を強く勧告している。これはイスラエル軍が、ひとまずガザ地区の首都に当たるガザシティの位置する北部地域を掌握した後、そこに集まっているハマスの戦力と基盤施設の完全な破壊を目指していることを強く示唆するものだ。軍出身で国防長官などを歴任したナフタリ・ベネット元首相も10月28日、「ガザ封鎖計画」と題したソーシャルメディアへの投稿で、イスラエルはハマスが降伏し、すべての人質を解放する時まで、ガザ地区を半分に分けて北部を掌握すべきだと主張した」

 

イスラエルの元国防相は、イスラエルはハマスが降伏しすべての人質を解放する時まで、ガザ地区北部を掌握すべきと提案している。これが、イスラエル軍の最終的な目的かも知れない。

 

(3)「ベネット氏はまた、ガザ地区内部に境界に沿って幅2キロメートルの安全地帯を作ることを提案した。ガザ地区を南北に分断し、北部に住んでいた住民を南部に移住させ、そこを事実上の「無人地帯」にしようという案だ。イスラエルのニュースサイト「シチャ・メコミット」も同日、イスラエルの最終目標が伺える興味深い文書を示した。同サイトの記事によると、イスラエル情報省は13日、ガザ地区の南北を分け、長期的に住民をエジプトのシナイ半島に強制移住させることを提案する報告書を作成した。つまり、ガザ地区北部に大規模な空爆を含む攻撃を浴びせ、住民の大半を南部に移住させた後、次第に南部に対する圧迫を続け、220万人にもなるガザ地区の住民をエジプトのシナイ半島に押し出すという内容だ」

 

イスラエル情報省は10月13日、ガザ地区の南北を分け、長期的に住民をエジプトのシナイ半島に強制移住させることを提案する報告書を作成したと報じられている。これが事実とすれば、事態を悪化させて戦線が拡大する危険性を秘めている。

 

(4)「情報省は、「残りの二つの案である(西岸地区を統治する)パレスチナ自治政府のガザ地区の統治と、(ハマスに代わる)新しい地域政権の樹立は、現実性に欠ける」と一蹴した。しかし、イスラエルが実際にこのような対応に乗り出した場合、「ガザ地区の問題はガザ地区で終わらせなければならない」としてパレスチナ難民の流入を強く牽制するエジプトとの摩擦が予想される。この報道に対しイスラエル首相室は、同文書は仮説的な概念を提示したものに過ぎないと説明した。国防省も、ガザ地区問題に対する初期の考えに過ぎず、戦後は考慮されていないと反論した。しかし、文書を暴露した「シチャ・メコミット」は、住民に南部への移動を求めたイスラエル軍の通告や最近の作戦の様子から、この計画が結果的に実行されていることが分かると主張した」

 

イスラエルでは、ネタニヤフ首相への批判も強まっている。ハマスの急襲を事前にキャッチできず、被害を拡大したことだ。最初に、防衛を堅固にしていれば、こういう事態を招かなかったという理屈づけである。